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札幌市の新生児マススクリーニングでは以下の26種類の病気の検査を行っています。疾患の分類ごとに疾患の特徴についてまとめました。
疾患の分類 |
疾患数 |
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代謝異常症 |
6疾患 |
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9疾患 |
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8疾患 |
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1疾患 |
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2疾患 |
アミノ酸はタンパク質のもととなる成分です。ある特定のアミノ酸の利用や分解がうまくできずに体内にたまってしまい、精神発達の遅れや重度の体調不良を引き起こします。特定のアミノ酸を除去した特殊ミルクやタンパク制限食といった食事療法を行います。
病気の名称 | 病気の説明 |
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フェニルケトン尿症(★) | アミノ酸の一つであるフェニルアラニンをチロシンに変換する酵素の欠損により発症する病気です。フェニルアラニンを制限した特殊なミルクや食品を用いたりすることで治療します。早期から治療することで、精神発達が遅れたり、けいれん、皮膚や毛髪の色素欠乏などの症状を未然に防止します。頻度はおよそ6万人に1人です。 |
メープルシロップ尿症(★) |
分岐鎖アミノ酸のロイシン、バリン、イソロイシンから生成されるα-ケト酸の脱炭酸反応を行う酵素の欠損により発症する病気です。早期に特殊ミルクなどの食事療法をベースとした治療を開始しないと、重症の場合、意識障害やけいれんなどを起こして死亡することもあります。きわめて稀な病気です。 |
ホモシスチン尿症(★) |
アミノ酸の一つであるメチオニンの代謝産物であるホモシスチンを変換する酵素の欠損によって発症する病気です。知的障がいや骨格異常、水晶体亜脱臼などが見られ、血栓症で死亡することもあります。きわめて稀な病気です。 |
シトルリン血症 |
体内の余剰窒素を排出するための尿素サイクルに関連する酵素、アルギニノコハク酸合成酵素(ASS)が欠損しているために、高アンモニア血症を引き起こす疾患です。血中シトルリンが高値となります。 |
アルギニノコハク酸尿症 | 体内の余剰窒素を排出するための尿素サイクルに関連する酵素、アルギニノコハク酸リアーゼの欠損により高アンモニア血症を引き起こす疾患です。血中アルギニノコハク酸やシトルリンが高値となります。 |
シトリン欠損症 |
シトリンと呼ばれるタンパク質が欠損しているために、新生児期から乳児期にかけて胆汁うっ滞や肝障害を引き起こす疾患です。血中シトルリンやメチオニン、ガラクトースなどが高値となります。また、思春期以降は高アンモニア血症や意識障害などが現れることがあります。 |
有機酸とはアミノ酸が体内で変化してできる物質の総称です。特定の有機酸の代謝がうまくできずに体内に溜り、哺乳不良や嘔吐、けいれんなどを引き起こします。特定のアミノ酸を除去した特殊ミルクやタンパク制限食といった食事療法を行います。
病気の名称 | 病気の説明 |
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メチルマロン酸血症 | アミノ酸が代謝を受ける過程で働くメチルマロニル-CoAムターゼと呼ばれる酵素が欠損しているために、体内にメチルマロン酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症を引き起こす疾患です。タンパク制限などを行い、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。 |
プロピオン酸血症 | アミノ酸が代謝を受ける過程で働くプロピオニル-CoAカルボキシラーゼと呼ばれる酵素が欠損しているために、体内にプロピオン酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症を引き起こす疾患です。タンパク制限などを行い、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。 |
イソ吉草酸血症 | ロイシンが代謝を受ける過程で働くイソバレリル-CoA脱水素酵素の異常によって、体内にイソ吉草酸が蓄積し、代謝性アシドーシスや高アンモニア血症が引き起こされる病気です。 |
メチルクロトニルグリシン尿症 | ロイシンが代謝を受ける過程で働く3-メチルクロトニル-CoAカルボキシラーゼが欠損しているために起こる病気です。無症状のまま経過する方もいます。 |
3-ヒドロキシ3-メチルグルタル酸(HMG)尿症 | ロイシンが代謝を受ける過程で働く3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoAリアーゼが欠損しているために、飢餓時などにケトン体を産生できずに低血糖発作を引き起こす病気です。 |
マルチプルカルボキシラーゼ欠損症 | ホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損またはビオチニダーゼ欠損により引き起こされる病気です。ケトアシドーシスや高アンモニア血症がみられます。ビオチンの大量投与により治療されます。 |
グルタル酸尿症1型 | リジンなどのアミノ酸が代謝を受ける過程で働くグルタリル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、異常代謝産物のグルタル酸などが体内に蓄積し、筋緊張低下、けいれんなどを引き起こす病気です。 |
β-ケトチオラーゼ欠損症 | アミノ酸が代謝を受ける過程で働く酵素、β-ケトチオラーゼが欠損しているために、感染時などにケトーシス発作を引き起こす病気です。 |
メチルグルタコン酸尿症 |
ロイシンの異化過程の代謝産物である3-メチルグルタコン酸と3-メチルグルタル酸が尿中に多量に排泄される病気で、複数の原因で起こります。 |
