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更新日:2016年2月22日

答申書 3-1

 3-1 公共交通に係る施策の方向性

 公共交通を軸とした交通体系の確立や適切な自動車交通の実現に向けた、さまざまな施策に積極的に取り組む必要がある。
 また交通施策を推進していくためにはまちづくりと一体的に取り組んでいくことが重要である。

3-1 公共交通ネットワークの充実
 公共交通を構成する各機関について、まちづくりやネットワークとしての役割を認識するとともに、さまざまな公共交通が有機的に連携し、それぞれの特性や役割を活かしたネットワークの充実を図ることが重要である。
  (1)交通機関ごと(地下鉄など軌道系、バス、路面電車)の基本的考え方
  1)地下鉄など軌道系交通機関
 (ア)まちづくりとしての役割
 札幌における都市構造の骨格軸であり、冬期間においても安定した運行を行うことができることから、冬に強いまちづくりへ寄与する。
 また、地域中心核など拠点の育成・整備や沿線における居住の促進が図られるとともに、都心との高いアクセス性を活用することで過度な自動車利用を抑制し、歩行者や環境を重視した都心の魅力づくりに貢献する。
 (イ)ネットワークとしての役割
 都心を中心とする放射状の軌道系交通機関は、札幌における最も基軸となる公共交通であり、大量性、定時性という機能を活かし、都心へ向かう広範な交通を集中させて、効率的な輸送を行う。
 特に、冬期間に道路交通機能が低下する中において、安定した交通機能を確保し、札幌の社会経済活動を支える。
 (ウ)軌道系交通機関の基本的考え方
 将来の交通需要への対応、冬期間においても安定した交通機能の確保、さまざまな拠点の育成・整備、他の交通機関との連絡性の向上などの観点から、その拡充や機能向上を図っていく必要がある。
  2)バ ス
 (ア)まちづくりとしての役割
 拠点周辺部の住宅地域における利便性の高い生活環境の確保を図るとともに、後背圏から拠点へのアクセス性の向上や拠点相互の連携により拠点の育成・整備に寄与する。
 (イ)ネットワークとしての役割
 市内各地域とその近傍の拠点とを結び、基軸となる軌道系交通機関との連携を図りながら、地域の面的な輸送を担うとともに、多様なニーズやまちづくりを支援するきめ細かな輸送を担う。
 (ウ)バスネットワークの基本的考え方
 地下鉄、JRを基軸とし、これにバスネットワークを有機的に連携させ、都心へ向かう通勤・通学といった大量性・定時性を必要とする広範な交通需要を軌道系交通機関に集中させることを基本とする。
 さらに、地域間の交通需要や市街地整備の進展などによる交通需要の変化に対応するとともに、まちづくりを支援するきめ細かなサービスの確保を図る。
  3)路面電車
 (ア)まちづくりとしての役割
 都心における環境改善や電車が通ることのシンボル性など、都心の魅力づくりに貢献するとともに、都心や都心周辺部においては、利便性の高い生活環境の創出に寄与する。
 (イ)ネットワークとしての役割
 都心および都心周辺部において、わかりやすく、人にやさしい移動手段である。
 (ウ)路面電車の基本的考え方
 都心や都心周辺部の活性化、高齢社会や環境低負荷型社会に対応した、人にやさしく利用しやすい交通手段としての役割を期待されている。
 今後は、都心居住の促進や魅力ある都心の創造に寄与する都市の装置として、その機能の向上や拡充を進める。

  (2)軌道系交通機関の導入検討が必要な方面
  1)審議方面の選定
 今後、軌道系交通機関の導入検討が必要な方面は、将来において大量に発生する交通需要への対応や異なる軌道系交通機関の連携といった交通計画の視点に加えて、多中心核都市構造における拠点の育成・整備への寄与や都心の魅力づくりへの寄与といった、札幌市が目指すまちづくりの視点も考慮することにより、以下の方面を審議方面として選定した。

