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更新日:2024年4月1日

医療関係の方へ

市立札幌病院での臨床研修を考えている方へ~臨床研修センター長として一言~

  臨床研修センター長

 市立札幌病院臨床研修センター長(副院長)

  中村 雅則



 ホームページを見ていただいてありがとうございます。まず、市立札幌病院臨床研センターの教育方針をわかってもらうために、初期臨床研修医に期待する事を紹介させていただこうと思います。

 

1.はじめに

当院は150年の歴史の中で専門分化が進み、現在33科の専門科があり、大学と同レベルの専門性の高い医療を各科が行っています。最新の専門治療を、依頼された患者さんに行っていくことは、市立病院として非常に大切であり、今後も進めていくことは間違いありませんし、専門医教育は医師にとって重要と考えています。しかし、一方では、患者さんは高齢化し、高齢者施設の患者さんがコロナ感染を契機に急性期医療の現場にやってくるようになりました。その患者さん達の病態はどんどん複雑になっていて、何が急性期医療として治療対象なのか、陰にある病気は何か、病態の本質は何なのか、そしてどんな治療を考え、どの専門医と相談すべきか、さらにどこまでの治療が社会的適応を持っているのかなどに向きあう事もこれからの医療の中心となる若い医師にとっては、避けることができない分野と考えています。そこで、当院の臨床研修では、各科のローテーションの間、月に2回の臨床研修センター外来(臨研外来)で研修医1年目、2年目、上級指導医の3人がタッグを組み、診療にあたる機会を設けています。この時はローテーション科の仕事をせず、当院に救急搬入される患者さん、あるいは当院外来治療中だが担当科の医療とは違う症状の患者さんを診療し、適切な医療につなげてもらっています。

2.想像すること

臨床外来では、何が原因でこの症状が出ているのか?どんな病態が考えられるのか。見落としはないか。と患者さんの中にあるものを想像してみてください。

日本の医学教育は、欧米の学生教育から実習の機会が少ないなど遅れている事が言われ、医学部の教育はどんどん変わって来ています。まだ実習が少ない事は変革途中かもしれませんが、医学部学生時代に習った知識は、最新のものを聞いているはずで、皆さん国家試験に受かって医師免許をもらうので、最新の知識は十分あるはずです。しかし、国家試験を目標とした医学知識には厚みがないので、是非、実際の患者を見た時に、色々なことを想像して欲しいと思います。医学は科学です。特に、臨研外来では、まずはアナムネーゼと診察から得た情報をもとに、病態生理、解剖、病理、生化学などその病態を生み出す原因を知識の棚から探り出し、知識の統合をする訓練をして欲しいと思っています。さらにそこに併存疾患や全身状態、家族背景をきっちりとらえることで治療の是非が決まるのだと思います。実臨床で必要な知識を補うために、毎週月曜日の朝は、モーニングセミナーとして、各科の部長クラスの先生に各病態、診断法のエッセンスを指導してもらっています。ここでの教育内容を実際の患者さんの診療にあたる際に活用してみてください。今年度の内容はFig1でご覧ください。

3.信用されること

過去には、医師だけで医療を行っていた時代もあると思いますが、今は、看護師をはじめとする多種職のparamedical stuffの助けのもと、最善の方法を見出すのが治療の根源かもしれません。そこで医師として大切なことは、正確な診断のもと、適切な指示を出す事とともに、適切な治療技術を示さなければならないと思います。脱水の患者が来て、スタッフが点滴を入れるのが難しいなら、エコーを見て末梢点滴をとって治療をしても良いだろうし、末梢からの確保が難しかったら、医師には中心静脈カテーテル(CV)を挿入するという方法もある。そういう技術をきちんと初期研修中にきちんとマスターすることで、医療スタッフからの信用度は上がるでしょう。ではどうしたら穿刺のチャンスをもらえるのでしょうか。我々上級医は全ての研修医にそのチャンスを与えたいと思っていますが、一方で、患者さんに「余計な合併症」を受けさせるわけにはいかないと思っています。実は、研修医に研修終了前の面接をすると、実はCVの穿刺のチャンスは、研修医によってばらばらでした。100例に到達しようとする研修医もいる傍ら、数例しかやったこともなく、それも完結していなかったりする研修医もいました。何が違うのか、どうすればチャンスは来るのか。担当医が安心してチャンスを与えてくれるのは、まず、自分で準備がすべてでき、手順をわかっているか、イメージトレーニングをしているかではないでしょうか。それができている研修医はどんどんその機会も増え、手技が確実で、スピーディーになっていくと思いませんか。その為に研修医を中心に使えるシミュレーションセンターを月1回借りていますので、是非上級医を連れていって、どんどんシミュレーションをしてください(その時は無料です)。ここは上級医の先生も内視鏡手術やロボット手術のために1回500円で使用されていますので、興味があれば何回でも使えます。

