ここから本文です。
菅井 貴子(すがい たかこ)さん
気象予報士、防災士、CFP・FP技能士、環境エコリーダー、健康気象アドバイザー等
横浜市出身。明治大学理工学部数学科卒業後、フリーキャスターとして活動。2005年に北海道に移住。北海道大学大学院教育学院にて「気候多様性から見た北海道の地域活性化の可能性」の論文で修士取得。現在、北海道文化放送(UHB)「みんテレ」に出演中。
気候変動や異常気象は増えています。高緯度であるほど温暖化が進行していて、北海道の気温上昇が日本で最も顕著です。
さらに札幌は都市化の影響もあり、春が早い・夏が暑い・秋が遅い・冬が短いと、四季の移ろいが昔と異なるものになっています。特に夏の暑さは著しく、2023年8月23日には36.3℃と観測史上最高を記録しました。この気温は同日の沖縄よりも高い気温です。熱中症による救急搬送者数も札幌市内で500人を超え、過去最多となりました。
昔は必要がなかった冷房は必須になってきています。CO2を排出する空調がないと生活がしにくくなってきたのです。冷房の排気によって、気温を押し上げてしまう悪循環をもたらすことも心配です。
冷房に限らず、暖房も効率よく使うことがますます大事になりそうです。
お天気のメカニズムを応用して室内を快適に。いずれも冬に、簡単にできる工夫です。
冷たい空気は重たいので、床にたまります。暖かい空気は軽いので、天井にたまります。我が家では寒い時、天井に向かってちょっと仰ぎます。そうすると、なんだか暖かくなります。サーキュレーターなどがあれば併用すると効率がいいでしょう。
体感温度が高くなります。濡れたタオルなどを干して、体感温度を上げてみましょう。
毎日ではありませんが、掃除機をかける時は暖房を点ける前にかけています。外から帰ってきたばかりの冷えている室内は下降気流になっているので、ホコリが床にたまっています。暖房を点けると上昇気流でホコリが舞ってしまいます。室内が冷えた状態で掃除機をかけるととても効率的ですし、もしかしたら脱炭素につながっているかもしれません。
冬は“着る電気毛布”でぬくぬく
マンションの我が家には暖房が1つだけありますが、点けると室内全部を暖めようとフル稼働するので「もったいないな」と思っていました。電気代が1.5倍くらいに跳ね上がったタイミングで“着る電気毛布”を買い、愛用しています。とても暖かく快適です。寒さ対策では、この冬から窓に冷気を遮断する“断熱フィルム”を貼るようにしました。
特に一人の時は、私だけのために動いて運んでもらうのがもったいないし、なんだか申しわけない気持ちになります。階段で行き来すると運動になって健康にもいいし、電力を使わず脱炭素にもなるし、ダイエットにもなると思うと、ちょっと楽しくなってきます。
雪のない時期は通勤などの移動に自転車を使っています。では、雪が降ったらどうするか。歩いています。毎日の通勤でいくと、道の状態が悪い時は35分くらい、状態がいいと25分くらい歩きます。往復すると、大体300キロカロリーくらい消費する計算です。
会社まで歩いたら「おやつを食べてよし!」、帰りも歩いたら「デザートを食べてよし!」。自分へのご褒美があると楽しいですし、確実に痩せるのでやる気が継続します。もちろん吹雪の時は地下鉄へ。無理はしません。
最近、モノを買わなくなりました。なぜかというと、横浜にいた両親が札幌に来るにあたって実家を整理することになり、50年積み重なったモノたちで大変な思いをしたからです。
やはり「買うのは簡単、捨てるのは大変」で、市の回収に出したほかに、業者さんにお願いしたり、最後はトラックを借りて自分たちで何度も運びました。
それ以来、買う時には3歩とどまるようになりました。「これ、本当に必要?」「いつまで使う?」「捨てる時はどうする?」。そういうことを考えるようになりました。買う時は長く持てるもの、しっかりしたものを選ぶようにしています。
このままの状態でCO2排出が続くと、急激に気候が変わっていきますし、自然災害も多発します。北海道の場合は大きく3つのことが考えられます。
これらに対しては防災力の強化と併せて、将来的な災害のポテンシャルを少なくするために世界中の協力が必要など、市民レベルを超えた対応が求められますが、暮らしの中でできる脱炭素行動を地道に継続し、“あきらめない脱炭素”を心がけたいと思っています。