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【はじめに】
みなさん、こんにちは。今回でコラムを書かせてもらうのは3回目となります。1、2回目は僕の好きな日本の映画について書きましたが、今回は誰もが知っているスタジオジブリの作品『千と千尋の神隠し』について書きました。
今年度は、コロナの影響で映画館の上映作品が大幅に減ってしまいました。そんなコロナ禍の中、過去のジブリ作品4つが特別に上映されました。本作品は、僕が中高生の頃にDVDでは何度も観たことがありましたが、映画館で観たことは一度もなかったので、10数年振りに観に行くことにしました。
昔からこの映画を観た後、何となく気持ちが落ち着くというか、どこか不思議な気持ちになったのを覚えています。どうしてそういう気持ちになったのか?久しぶりに映画館でジックリと本作品を観賞して、その理由が少し分かったような気がしました。
本作品の大きなテーマは『主人公(千)』の成長だと思います。しかし、その裏側には別のテーマがいくつも隠されていると言われています。今回のコラムではその裏側のテーマに注目したいと思います。
【隠されたテーマ“吐き出す”ということ】
本作品では“自分の中に溜まった物を吐き出す”というシーンが何度か出てきます。1つ目が、ドロドロに汚れた『腐れ神』が、千の働く『お風呂屋さん(油屋)』にやって来るシーンです。
腐れ神のあまりのニオイに、近づいた従業員はみんな嘔吐しそうになりますが、千は腐れ神を一人のお客として丁寧に迎え入れます。そして、汚れを落としていく中で、腐れ神の身体の中にたくさんのゴミが溜まっていることに気が付きました。
千は先輩の『リン』達に協力してもらいながら一生懸命ゴミを引っ張り出します。そして、身体の中のゴミがキレイに取れた腐れ神は”本来の姿(河の神様)”を取り戻し、夜空へと飛んでいきました。このシーンは、腐れ神が直接汚れを吐き出した訳ではありませんが、千や油屋の従業員達が“腐れ神の中の汚れを吐き出させる手伝いをした”と考える事が出来ます。
2つ目は、本作品の中で何度も千を助けてくれた『ハク』が『湯婆婆(ゆばーば)』の呪いで死んでしまいそうになるシーンです。ハクという名前自体、“吐き出す”と関連しているとも考えられますね。竜の姿で苦しむハクに、千は『ニガダンゴ』を食べさせました。ニガダンゴはその名の通りとても苦いので、ハクは抵抗しますが、千は頑張って食べさせ、呪いの元である『黒い虫』を吐き出させます。その後、ハクは人の姿に戻り、何とか一命を取り留めました。そして、呪いから解放されたハクは、千のお陰で本当の自分の姿を取り戻し、湯婆婆の弟子を辞める決意をしました。
3つ目が、油屋の従業員を飲み込み、お店の食べ物を食い荒らしていた『カオナシ』のシーンです。元々は、とても存在感の薄かったかったカオナシですが、千に優しくしてもらった事をきっかけに油屋に潜り込みます。“千が欲しい”カオナシは、あの手この手を使って千を誘いますが、ことごとく相手にされません。カオナシを心配した千は、残りのニガダンゴを食べさせますが、それでも落ち着きません。千を強烈に求めるカオナシは、今まで食べた物を吐き出しながらも、死に物狂いで千を追いかけ回します。千を追い続け、油屋の外まで行った時には、最初に食べた授業員(カエル)も吐き出し、元のカオナシの姿に戻っていました。
どうやらニガダンゴには、身体の中に溜まった悪い物を吐き出させる力があったようです。映画の中で千がニガダンゴを食べるシーンもありますが、ただ「苦い!」というだけで特に吐き出す物はありませんでした。それだけ、千の心と身体はキレイな状態だという事を表しているのかもしれません。
空っぽになったカオナシは、千と一緒に『銭婆(ぜにーば)』の所へ行き、ようやく自分の居場所を見つける事が出来ました。
【本当の自分を見つける】
『腐れ神』『ハク』『カオナシ』は千の力を借りながらも、自分の中に溜まった悪い物を吐き出します。そうして、本当の自分の姿を取り戻していきました。また、僕自身も、この“吐き出す”シーンを劇中で何度も観ていたので、まるで、自分の気持ちが浄化されたかのように感じていたのかもしれません。
本作品では、目に見える分かりやすい物(食べ物等)を吐き出す対象としていましたが、僕たち人間は日常的に、”感情”や“ストレス”などの、目には見えない物を、自然と溜め込んでいっているのかもしれません。そして、溜め込んだ物を上手く消化できず、気持ちが落ち込んでしまったり、トラブルを引き起してしまう事も少なくはないのでしょうか。
感情やストレスの吐き出し方は人それぞれで、色々な方法(音楽を聴く、お風呂に入る、運動する等)があると思いますが…とてもシンプルで効果的なのが、“自分の気持ちを誰かに聞いてもらう”ということではないかと思います。なので、もし「相談したい」「自分の気持ちを聞いて欲しい」と思っている人がいたら、あまり一人で抱え込まずに『千と千尋の神隠し』を観る(笑)。または、アシストセンターに相談してみてほしいと思います。
気持ちを吐き出す中で、本当の自分が見えてくるかもしれませんよ?
令和2年10月1日
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