 ■清田方面…清田地域中心核の育成・整備、札幌ドームのアクセス対応、
 将来需要への対応
 ■南部方面…芸術の森、定山渓、藤野方面などのアクセス性の向上、
 将来需要への対応
 ■北部方面…麻生広域交流拠点、栄町地域中心核の育成・整備、
 石狩方面のアクセス性の向上、将来需要への対応
 ■JRと地下鉄の連携強化 ・地下鉄新さっぽろ駅~JR森林公園駅
  ・地下鉄宮の沢駅~JR発寒駅
 …移動の連続性の向上、災害時における代替性の向上
  2)審議にあたっての視点
 各方面の審議にあたっては、将来的なまちづくり(第4次長期総合計画)からの必要性や導入により期待される効果、および、事業の採算性や課題解決の難易度など事業の可能性から総合的に判断した。
 特に事業の採算性については、多額な累積赤字を抱える市営交通事業の状況などを踏まえ、利用者や収支採算性について慎重な検討を行った。
 地下鉄延伸の検討においては、現状の事業手法では採算性の確保が難しいことから、上下分離方式など運営の効率化を想定した検討を行った。
 また、地下鉄以外の機種についても事業化の可能性について検討を行った。
  3)方面毎の審議結果
  (ア)清田方面
 清田方面は人口も集積しつつあり、さらに後背圏での人口増加も見込まれるなど、地域中心核としてのまちづくりが必要となっている。
 また、札幌ドームへのアクセス確保や、国道36号の清田方面から地下鉄福住駅に向かって発生する将来需要への対応も必要である。
 軌道系交通機関の整備は、都心から清田地域中心核に向かって骨格軸が形成され、地域中心核の育成・整備に寄与するほか、札幌ドームへのアクセス手段としての役割も期待される。
 事業性の面では、地下鉄で運営の効率化が図られた場合には、採算性を確保できると考えられる。
 今後は、人口の動向や地域のまちづくりの進展、札幌ドームの利用状況や周辺の交通状況などを見極めながら、地下鉄の延伸に向けた検討を進めていくことが必要と判断される。
 (イ)南部方面
 南部方面は、人口の集積はみられるが、市街地が細長く面的な広がりが少ないなど地形的な制約から、今後大きな人口増加は見込まれない。
 また、平岸通に石山方面から地下鉄真駒内駅に向かって将来需要も発生するが、それほど大きくない。
 しかし、国道230号、453号が基幹的な交通基盤となっているが、通勤時や冬期間における交通渋滞が慢性化しており、公共交通の円滑性の確保が課題となっている。
軌道系交通機関の整備は、高次都市機能拠点の定山渓、芸術の森や、藤野方面などから都心へのアクセス性の向上が期待される。
 事業性の面では、地下鉄での採算性の確保など課題は大きい。また、他の機種では後背圏の需要を集約することができれば、採算性は高まるものと考えられるが、乗継時間や料金など乗継抵抗が生じることや、冬期運行面における課題がある。
 今後、軌道系交通機関の導入については、課題解決の可能性を含めて検討していくことが必要であるが、当面は公共交通の円滑性を確保するため、バスの利便性向上や道路網の充実などについて検討することが必要と判断される。
 (ウ)北部方面
 北部方面は、麻生・新琴似地区での人口や商業施設の集積が高く、後背圏の屯田地区においても将来的に集積が見込まれる。
 また、通勤通学など札幌市と結びつきが強い石狩市が隣接しており、西5丁目樽川通に石狩方面から地下鉄麻生駅に向かって発生する将来需要への対応が必要となる。
 軌道系交通機関の整備は、麻生の広域交流拠点としての機能強化や栄町の地域中心核としての充実が期待されるとともに、北部方面からのアクセス性の向上も期待される。
 事業性の面では、北部方面の麻生、栄町の2つの拠点や、広域的な連携も考慮し検討を行った。
 地下鉄では採算性の確保などが課題である。また、他の機種では採算性を確保することができると考えられるが、乗継時間や料金など乗継抵抗が生じることや、冬期運行面における課題がある。
 今後、軌道系交通機関の導入については、人口の動向や地域のまちづくりの進展を見極めるとともに、広域的な交通機能の充実の視点も考慮し検討していくことが必要と判断される。
 また、需要確保の見通しや北部方面の交通軸との整合性を考慮すると、現状においては、麻生からの展開が優位と判断される。
 (エ)JRと地下鉄の連携強化
 乗り継ぎの解消や、既存ネットワークの有効活用の観点から異なる軌道系交通機関の連携が求められる。
 JRと地下鉄の連携は、軌道系ネットワークの形成が図られ、移動の連続性の向上や、災害時の代替機能の確保などが期待される。
 しかし、事業性の面においては、地下鉄で採算性を確保するだけの需要は見込めないことから、実現化については将来的な課題と判断する。
  4)軌道系交通機関の導入に関する留意点
 今後、地域のまちづくりの進展や人口の見通しなどを見極めながら、慎重に検討を進めていく必要がある。
 さらに、事業の成立性を高めるために、上下分離方式など新たな事業手法や運営の効率化についても検討していく必要がある。

 審議方面図(PDF:879KB)

