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我が家は札幌市内でありながらも、今なお豊かな自然が残る郊外の地にあります。冬季の豪雪には閉口しますが、季節ごとに様変わりする野趣あふれる光景に心奪われることもしばしば。特に早春の野鳥たちの訪れは大きな楽しみの一つです。可愛らしい庭の訪問者たちは、雪解けと共ににわかにその数と種類を増し、私の心を和ませてくれます。
しかし、厄介な問題も発生します。バス通りに面して高くそびえる街路樹に毎年カラスが巣をつくるのです。ヒナがかえり子育ての時期になると、親カラスの攻撃に頭を悩ます日々が始まります。どうしたものか私は毎年攻撃を受けるのです。バス停手前の横断歩道が最大の難所。通勤時には避けることのできない関所のようなエリアです。手を上げると襲われないと聞きますが、初老の男が小学生さながら手を挙げて渡るのは何とも気恥ずかしい。決死の覚悟でバス停に向かわなければなりません。
禅語の中に「晬啄同時(そつたくどうじ)」という言葉があります。晬とは、「もうすぐ生まれるよ」とヒナが内から卵の殻をつつく音。啄とは、そうした変化に気づいた親鳥が「ここから出ておいで」と外から殻をつつく音。自らの力だけでは殻を破ることができないヒナにとって、自分がつつくタイミングと親鳥のそれとが合った時にこそ、安心して生まれ出ることができるようです。親子による奇跡的な誕生のドラマが数メートル頭上で毎年繰り返されていることを思うと、大切な命を必死に守る親カラスの攻撃も致し方なしと諦めるしかありません。
野鳥たちの誕生シーンに限らず、人間の子どもたちにも「晬啄同時」が必要な時があるような気がします。成長の過程では、思い悩むこと、判断に迷うこと、行動の方向性を見失いがちになることがしばしば起こります。悩みや迷いの中にあっても、子どもたちは解決のために前を向こう、自身の殻を破ってチャレンジしようとする場面を迎えることがあります。そんな時、周りの誰かがそっと背中を押してあげることができたなら。親鳥がヒナの勇気を促すように…。当センターの相談員として心がけていることの一つです。
春はもうすぐそこに来ています。鳥たちもやわらかな陽射しを肌で感じ、新たな命をはぐくみ始めます。支え、支えられる営みの季節の到来にあたり、子どもたちの健やかな成長と自立を促す支援を心に刻みたいと思います。
令和5年3月1日
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