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こんにちは!私はサッポロカイギュウちゃん。
今回も私を研究してくれた古沢博士にカイギュウについて
いろいろ教えてもらいに行くよ!
今回カイギュウについて教えてくれる古沢博士
古沢仁学芸員(ふるさわひとしがくげいいん)
専門は古脊椎動物学(こせきついどうぶつがく)
特にカイギュウ類や鯨類(げいるい)など、海生ほ乳類(かいせいほにゅうるい)の化石から進化や系統を研究しています。現在、平成9年(1997年)に石狩市厚田で発見されたハクジラや2003年豊平川で発掘されたカイギュウ化石、2008年に発掘されたクジラ化石などを研究しています。
※以下の文中での「カイギュウ」は現在のマナティーやジュゴンの両方の系統を含むカイギュウ類を意味しています。
今回はカイギュウの進化について古沢博士に教えてもらうよ!博士おねがいします。 |
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カイギュウの進化は前回よりもちょっと難しいお話が続くよ。 カイギュウちゃん、しっかりついてきてね。 |
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が…がんばります!! | |
まず、哺乳類の先祖が現れたのは中生代(およそ2億年前)で、みんなの大好きな恐竜が地球上に登場したころと同じなんだ。 テチテリア類にはゾウの仲間・長鼻目(ちょうびもく)やデスモスチルスの仲間・束柱目(そくちゅうもく)も含まれます。 |
デスモスチルス骨格標本(収蔵・画像提供:北大総合博物館)
デスモスチルス骨格標本((独)産業総合研究所・地質標本館収蔵)古沢仁撮影
デスモスチルス(古沢仁・画)
へー、わたしの先祖にはゾウやデスモスチルスの仲間が含まれていたんだ! ということは…カイギュウって陸の動物だとゾウに近い生き物なの? |
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そのとおり。長い年月をかけて、陸で生活するグループと海で生活するグループに分かれていくよ。 そして、カイギュウ化石として一番古いと言われているのが、ジャマイカの5300万年前の地層から見つかったプロラストムス科の「ペゾシレン」というカイギュウです。 ペゾシレンは丈夫な手足をもっていて、海と陸を行き来しながら生活していたといわれているんだよ。 |
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今(現生)のカイギュウはずっと海や川の中で生活しているけど、5300万年前に生息していたペゾシレンは陸でも生活していたんだね! |
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そうだよ、この頃カイギュウは沿岸からエサを求めて海へと進出し、水中での生活に適応しながら後足を退化させて泳ぎに適した身体の形になり、どんどん分布を広げていったんだ。 そして、カイギュウの種類も増え、4つの科(プロラストムス科、プロトシレン科、トリケクス科<マナティー科>、ジュゴン科)に分かれたんだよ。※前回のカイギュウの系統と進化の図参照(PDF:514KB) |
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カイギュウの分布はどうやって世界中に広がっていったの?? |
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最初はテチス海全域(この時代インド亜大陸とユーラシア大陸の間にあったあたたかい浅瀬の海)に広がっていき、新生代第三紀漸新世(3390万年~2300万年前)になると、ヨーロッパを中心に南米、北アメリカ、日本でもこの時代の化石が見つかっていることから、大西洋、インド洋、太平洋にまでひろがったことがわかります。 |
漸新世(ぜんしんせい)3000年前の大陸
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しかし、この年代(漸新世)にはプロラストムス科、プロトシレン科は絶滅し、トリケクス科<マナティー科>、ジュゴン科だけが生き残ります。 |
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プロラストムス科とプロトシレン科はどうして絶滅してしまったの?? |
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はっきりとした理由はまだわからないけれど、どちらの科も原始的な特徴を持つカイギュウだったので、より環境に順応した種が残っていったと考えられるでしょう。 | |
そっかー。でも、絶滅した種類がいるってことは、また新しい種類のカイギュウも出てくるのかな? |
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カイギュウちゃん、そのとおり!次の年代、新生代第三紀 |
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わーなんだかワクワクするね☆ | |
前の年代、漸新世のカイギュウ、ハリテリウムは中新世に入るとメタキテリウムに進化し、さらに分布域を広げていきます。 |
ショサンベツカイギュウ骨格標本(初山別村教育委員会所蔵)古沢仁撮影 |
わーほんとだ小さい赤ちゃんの骨がある!! | |
そしておよそ2000万年前、北太平洋に進出するグループが現れます。それが大西洋からパナマ海峡を通って太平洋に進出してきたジュゴン科ドゥシシレン属のなかまです。 | |
ドゥシシレン属っていうのは、体長が4~5メートルくらいで、歯のあるクループだよね!(前回の系統図にかいてあった!) | |
カイギュウちゃん!大正解です!ドゥシシレン属のなかまは暖かい海のかたい海草(アマモなど)から寒い海のやわらかい海藻(コンブなど)へと食性を変えていきます。 やわらかい海藻を大量に食べるのに適した咀嚼板(そしゃくばん)を口の中に発達させることで、体長7メートル~10メートルに大型化し、820万年前頃サッポロカイギュウちゃん=ヒドロダマリス属が現れます。 |
(JPG:990KB) |
ついに私、サッポロカイギュウ(ヒドロダマリス属)の登場だね!! |
ヒドロダマリス属のカイギュウはサッポロカイギュウの登場以降、500万年前ころにはタキカワカイギュウとなり、200万年前ころにはステラーカイギュウとなって日本、ロシア、アメリカにかけて北太平洋に広く生息していました。 ですが、およそ50万年前の寒い時期に日本の千葉県から化石が発見されたのを最後に日本からは姿を消し、その子孫は1741年にベーリング海でベーリング探検隊によって偶然に発見され、その後、わずか27年で乱獲され根絶します。 |
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えええええ!!!私の子孫は自然に絶滅したわけではなく、人間によって絶滅しちゃったの!?? | |
もともと数が少なくなっていたということもあるけれど、乱獲により根絶したというのは事実だね。 ヒドロダマリス属のお話はサッポロカイギュウちゃんや、日本で見つかった多くのカイギュウ化石とも関係のある内容なので、また次回詳しくお話しましょう。 |
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はい!自分ことや子孫がどうなったのか、とっても気になります!よろしくお願いします。 |
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ステラーカイギュウの根絶により、現在生息しているのは、漸新世3000万年以上前に現れたグループのジュゴンとマナティーだけになりました。 | |
そうか、こうして見ると、現生のカイギュウは何千万年も前から進化して生き残ってきたんだね、なんだかすごいお話だなぁ。 | |
カイギュウの進化を知ると、生き残る為に移動した痕跡や、進化の過程がよくわかります。しかし、まだまだわからない進化の謎がたくさんあります。 その謎を解明していくのがカイギュウ博士のお仕事なんですよ。 |
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博士!これからも私たちカイギュウの謎を解き明かしてくださいね! |
カイギュウの進化について、わからないことや、もっと知りたくなったら、ぜひ博物館活動センターまで、質問しにきてね。
サッポロカイギュウちゃんもまってるよ☆
次回はサッポロカイギュウ(カイギュウ目ジュゴン科ヒドロダマリス属)についてと博士の最新カイギュウ研究についてのお話だよ。
参考:滝川市美術博物館『海牛図鑑』(滝川市美術博物館、2010年7月)
監修:古沢仁(札幌市博物館活動センター)
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