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この紙芝居は、子どもに対して生物多様性を守ることの大切さについて学習してもらうことを目的に、平成26 年度まちなか生き物活動業務における「ミツバチが教えてくれる生き物とのつながりプロジェクト」にて、NPO 法人サッポロ・ミツバチ・プロジェクトと共同で作成したものです。
表紙:ありがとう もりちゃん
ここは、地球の大地の一角、たくさんのミツバチが暮らす団地があります。
屋上には【たくさん集めよう!花のミツ!】という大きな看板が立っています。それは、ミツバチ団地会長ジョオウサマが作ったもの。
ミツバチのお仕事は毎日毎日お花達から、たくさんのあまぁ~いミツを集めて来ることです。
団地の中には、採ってきたミツを自動で運ぶ機械やミツの味を調べる研究所があります。ここは、近代的なミツバチ団地なのです。
季節は春、キラキラ、太陽の光が暖かく大地を照らします。今年も忙しい日々がやってきました。さぁ~て、ハチミツ集めがはじまります。
ジョオウサマは「今日もしっかり花のミツをしぼりとってきなさい!」と大きな声を張り上げて言いました。
ミツバチたちは、みんな大急ぎで羽にジェルを塗ったり、頭のアンテナを磨きました。そして、シューン、ヒューン、次から次へと、広い青い空へ飛び出していきます。ミツヨちゃん、ミツコちゃん、ミツエちゃん、色んな仲間が飛び出していきます。
おや?一人準備がまだできていない子がいるみたい。ドンッ「モリちゃん、どいて!遅れちゃうじゃない!」のんびり屋のモリちゃんはいつも邪魔者扱い、最後に団地を出ていきます。
そしてミツ集めの一日が暮れていきます。モリちゃん以外のみんなは得意顔で団地に戻ってきます。みんなポケットに一杯の花のミツを入れて。
団地の真ん中にはミツを量る機械があり、いつもの測定会がはじまります。ドキドキドキドキ「今日は誰が一番ハチミツを採ってきたかしら?」
1位・・・ミツコちゃん!2位・・・ミツヨちゃん!3位・・・ミツエちゃん・・・パチパチパチパチ~!
モリちゃんの名前はなかなか呼ばれません。今日もモリちゃんはビリなのです。
落ち込んで、ベッドに入ったモリちゃん。のんびり屋さんのモリちゃんは、いつもミツを集められません。
モリちゃんの眼から大粒の涙が溢れ出ました。「どうして私はミツをうまく集められないんだろう」
次の日もその次の日も、モリちゃんはビリでした。
そしてある日、ジョオウサマはとうとうこう告げました。「ミツ集めが下手な子たちは、もうこの団地にはいらないわ。出ていってちょうだい。」
ミツコちゃん、ミツヨちゃん、ミツエちゃんたちは、冷たい目でモリちゃんをみました。
モリちゃんは、団地から追い出されることになったのです。モリちゃんはその夜、悲しくて夜通し泣きました。
翌朝、モリちゃんは、ほんの少しのミツだけを持たされ、団地を出ました。「これからどうしたらいいんだろう。。。まずは食べるミツを集めないと」
モリちゃんはいつも優しくしてくれるライラックのおばさんに会いました。でもどうやら風邪気味です。「ごめんね、モリちゃん。ゴホゴホ。今日はミツはないのよ。明日また来てね」元気なくそう言うのです。
「早く良くなってね。」モリちゃんは、そうっと、ポシェットの中の自分のミツをあげました。
モリちゃんは、もっとミツを探すために遠くを目指して飛びました。もうここは知らない土地です。
すると急にあたりが茶色くなりました。
モリちゃんが見下ろした大地には赤色も黄色も白色もありませんでした。茶色くひび割れた地面だけが眼に映ったのです。
モリちゃんは降り立ちました。そこにお花畑はありません。「どうしてこんなことに!」地球に何がおこっているのでしょう?
