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更新日:2024年6月17日

コラム「こんにちは、アシストです」(2024年6月号)

「成長の芽」~葛西相談員~

私は北の島で育ちました。利尻富士と呼ばれる最果ての島です。島の冬は激しい日本海の荒波と、吹き付ける風雪におおいつくされます。しかし、春を迎えると山はいっせいに緑に萌え、花々に包まれていきます。残雪の中に、自然の命が芽吹く季節を迎えるのです。

私は中学生までをそこで過ごしました。その子どもの頃のお話を少ししましょう。

 

保育園の年長の時のことです。

みんなで工作などをして遊んでいると、先生から「そこのはさみを取ってくれる?」と言われました。特に何も考えずに手渡しただけだったのに、先生は大きな声で「皆さん集まってください!」と言ったのです。何か怒られるようなことをしたかなと、渡した時のことを思い返しますが、思い当たることはありません。おそるおそる先生の所に行くと、先生は私がはさみを渡す時に刃先を先生に向けずに持ち手の方から渡したことに感動して、そのことをみんなに知らせたかったと言ったのです。

私はそんなことを意識していたわけではありませんでした。たまたま自分のそばに置かれていたそのままの状態で、手渡しただけだったのです。しかし、みんなの前でほめられた私は、いかにもそのことを分かっていたかのような自慢気な顔をしたのです。

それ以来私は、刃先を自分側に向けて渡すことを意識するようになりました。ほめられることの喜びを知ったと同時に、相手への気遣いや思いやりというものの大切さを学んだのでした。

 

小学校の頃でした。

ある日の放課後、校庭の遊具にあきた私は石を投げて遊び始めました。その石が校舎の廊下の窓に当たりガラスを割ってしまったのです。私は職員室の担任の所に行って、「外のガラスが割れています」と言ったのです。自分が割ったのに、割れているのを見付けて知らせに来たことにしたのです。

先生は優しい目で私をじっと見て、「よく知らせに来てくれたね。割れているのが分からずにけがをする人も出るかもしれないものね。本当にありがとう!えらいね。」とほめてくれたのです。そして「もし時間があったら一緒に片付けを手伝ってくれる?」と言ったのです。私は元気にハイと答えて、後始末を手伝いました。すると先生は、「よく手伝ってくれたね。本当にえらいね。ありがとうね!」とますますほめてくれたのです。

本当は自分が割ってしまっていたのにそのことをずっと言えないまま、小学校を卒業してしまいました。胸が痛みました。でも、それ以来私は、何か失敗しても正直に言うことの大切さを学んでいったのです。

 

担任の先生は私が割ったことに気付いていたはずです。保育園の先生も、私の行動によさを見付け自信につなげてくれたのだと思います。相手に寄り添い受け止め気付かせてくれることで、私が何かで失敗してもそれが成長へとつながる大きな力となることを、信じてくれていたのでしょう。受け止めてくれる人がいれば、人は安心し自分を見つけ出すことができるのかもしれません。私もそうありたいと思うのです。

令和6年6月17日

 

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