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更新日:2024年2月5日
当院気胸センターは、2008(平成20)年9月に開設し、毎年延べ200名以上の患者さんを診察し、様々な治療を行い社会復帰していただいております。
気胸は若年男性に多い病気のため受験期の学生さんに発症することも多く、手術治療など入院期間を短くする治療を心がけております。一方、道内は喫煙率がいまだ高く、喫煙の影響による肺気腫を基礎疾患とした比較的年齢の高い気胸も増加しています。肺気腫など肺基礎疾患を有する患者さんは空気漏れが遷延し、難治化することがあります。難治性気胸に対しては、手術(全身麻酔あるいは全身麻酔困難な患者さんは局所麻酔)、癒着療法、胸腔造影下フィブリン糊肺瘻閉鎖法(TGF)、気管支塞栓術などを組み合わせて治療を行っています。
女性気胸は、生理に関係して発症する希少部位異所性子宮内膜症による気胸(月経随伴性気胸)、原因が解明されていない肺リンパ脈筋管筋腫症のような特殊な気胸が隠れている場合があり、注意が必要です。
家族性(遺伝性)の気胸は、気胸以外の症状(皮疹、腎癌)が発症することがわかっています。そのため、両親、親戚、祖父母など近しい方が気胸を発症している場合などは、当センターにご相談ください。
気胸に関し何かありましたらお気軽にご相談ください。
運動中や安静時、睡眠中など日常生活を送っているどんな場面においても気胸は突然発症します。代表的な症状は突然の胸痛です。肺の虚脱に伴い、軽度の息切れを自覚します。しかし、肺虚脱後時間が経過すると症状はいったん治まる場合が多いですが、この時期には体動時の息切れを自覚する場合があります。
気胸レントゲン
軽度
中等度
重度
緊張性
自然気胸は、20歳前後のやせ形の男性に多く、肺表面に肺嚢胞(ブラ;幕の薄い風船)が発生し破裂することにより発症します。続発性気胸は50歳から60歳の男性に多く、肺気腫、間質性肺炎等の基礎肺疾患を有し、脆弱となった肺表面(臓側胸膜)が破綻し発症します。女性気胸は比較的まれではありますが、女性特有の気胸(肺リンパ脈管筋腫症、月経随伴性気胸など)が見られます。
気胸CT
ブラ
軽度気胸であれば当院外来で経過観察を行います。中等度以上の気胸であれば初回発症でも入院のうえ保存的治療(胸腔ドレナージ)を行っています。短期間に繰り返し気胸を発症した場合、保存的治療中空気漏れが持続した場合は胸腔鏡手術をおすすめしています。
高齢で体力が落ちている患者さん、重症な肺疾患を合併している患者さんなどは全身麻酔もリスクとなるため、積極的に胸腔造影を施行し、肺瘻の位置を確認後、気管支充填術、胸腔造影下フィブリン糊肺瘻閉鎖法(TGF)、癒着療法、局所麻酔下胸腔鏡手術などを組み合わせ治療を行っています。
全身麻酔下に、患側の胸に2~3か所の傷をあけ手術を行っています。肺嚢胞(気胸の原因となる病変)を自動縫合器(ステープラー)で切除する、熱凝固装置で熱変性させる、あるいは縫合や結紮で空気の遮断を行っています。このままでは術後再発する頻度が高いため、治療箇所を中心に広範囲に補強のためのシート(ポリグリコール酸シート、酸化セルロースシート)を貼り付けてきます。術後再発率は6.4%となっています。術後の痛み軽減のため、硬膜外麻酔を全身麻酔に併用したり、術中肋間神経ブロックを追加して、痛みの少ない治療を心がけています。
自動縫合器(ステープラー)
ネオベールシート
ダブルカバーリング(ポリグリコール酸シートの上に酸化セルロースシートを貼付)
局所麻酔と静脈麻酔により鎮静をかけ、気管支鏡でシリコン塞栓物(EWS)やポリグリコール酸シートおよびフィブリン糊を用い塞栓しています。
胸腔造影を行い、空気漏れの位置を確認しカテーテルによるフィブリン糊の胸腔内散布(TGF治療)で空気漏れを閉鎖しています。
ピシバニール(免疫賦活剤)、ミノマイシン(抗生剤)、50%ブドウ糖溶液、自己血などを胸腔ドレーンから胸腔内に注入して胸腔内の炎症を惹起し、肺の癒着を促すことにより空気漏れを停止させます。
全身麻酔が困難な患者さんに対して、硬膜外麻酔、肋間神経ブロック、局所麻酔を用い、静脈麻酔の鎮静を併用して手術を施行しています。自動縫合器を用いた肺瘻部の切除術や、人工のシート(ポリグリコール酸シート)とフィブリン糊を用いた肺カバーリング、あるいはフィブリン糊単独での閉鎖術を行っています。
2012年4月から2023年12月までの実績
新規患者数 1497名
治療内容 | 件数 |
---|---|
全身麻酔手術 |
830 |
局所麻酔手術 |
8 |
気管支充填術 |
19 |
胸腔造影下フィブリン糊肺瘻閉鎖法(TGF) |
21 |
癒着療法 |
70 |
集学的治療(上記を組み合わせた治療) | 46 |
櫻庭 幹
札幌市内あるいは近隣市町村の気胸患者さんの受け入れを行っています。当センターは、24時間、365日受け入れ可能な施設です。自然気胸から続発性気胸まで、年齢層も幅広く受け入れを行っています。外科手術以外にも上記の様々な方法により気胸の治療を行っています。
当センター初診となる患者さんは平日診療以外の時間帯はまず、診療所、医院、病院、夜間急病センター、休日の当番病院などを受診していただき、気胸の確定診断をつけていただく必要があります。その後、担当先生から当センターに連絡していただければ24時間、365日いつでも対応させていただいております。当センター受診歴のある患者さんは直接の来院が可能です。
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