次の日も、モリちゃんはもっともっと遠くまで飛びました。
しばらく飛ぶと、元気のないナナカマドのお姉さんに会いました。「最近は花粉を運んでくれるミツバチがいないのよ。これじゃ実をつけることができないわ。あなたも他のミツバチと同じなのかしらね…」
「私たちが花粉を運ばないから花や木がみんな困っているのね」モリちゃんは、一生懸命花粉運びを手伝いました。
「ありがとうモリちゃん!お礼にこれをあげるよ。」ナナカマドのお姉さんは、モリちゃんのポシェットにナナカマドの実を分けてくれました。
また次の日も、モリちゃんはもっともっと遠くまで飛びました。
しばらく飛ぶと、元気のないヒヨドリの女の子に会いました。「大好きな木の実がなくなってしまったの・・・」
「木が実をつけないと鳥さんたちも困るのね」モリちゃんは、ナナカマドのお姉さんにもらった実をあげました。
「ありがとうモリちゃん!これで飛べるわっ」ヒヨドリの女の子は、元気に飛び立っていきました。
モリちゃんは、女の子が実を食べた後に残ったナナカマドの種をポシェットに入れました。
また次の日も、モリちゃんはもっともっともっと遠くまで飛びました。
しばらく飛ぶと、元気のないヤマメのお兄さんに会いました。「山の中では、実も種も減って、木が少なくなっているんだ。そのせいで水が濁って、食べ物も見つけられないんだよ」
「山が豊かじゃないと魚さんたちも困るのね」モリちゃんは、一生懸命乾いた土を掘り起こし、カバンの中のナナカマドの種をまきました。来る日も来る日も種をまき続け、山は少し元気を取り戻しました。
「ありがとうモリちゃん!お礼にこれをあげるよ」ヤマメのお兄さんは、モリちゃんのポシェットに川底のミネラルたっぷりな土だんごを入れてくれました。
また次の日も、モリちゃんはもっともっともっともっと遠くまで飛びました。
しばらく飛ぶと、元気のないニンゲンのおじさんに会いました。「森がやせ細り、川の水が少なくなった。土の栄養が足りないから野菜も育たないんじゃ。。。」
モリちゃんはヤマメのお兄さんのことを思い出しました。「おじさん、私いいもの持ってるわ。これを使ったら畑が元気になるかもしれないわ」モリちゃんは、ヤマメのお兄さんにもらった土だんごを一生懸命畑にまき耕しました。
畑は少し元気を取り戻し、野菜を実らせました。「ありがとうモリちゃん!お礼に時間を巻き戻す不思議な魔法の呪文を教えてあげるよ。心のきれいなモリちゃんならきっと使えるはずだからね。でも一度しか唱えることができないから、よく考えて使うんだよ」ニンゲンのおじさんは、モリちゃんのポシェットに魔法の呪文が書かれた紙切れを入れてくれました。
「本当にそんなことができるのかしら??」モリちゃんは、首をかしげました。おじさんにさよならを言って空に飛び立つと呪文のことはすっかり忘れてしまいました。
それからモリちゃんは来る日も来る日も、飛び続け、お花たちや生き物の声に耳を傾け、一生懸命お手伝いしました。
ある日、モリちゃんは見覚えのある場所に着きました。「あっ、ここは!」
そう、そこは、あのミツバチ団地でした。
あれ?でも様子が変です。そこには誰もいませんでした。ジョオウサマもミツコちゃんもミツヨちゃんもミツエちゃんも。団地はボロボロに荒れ果てていました。
そしてモリちゃんは理解しました。「みんな天国にいっちゃったんだわ。。。」
モリちゃんの眼から大粒の涙が溢れ出ました。そしてそこにはいないみんなに語りかけるように言いました。
「私たちは自分だけでは生きていけないの。ミツをもらうだけでなく、みんなと助け合ってあの茶色い大地はお花畑になるの」
夜になって、星を見つめながら仲間のことを考えていると、ふとニンゲンのおじさんからもらった魔法の呪文のことを思い出しました。
「もしこの呪文が本当なら、みんながいたあの頃のミツバチ団地に時間を戻せるかな」モリちゃんはポシェットの奥から紙切れを取り出し、おそるおそる呪文を唱えました。
すると、あたりはどんどんやわらかな光に包まれていきました。ホワンホワンホワン、ホワンホワンホワン・・・・モリちゃんは光の中でゆっくりと目を閉じていきました。
「モリちゃん、早く目を覚ましてよ!」
「う~ん」
「モリちゃんってば!!」
目を開けると、、、そこは、、、あのきれいで近代的なミツバチ団地です!
「えっ?ミツコちゃん!生きてるの?今までのは夢だったの?」
「何寝ぼけてるのよっ。早くお花畑にいきましょう!」
モリちゃんの頭の中はまだ混乱しています。
そっとポシェットの中に手を入れました。そこには、、、あの呪文の紙切れがありました。「あの呪文は本当だったんだ!!!」
それと同時に、モリちゃんは、今までの団地とは違う心地よい空気を感じました。ジョオウサマや仲間のみんなには友だちをおもう温かいまなざしがありました。
そう、そこは、モリちゃんの優しさと生き物のつながりがつくったもう一つの世界なのです。
モリちゃんは、嬉しくて嬉しくて、団地の上から精一杯の声を上げ、大空に飛び出しました。
「みんな、ありがとう!」モリちゃんは、花や木や鳥や魚や人や空や雨や土、そしてミツバチの友だちみんなに感謝しました。
モリちゃんの目は輝いています。モリちゃんはもうひとりぼっちじゃありません。
団地の屋上には大きな看板が立っています。
そこには【たくさん集めよう!大地の友だち!】の言葉が書かれていました。
この話を聴いてくれたみんなも「大地の友だち」のひとり。
さあ地球の声に耳を傾けて。がんばり者のミツバチ・モリちゃんと一緒に。
※「ありがとう もりちゃん」(紙芝居)に関する一切の著作権は札幌市に帰属し、生物多様性の普及促進及び環境教育の目的で使用する場合に限り使用できることとし、営利目的での使用を禁止します。
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