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更新日:2023年2月17日

答申書 第2章

 第2章 今後の都市交通の基本的な考え方

 公共交通と自動車は、それぞれの特性を活かしながら、適正な役割分担を図っていくことが求められる。
 これまで札幌は、人口や経済活動の集積、自動車の普及などを背景として、市街地の拡大が急速に進み、マイカーを中心とした自動車利用が増大してきた。
 今後、高齢者、環境などに配慮し、活力あるまちづくりを目指すためには、「公共交通を軸とした交通体系の確立」とともに、「適切な自動車交通の実現」を目指すことが必要である。

2-1 公共交通と自動車の役割分担のあり方
 まちづくりの将来像や、今後の社会状況の変化を踏まえた公共交通と自動車の適切な役割分担を図ることが必要である。 
  (1)公共交通の役割
   1)すべての人にとって安心して移動できる安全・快適な都市交通の実現
 高齢者数の増加や高齢者の外出機会の高まりにより、今後は高齢者の交通の増加が見込まれる。また、障害者の積極的な社会参加の機会を増やしていく必要がある。
 そのため、事故率が低く、安心・安全な交通機関である身近な乗り物としての公共交通の役割は今後一層大きくなるとともに、ノーマライゼイションの推進からも、だれもが利用できる公共交通の役割は大きい。
   2)環境負荷の小さい都市交通の実現
 交通混雑の緩和や交通公害の防止など我々が生活する上での都市環境問題の改善を図っていくとともに、地球レベルでの温暖化対策や限りある資源の有効利用などに取り組んでいく必要がある。
 そのため、輸送効率エネルギー効率が高い公共交通の利用を高めていくことが一層求められている。
   3)冬に強い都市交通の実現
 地下鉄などの軌道系交通機関は積雪の影響を受けず、冬期間においても安定した運行を確保することが可能である。
 また、積雪寒冷地における札幌の飛躍的な発展を支えるなど、冬季の都市活動におけるライフラインとして重要な役割を果たしている。
 したがって、冬に強い軌道系交通機関を中心に、冬期間にも安定した交通機能を確保していくことが必要である。
   4)拠点の育成・整備などまちづくりの支援
 公共交通は、拠点や都心へのアクセス性の向上、利便性の高い生活環境の創出といった役割を担い、都心など拠点の育成・整備による多中心核都市構造の実現や、都心や都心周辺部の居住促進などのまちづくりを支援する。
  (2)自動車の役割
 自動車はドア・トゥ・ドアでの移動が可能であることから随意性に優れ、個人の行動に対するニーズが多様化する中、深夜など時間帯にとらわれず自由な移動を可能としている。
 また、他の交通機関の有無に関わらず、目的地を自由に選択することができ、行動範囲の拡大にも貢献している。
 今後も、このような私的交通を支えていくとともに、公共交通による移動が難しい目的や区間に関わる交通を支えていく役割を担う。
 さらに、物流などを担う業務系交通は、自動車に依存しなければならないことも多く、都市の産業活動や市民生活の基盤を支えていく役割も大きい。
  (3)公共交通と自動車の役割分担のあり方
 公共交通は自動車利用の増加に伴い、利用者が年々減少傾向を示しているが、今後は、移動制約者への対応、都市環境問題への対応、冬季交通の確保など、魅力と活力あるまちづくりを実現していく上で、大きな役割を期待されている。
 一方、自動車は、人と物の自由な移動や生活圏の拡大をもたらし、都市の社会経済的な発展に大きく寄与してきた。今後も、個人の自由な移動や生活を支えていく手段としての役割を担っていくものと考えられる。
 しかし、近年の自動車利用をみると、都市部における渋滞問題やそれに付随する都市環境問題の悪化などさまざまな問題を引き起こしており、今後、持続的な発展が可能な都市を実現していくためには、自動車利用のあり方について見直していくことが必要となってきている。
 そのためには、公共交通がより多くの人に利用されるよう、その利便性を向上させるとともに、自動車への過度な依存がもたらす弊害について共通認識を形成し、地域や目的に応じた自動車利用への誘導を図ることが必要である。
 今後は、公共交通のネットワークの充実や利便性向上策の推進による「公共交通を軸とした交通体系の確立」を図り、過度な自動車利用からの転換を促すことによる「適切な自動車交通の実現」を目指していく必要がある。