トレーニングを積むことで得られた技術が確実な医師は信用され、さらに多くの機会に恵まれ育っていくものと思います。ただし、技術の素晴らしい医師あるあるですが、そこにあぐらをかき、天狗になって横柄な態度はどうでしょうか。その時点でスタッフとのチームワークの質が下がるのは想像できますよね。

4.悩むこと

日々患者さんの診断をして、検査を出して、専門医に結びつけた(時に治療を開始した)からと言って、常に正しいことばかりができるわけはないですよね。間違うこともあるかもしれません。2度の間違いをしないために1度目の間違いを反省して悩んでください。どうすればこの間違いを防げたのか。そして、ゼロ報告をして、そのことを皆の前でプレゼンテーションしてください。毎週木曜日の夜の勉強会は、研修医の知識や技術の伝授としていますが、そこでは研修医がプレゼンテーションの中心になり話してもらっています。自分だけが間違うのではないので、是非失敗談を反省とともに話してください。それが発表した本人にどれだけ深く記憶に残り、その後の人生に影響するかもしれません。そしてできれば、自分の失敗反省ノートを作ってください。木曜の夜の勉強会のタイトルはFig2に提示します。

わからないことを先輩に聞き、理論や対処法を教えてもらうのは間違っていないでしょう。しかし、そこで、自分で考え、教科書を見ながら悩んで最後に聞くのと、わからないことを一から聞くのとでは、大きな違いであると思いませんか。是非悩んで、勉強して、そしてまた悩んでください。我々医師は一生勉強するのが仕事で、私自身今でも悩んでいます。本当にこれが正しい方法か、本当に最善か。わからなければ、教科書に戻り、論文を調べて解決策を探そうとします。学会発表も論文作成も是非活発にやってほしいと思います。人前で話す事、きちんと論文化する事が大切なのは、多くの人に理解してもらえるのと同時に著者の知識が深く正確になるからです。当臨床研修センターでは、年に1度以上は学会等で発表し、論文化することを全員の目標としています。是非発表し、一生残る活字にまでしてください。そして、本当に解決してないことに遭遇するかもしれません。そこから実験研究に進んだりできたら素敵じゃないですか。それがきっかけで自分のライフワークが決まり、研究、博士、留学へとどんどん夢が膨らむこともあるかと思います。

5.そして、敬意を払うこと

最後に、仲間を先輩をそして後輩に敬意を払ってください。教えてもらった先輩には勿論感謝をきちんと表してください。その後どんどん教えてくれます。お世話になった分(もしかして、利用した分)は、心を込めて感謝を示さないといけないと思います。後輩に指導していたら、反応も悪い、礼儀もない、覚えも悪いいわゆる「困ったちゃん」がいたらどうしますか。是非良いところを探して褒めてあげてください。気付かない才能を見つけることで飛躍的に伸びるかもしれません。そしてあなたの素晴らしい協力者になって、将来のあなたを支えてくれるかもしれません。でも一番は同期の仲間に敬意を払うことかもしれません。一生の友になるはずですから。

知識が正確で、技術が確実な医師が、思いやりを持って、患者、スタッフに接する事ができれば、必ずや環境が改善し、先生自身が信頼され、患者が求めていて、医師として先生のやりたい医療が舞い込んでくることは間違いないと思います。

是非我々と一緒に素敵な医師を目指して勉強してみませんか?
 

Fig1 モーニングレクチャー 令和5年度開催実績

Fig2 木曜夜の臨床講座 令和5年度開催実績

臨床研修センター長 中村雅則

 

2023年度の研修医修了式

2023年度の研修医修了式(2024.3.18)にて

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市立札幌病院 

〒060-8604 札幌市中央区北11条西13丁目1-1

電話番号:011-726-2211

ファクス番号:011-726-7912