空腹時や運動時など、食事からのエネルギーが足りなくなると、体内の脂肪を分解してエネルギーが作り出されます。この過程がうまく働かないためエネルギー不足となり、重度の体調不良を引き起こします。飢餓状態に陥らないよう食事の間隔を短くすることで低血糖発作を起こさないようにします。
病気の名称 | 病気の説明 |
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中鎖アシルCoA脱水素酵素(MCAD)欠損症 |
中鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く中鎖アシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。 |
極長鎖アシルCoA脱水素酵素(VLCAD)欠損症 | 極長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く極長鎖アシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。心筋や骨格筋などに症状が現れることがあります。 |
長鎖-3-ヒドロキシアシルCoA脱水素酵素(LCHAD)欠損症 | 長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出す過程で働く長鎖-3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素が欠損しているために、飢餓状態で低血糖発作を引き起こす病気です。 |
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1(CPT1)欠損症 |
カル二チンパルミトイルトランスフェラーゼ1という、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むための酵素が欠損しているために、長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すことができない病気です。 |
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2(CPT2)欠損症 |
カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2という、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むための酵素が欠損しているために、長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すことができない病気です。 |
カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼ欠損症 | カルニチンアシルカルニチントランスロカーゼという、長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に取り込むための酵素が欠損しているために、長鎖脂肪酸からエネルギーを作り出すことができない病気です。 |
カルニチントランスポータ異常症 | カルニチン輸送タンパクの異常により細胞内でカルニチンが欠乏しすることにより、長鎖脂肪酸がミトコンドリア内でβ酸化を受けることができなくなる病気です。 |
グルタル酸尿症2型 |
ミトコンドリアの電子伝達フラビン蛋白(ETF)またはETF脱水素酵素の異常により複数の脱水素酵素が同時に障害される病気で、有機酸代謝異常症と脂肪酸代謝異常症の両方の症状が起こります。新生児期に発症する重症型では、治療が難しい場合もあります。 |
病気の名称 | 病気の説明 |
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ガラクトース血症(★) |
ガラクトースやガラクトース-1-リン酸の代謝をつかさどる酵素の障害により発症します。早期に特殊ミルクなどによる食餌療法を開始しないと、白内障や精神運動発達の遅れが現れ、やがて肝硬変などで死亡することがあります。頻度はおよそ30,000人に1人ですが、ただちに治療が必要な重症型はきわめて稀です。 |
病気の名称 | 病気の説明 |
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先天性甲状腺機能低下症(★) |
胎児期からの甲状腺の異常によって、神経の発達や新陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが正常に分泌されないために発症します。早期にホルモン補充などの適切な治療を開始しないと、回復が難しい身体や知能の発達障がいが残ります。頻度はおよそ3000人に1人です。 |
先天性副腎過形成症(★) |
副腎皮質ホルモンをつくる酵素の異常から、糖や塩分の代謝と性分化に必要なホルモンの分泌障害により発症します。早期にホルモン補充などの治療を開始しないと、発育不良や女児では外性器の男性化が見られ、重症な場合には脱水などで死亡することもあります。頻度はおよそ15,000人に1人です。 |
表中で★のついた6疾患は、以下の条件をほぼ満たし、障がい発生予防のために1977年の国の通知により検査が開始されたものです。
集団検診のためのWilson&Jungerの基準(WHO、1968年)
(1)目的とする疾患が重要な健康問題である
(2)早期に発見を行った場合に適切な治療法がある
(3)陽性者の確定診断の手段、施設がある
(4)目的とする疾病に潜伏期あるいは無症状期がある
(5)目的とする疾病に対する適切なスクリーニング検査法がある
(6)検査方法が集団に対して適用可能で受け入れやすい
(7)目的とする疾病の自然歴がわかっている
(8)患者、要観察者に対する追跡follow-upシステムが確立している
(9)スクリーニング事業の費用/便益が成立する
(10)スクリーニングの意味、内容が受診者に周知されている
その他の20疾患については、例えば風邪などを契機に脳症や乳幼児突然死を引き起こす可能性のあるものが含まれていますが、新生児マススクリーニングにより早期に発見することで発症を予防することができます。しかし、特に重症な場合十分な治療効果の得られないものや、軽症の場合には発見できないものがあります。これら20疾患について検査を受けたくない場合、★の6疾患のみ受検していただくことが可能です。
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