2-2 公共交通を軸とした交通体系の確立
 公共交通を軸とした交通体系を確立するためには、ネットワークを充実することに加え、利便性を向上させることや、まちづくりの中に公共交通を活かしていくことが重要である。 
  (1)公共交通ネットワークの充実
 これまで、都市化の進展による交通需要に対応するため、軌道系交通機関を軸にバスがそれに接続することを基本とした公共交通ネットワークを整備してきた。
 今後も、多中心核都市構造の形成に向けて、さまざまな拠点の育成・整備を図るためには交通利便性の向上が必要である。そのためには、地域の特性に応じた交通基盤整備を進めるとともに、都心をはじめとする拠点へ周辺地域から円滑に訪れることができ、冬期間にも安定したサービスを提供する公共交通ネットワークの充実に努めることが必要である。
  (2)公共交通の利便性向上
 札幌市は、乗継施設の整備、バスと地下鉄の乗継割引、共通乗車制度などさまざまな利便性向上策に取り組んできた。
 今後は、高齢者や身体障害者など移動制約者への対応、多様なニーズへの対応、国際化への対応などから、「わかりやすさ」「使いやすさ」を重視した一層の利便性向上に努めることが必要である。
  (3)公共交通を活かしたまちづくり
 多中心核都市構造を構成する各拠点においては、それぞれの地域特性を考慮しながら、安全で快適な歩行者空間の確保や乗継利便性の向上など交通結節機能の強化を図っていく必要がある。
 その場合、歩行者・自転車と公共交通を重視するとともに、拠点の空間の高度利用と公共・福祉サービスや居住といった多様な都市機能の集積の促進を図り、公共交通を活かしたまちづくりを進めることが重要である。

2-3 適切な自動車交通の実現
 過度な自動車利用からの転換を促し、適切な自動車交通を実現するためには、交通需要を誘導することに加え、市民意識の転換やまちづくりの面からも取り組むことが重要である。 
  (1)交通需要マネジメント(TDM)の推進
 交通需要マネジメント(TDM)は、自動車の効率的利用や公共交通への転換など、交通行動の変更や交通需要の調整を図ることにより、交通混雑など自動車の利用に伴う弊害を解消する都市交通施策である。
 公共交通を軸とした交通体系の確立と適切な自動車交通を実現するためには、公共交通が有効活用されるとともに、交通手段が適切に選択されることが必要不可欠であり、TDM施策を積極的に展開していくことが必要である。
  (2)市民意識の転換
 自動車は随意性が高く、身近な交通手段として普及しており、私用目的の短い移動に自動車を利用するなど、自動車保有者は自動車利用を前提としたライフスタイルを身につけてきている。
 そのため、自動車交通による環境への影響などについて市民が自ら考え、行動することが不可欠である。
 したがって、過度な自動車利用がもたらす弊害などについてわかりやすく市民へ訴えかけるとともに、地域や目的に応じた自動車と公共交通の役割を明確に提示しながら市民意識の転換を促していくことが必要である。
 また、さまざまな交通政策とあわせて、過度な自動車利用の自粛や公共交通優先の意識向上など、自動車利用に関するルール作りを市民と行政が協働で進めていく必要がある。
  (3)自動車に過度に依存しないまちづくり
 自動車からの転換による交通公害の防止、エネルギー効率の高い交通手段の提供、歩行者を重視した交通基盤施設の整備など、環境への負荷の低減と、人にやさしい交通を実現するために、公共交通を活用して自動車に過度に依存しないまちづくりの推進を図っていくことが重要である。
 特に、都心は公共交通の活用などによって自動車の抑制を図り、快適な歩行空間を創出するなど、歩行者や環境を重視したまちづくりを実現する必要がある。

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札幌市まちづくり政策局総合交通計画部都市交通課

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