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更新日:2024年4月18日

さっぽろ未来市民ストーリーズ 燃費よく快適な住まいづくり

著者

山本さん山本 亜耕(やまもと あこう)さん
建築家、株式会社山本亜耕設計事務所代表

環境建築家。札幌生まれ。1988年、山本亜耕建築設計事務所開設。2020年、株式会社化。2009年より300ミリ断熱をはじめ、自然エネルギーを取り入れた家づくりに取り組む。(公社)日本建築家協会登録建築家。

燃費よく快適な住まいづくり

断熱すると、こんな効果

私が設計する住宅ではグラスウール断熱材の厚みを、新築で30センチ、リフォームで25センチ以上としています。一般的な新築住宅は大体12センチくらいですから、新築で2.5倍、リフォームで2倍の厚みということになります。

断熱材の厚みを30センチにするかどうかは別として、断熱にはしっかり施工すると設備に頼る部分を減らせるという効果があります。断熱の仕様によっては、設備はちょっと補足する程度で済みます。そしてその分、住宅の燃費がよくなります。新築でもリフォームでも予算には限りがありますが、断熱への投資を優先した方が断熱自体には故障がありませんし、冬も夏も少ないエネルギーで快適に暮らせると思います。

断熱
新築住宅の30センチ断熱はこんなふうになっています

札幌市も推進するZEH(ゼッチ)という省エネ住宅

寒冷地の北海道では1970年代の2度にわたる石油危機を経て、健康で快適ではあるけれど燃料費がかさむ全室暖房を少しでも安価に維持すべく、省エネを目的とする住まいの断熱化に舵を切りました。家全体を暖める方法を選んだことで、寒冷地でありながら室内のヒートショックを早期に解決した北海道では、必然的に「省エネ」というニーズが残ったのです。

近年、全国的に注目されている省エネ住宅に「ZEH(ゼッチ)」があります。経済産業省が推進する「net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」で、「エネルギー収支をゼロ以下にする家」というものです。札幌市でも省エネルギー対策として「ZEHの推進」を挙げています。具体的には、断熱性能の大幅な向上と高効率な設備・システムの導入でエネルギーの使用を抑え、太陽光発電などでエネルギーを創って収支をゼロ以下にする住宅です。ZEHというと太陽光発電のイメージが強くなるようですが、断熱性能にも規定があり、国の断熱等級5相当を基準としています。

ZEH

2025年度の断熱義務化で最低等級がUP

国の省エネ基準では断熱はあくまでも努力目標で、義務ではありませんでした。前述のZEHで少し触れたように断熱には等級があり、2022年度中にそれまでの4段階から新たに上位の3段階を加え、7段階に変わっています。

2025年度からようやく始まる断熱の義務化では、新築住宅はすべて等級4以上とすることになります。つまり、2022年3月まで最高等級だった等級4が最低等級になり、それ未満の住宅は建築することができなくなります。等級4は断熱に限っていうとグラスウールの厚みが12?15センチ程度と考えられ、現状でいう一般的な住宅に相当します。さらに2030年には、省エネ基準がより引き上げられることも検討されています。

リフォームで快適・省エネな住まいへ

住宅のリフォームでは新築当時の図面や資料が残っていない場合が多く、どんな作り方をしているのか解体するまで判然としないため、想定外の修理や調整が必要になり、場合によっては工事費の追加等が発生することもあります。そこが新築と違う部分ですが、すでに既存住宅のストックが余っていること、環境負荷の高い新築を続けることへの疑問、長引く不景気を背景とする住まい手の新築離れ(買えない、建てられない)など、そうしたニーズに住まいの作り手は応える必要があると感じています。

私が設計する住宅は、リフォームであっても壁の断熱は厚さ25センチ以上としています。もちろん計算ではこれより薄くても、快適性・省エネ性ともに向上します。そのなかで私が25センチとしている理由は、住まい手にとっての「わかりやすさ」にあります。既存住宅の住まい手は、長年寒さに苦しんできた人がほとんどです。その人にとって「あぁ以前とはぜんぜん変わったな、抜群によくなったな」と感じてもらう塩梅が25センチの壁断熱なのです。準新築並みに費用の掛かる断熱&耐震リフォーム(完成すると断熱も構造も見えなくなる)の効果は、体感でしか示せないのです。

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断熱リフォーム

いろいろある補助金

実は札幌市には全国一厳しい新築住宅の省エネ基準があります。「札幌版次世代住宅基準」といいます。断熱性能・一次エネルギー消費量・気密性能の3項目で基準が設定され、等級は4つ。断熱に関していうと、最低等級の「ブロンズ」で国の等級5相当と2025年度に始まる断熱義務化の最低基準(等級4)の上を行く基準になっています。また、札幌版次世代住宅基準のうち、「ブロンズ」を除く上位3等級に対して補助金が用意されています。最高等級の「プラチナ」は220万円(2023年度)でクリアすべき基準はもちろんハイレベルですが、200万円クラスの補助は貴重ですので、新築をお考えの方はぜひチャレンジしていただきたいと思います。

家づくりの多様化に応じて、さまざまな補助策が各省庁から提示されています。私のお客さまもほとんどが、この札幌版次世代住宅や地域型住宅グリーン化事業の補助を使われています。また、今後は新築よりも性能向上リフォーム向けの補助がより充実していきます。家づくり≒新築と決めつけないで、両親の家や祖父母の家を省エネで暖かく、耐震性も向上させて住み継いだり、テレワークの充実など働き方に自由度があるなら移住先の空き家を安価に購入して改修するような、新たな家づくりのスタイルも楽しいと思います。

札幌版次世代住宅基準

等級

外皮平均熱貫流率(UA値)※1

[W/(m2・K)]

一次エネルギー消費量※2

BEI

相当隙間面積(C値)※3

[cm2/m2]

プラチナ

0.18以下

60%以下

新築住宅:0.5以下

改修住宅:1.0以下

ゴールド

0.20以下

(等級7)

80%以下

(等級6又は誘導基準)

シルバー

0.28以下

(等級6)

ブロンズ

0.40

(等級5又は誘導基準)

※1 断熱性能を表し、数値が低いほど性能が高い。( )内の等級は住宅性能表示制度における断熱等性能等級
※2 省エネルギー性能の評価指標で、%が低いほど省エネ性能が高い。( )内の等級は住宅性能表示制度における一次エネルギー消費量等級
※3 1m2あたりでどれくらい隙間があるかを示す気密性能の数値で、数値が低いほど性能が高い

補助制度(令和5年度)

等級 補助額
プラチナ 220万円
ゴールド 180万円
シルバー 60万円

※上位2等級の優先抽選を実施
※ブロンズは補助対象外

このページについてのお問い合わせ

札幌市環境局環境都市推進部環境政策課

〒060-8611 札幌市中央区北1条西2丁目 札幌市役所本庁舎12階

電話番号:011-211-2877

ファクス番号:011-218-5108