  (3)バスネットワークの充実
  1)軌道系交通機関との連携強化
 現在、地下鉄やJRに接続しているバス路線が系統数で約7割を占めている。都心直行型路線と比較して駅接続型路線は、軌道系交通機関と連携することによる定時性の向上やエネルギー効率、冬季交通機能の確保などの面で利点が大きい。
 したがって、バスネットワークの基本となる駅接続型バス路線は今後とも維持していく必要がある。
 さらに、軌道系交通機関との有機的な連携を効果的に進めるために、駅接続型路線におけるバスレーンの設定およびPTPSの導入、冬期間の優先的除排雪といった公共交通の優先性を確保することが重要である。あわせて、駅周辺の違法路上駐車の排除による駅へのアクセス性の向上やバスレーンへ進入する一般車の排除などバスの走行環境の改善を図る施策も積極的に推進していく必要がある。
  2)多様なニーズに対応したバス路線
 現在、軌道系交通機関により移動することが非効率な地域や、近年増加している隣接する地域間の流動に対応するべく、都心直行型や地域間のバス路線が設定されている。
 今後も、時間的な制約が少ない私用交通や乗継抵抗の大きな移動制約者へ対応する都心直行型路線、隣接する地域間で増加している交通流動へ対応する環状バス、地域のまちづくりを支援しより生活に密着したコミュニティバスなど、多様なニーズに合わせたバス路線について検討していく必要がある。
  3)バスネットワークに関する留意点
 バス路線は、複数の事業者が運行しており、さらに規制緩和により新たな事業者の参入も考えられる。また、公共交通の優先性を確保する施策を推進するにあたっては、警察、道路管理者などの協力が必要不可欠である。
 今後、バスネットワークの充実を図っていくためには、札幌市、関係機関、バス事業者が密接に連携し、協働して進めていく必要がある。

  (4)路面電車の活用
  1)既存路線の機能向上
 現在の路面電車は、利用人員の低迷や施設の老朽化などさまざまな課題がある。
 今後は、軌道があることの優位性を充分に発揮させるために優先信号システムによる速達性の確保や、路線のループ化(環状型)により利便性の向上を図る必要がある。
 また、架線の集約化による都市景観や防災性の向上にも配慮する必要がある。
  2)都心や都心周辺部における延伸
 路面電車は都心居住の促進や魅力ある都心の創造に寄与する都市の装置としての役割を期待されている。
 そのため、将来のまちづくりを展望し、都心や都心周辺にある各種プロジェクト等との連携を図るなど、都心を中心としたまちづくりの支援を行うための延伸計画についても検討していく必要がある。
  3)路面電車に関する留意点
 路面電車の導入にあたっては、車線数の減少による自動車交通への影響や、荷さばき・駐車場の出入口といった業務活動に対する影響が懸念される。
 今後、路面電車の活用に向けては、都心のまちづくりとの整合や、共存する自動車交通との関わりなどについて、市民や都心商業者等との合意形成を図っていく必要がある。
 また、事業の採算性についても慎重に検討していく必要がある。

■公共交通ネットワークのあり方一覧表■

 

地下鉄など軌道系交通機関

バ ス

路面電車

まちづくり
としての
役割

・都市構造の骨格軸
・冬に強いまちづくり
・拠点の育成・整備
・沿線における居住の誘導
・都心の魅力づくり

・拠点周辺部の住宅地域における利便性の高い生活環境の確保
・後背圏から拠点へのアクセス性の向上や拠点相互の連携による拠点の育成・整備

・都心の魅力づくり・都心や都心周辺部における利便性の高い生活環境の創出

ネット
ワーク
としての
役割

・基軸となる公共交通
・都心へ向かう広範な交通を集中させる
・大量に発生する交通需要の効率的な処理
・冬期間においても安定した交通機能を確保

・市内各地域とその近傍の拠点を結び、基軸となる大量輸送機関との連携を基本とする
・多様なニーズやまちづくりを支援するきめ細かな輸送を担う

・都心および都心周辺部における人にやさしい移動手段

基本的
考え方

 将来の交通需要への対応、冬期間においても安定した交通機能の確保、さまざまな拠点の育成・整備、他の交通機関との連絡性の向上などの観点から、その拡充や機能向上を図っていく必要がある。

 地下鉄、JRを基軸とし、これにバスネットワークを有機的に連携させ、都心へ向かう通勤・通学といった大量性・定時性を必要とする広範な交通需要を軌道系交通機関に集中させることを基本とする。
 地域間の交通需要や市街地整備の進展などによる交通需要の変化に対応するとともに、まちづくりを支援するきめ細かなサービスの確保を図る。

 都心や都心周辺部の活性化、高齢社会や環境低負荷型社会に対応した、人にやさしく利用しやすい交通手段としての役割を期待されている。今後は、都心居住の促進や魅力ある都心の創造に寄与する都市の装置として、その機能の向上や拡充を進める。

今後の
充実の
方向性

○まちづくりおよび将来需要への対応から導入検討を行う。
 ・清田方面
 ・南部方面
 ・北部方面

○軌道系交通機関との連携強化
・駅接続バス路線等における優先対策の推進
○多様なニーズに対応したバス路線
・環状バス、コミュニティバスなど

○既存路線の機能向上
・優先信号システム
・ループ化(環状型)
・架線の集約化
○まちづくりとの連携
・都心や都心周辺部における延伸

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札幌市まちづくり政策局総合交通計画部都市交通課

〒060-8611 札幌市中央区北1条西2丁目 札幌市役所本庁舎5階

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