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更新日:2020年11月11日

コラム「こんにちは、アシストです」(2020年11月号)

「農作業は辛いが役に立つ」~近藤相談員~

降り積もった雪が解けると、風の弱い早朝から家族総出でハウスにビニールをかけ、種を蒔く。農家の一年の始まりです。

春はお米や野菜の種まき、苗植えに大忙し。田植えが終わってひと段落したかと思えば、我が家では50mほどのハウス2つ分になったピーマンが次々と大きくなり、収穫と選別に追われる日々。秋に近づくと、今度は広大な畑で玉ねぎと長ネギが収穫を迎え、稲刈りが終わると冬にようやくひと休みです。

私は、この農作業に駆り出されるのが苦痛で苦痛で仕方なかったのです。

休みの日はゆっくり寝ていたいし、遊びたい。デパートに行きたくても、家族と畑仕事。もくもくと野菜を採り続けても、楽しくない。コンテナいっぱいの野菜は重たくて、疲れる。農家なんて、嫌だ…。私は高校卒業後に家を出ました。

 

「野菜が高い…。ピーマンがかたい…。トマトが…青い…」一人暮らしを始めてから、私は野菜の値段を知り、スーパーで野菜を買う、不思議な経験をしました。

福祉施設に就職して初めて、ご飯が冷凍できることを知ったときには、かなりの衝撃でした。実家では、新鮮な野菜と、炊きたてのご飯が当たり前で、その環境は普通ではない、農家の特権だったと離れてわかりました。

「枝豆を寄贈したいので、収穫を手伝ってほしい」とのことで、子どもたちと職員で、とある農家さんに伺ったときのことです。枝豆を2つ3つ採り始めたとき、「あなた、農家の娘さん?慣れているのが見ればすぐにわかるよ」と農家のおじさんが声を掛けてくれたのです。すごく照れくさくて、でも、ちょっと得意げな気分になったことを覚えています。

 

農作業は、力仕事もあれば、単調な仕事を黙々と続けることもあります。それが、社会にでてから、ちょっとしたことで活かされる機会が意外とあったのです。「あれだけ嫌だった農作業が役に立つなんて…」と始めは悔しいやら嬉しいのやら…戸惑いながらも、血肉となっていたのかと感じられるたびに、過去を肯定できて少し救われたような気がしました。

だからといって、今、悩んでいる子どもたちに、「辛いこともいつか自分の糧になるよ」とここで伝えるには、なんだか違うような気もしています。それは、当時の私だったら、「そうは言われても、嫌なものは嫌だし、辛い」と、きっと思ったからです。それだったらまずは、辛い気持ちや悩んでいることを精いっぱい受け止める、理解することから始めようと、私は思うのです。

「もし、当時の私がアシストに相談していたら…?私は気持ちが軽くなっていただろうか?そして、相談員の立場だったら、どんな言葉を掛けるだろうか?」

そんなことを思いながら、バルコニーで年々増え続けている、かわいい多肉植物の冬支度をしています。

 

令和2年11月12日

 

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