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更新日:2013年12月6日

札幌市衛生研究所年報-他誌投稿(2013)

札幌市におけるタンデムマスによる新生児マス・スクリーニング2012年の検査結果と2010~2012年のまとめ

厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)タンデムマス導入による新生児マススクリーニング体制の整備と質的向上に関する研究平成24年度総括・分担研究報告書69-71,2013

吉永美和、太田優、花井潤師、高橋広夫、佐々木泰子、野町祥介*1、長尾雅悦*2、田中藤樹*2、小杉山清隆*3、窪田満*4

札幌市では、2005年度から調査研究事業としてタンデムマスによる新生児マス・スクリーニングを開始し、2010年8月より母子保健事業として検査を行っている。2010年4月~2012年12月までに、44,906人の検査を行い、10人の患者を発見した。そのうち、2012年1月~12月までの1年間では、16,190人の検査を行い、プロピオン酸血症1例、3-メチルクロトニルグリシン尿症1例、MCAD欠損症1例、グルタル酸尿症2型1例、高フェニルアラニン血症2例、計6例の患者を発見した。また、新生児マス・スクリーニングでは正常判定であったが、後日、シトリン欠損症と判明した例が1例あった。

*1札幌市環境局、*2国立病院機構北海道医療センター小児科、*3手稲渓仁会病院小児科、*4埼玉県立小児医療センター小児科


タンデムマス・スクリーニングのカットオフ値-患者データ、再採血率、精査率から考える-

厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)タンデムマス導入による新生児マススクリーニング体制の整備と質的向上に関する研究平成24年度総括・分担研究報告書64-68,2013

花井潤師、吉永美和、高橋広夫、佐々木泰子、野町祥介*1、佐々木純子*2(公財)岩手県予防医学協会、磯部充久*3、石毛信之*4、穴澤昭*4、安方恭子*5、木下洋子*6、山上祐次*6、酒本和也*7、田崎隆二*8、小林弘典*9、山口清次*9、重松陽介*10

タンデムマス・スクリーニングのカットオフ値を設定するにあたっては、正常群と患者群のオーバーラップまたは近接している指標にあっては、正常値の分布と患者の測定値の関係の確認が重要である。さらに、スクリーニングの再採血率、精査率は、疾患の発見頻度に応じて考慮すべきであり、タンデムマス検査の対象疾患全体として、再採血率は0.5%、精査率は0.05%前後を目安にカットオフ値を設定することが望ましい。

*1札幌市環境局、2(公財)岩手県予防医学協会、*3さいたま市健康科学研究センター、*4(公財)東京都予防医学協会、*5(公財)ちば県民保健予防財団、*6(公財)神奈川県予防医学協会、*7(財)大阪市環境保健協会、*8(一財)化学及血清療法研究所、*9島根大学小児科、*10福井大学


PandemicInfluenzaA(H1N1)2009患者の血清HI抗体価調査

北海道公衆衛生学雑誌、26、55-58、2012

扇谷陽子、菊地正幸、村椿絵美*1、伊藤はるみ、水嶋好清*2、高橋広夫、三觜雄*3、飯塚進*4、大島美保*5、窪田満*6、佐藤孝平*7、佐野仁美*8、澤田博行*9、高橋豊*10、東館義仁*11、森井麻祐子*12、横澤正人*13、小田切孝人*14、矢野公一*1

PandemicInfluenzaA(H1N1)2009患者の赤血球凝集抑制(HI)抗体価についての疫学情報を得ることを目的として、札幌市における患者97名の血清HI抗体価を調査した。この結果、感染リスクを50%に抑える目安と考えられている40倍以上の抗体価を保有する患者が複数認められたのは、発症から8~14日経過して採血された患者からで、22日以上経過後の採血者では、81名中78名(96.3%)の患者が40倍以上の抗体価を保有していた。ペア血清検査の結果、2回目の採血が発症から22日以上経過後の採血者16名中15名(93.8%)の抗体価が、1回目と比較して2管(4倍)以上上昇していることが確認できた。

*1札幌市衛生研究所(現:札幌市保健所)、*2札幌市衛生研究所(現:札幌市東区)、*3札幌市衛生研究所(現:札幌市清田区)、*4天使病院、*5札幌徳洲会病院、*6手稲渓仁会病院(現:埼玉県立小児医療センター)、*7札幌厚生病院、*8市立札幌病院、*9北海道社会保険病院、*10KKR札幌医療センター、*11札幌社会保険総合病院、*12NTT東日本札幌病院(現:国立病院機構北海道医療センター)、*13北海道立子ども総合医療・療育センター、*14国立感染症研究所


北海道・東北・新潟ブロックにおけるパルスフィールドゲル電気泳動システムの精度管理と精度管理用資料の作成方法の検討について

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)「食品由来感染症調査における分子疫学手法に関する研究」、平成23年度分担研究報告書、29-33、2012

清水俊一*1、山口敬治*1、森本洋*1、池田徹也*1、野呂キョウ*2、八柳潤*3、岩渕香織*4、山口友美*5、瀬戸順次*6、鈴木裕*6、千葉一樹*7、新井礼子*8、廣地敬、千葉久子*9

パルスフィールドゲル電気泳動(以下PFGE)法によるパルスネットの構築のためには、各検査施設における精度管理が重要であり、その精度管理方法の一つとして、北海道・東北・新潟ブロックではプラグのやり取りによる精度管理方法について検討を行い、一定の成果を得ることができた。

今回、PFGEの精度管理として、各協力地研で分離した腸管出血性大腸菌O157菌株使ってプラグを作成し、このプラグを北海道衛研に送付するとともに、各施設においてPFGEを行い、その泳動像をメールにより送付する方法で比較した。送付されたプラグを北海道衛研で酵素処理し泳動した結果と、各地研で酵素処理後泳動した泳動像を比較したところ4地研は90%以上の相同性を得ることができたが、2地研で相同性は90%以下であった。この2地研の泳動像は、肉眼的には、バンドは一致しているものの、バンドの照度が強かったり、写真ファイルのサイズが大きいため縮小等の作業で解像度が下がってしまったため相同性が下がった可能性があった。また、プラグの取り間違いと思われる不一致もあった。

プラグを使った精度管理を行う上で、精度管理用プラグの菌量が重要となる。そこで、プラグ作成時の菌量測定法として、暗視野顕微鏡を使った菌量測定法について検討を行った。

*1北海道立衛生研究所、*2青森県環境保健センター、*3秋田県健康環境センター、*4岩手県環境保健研究センター、*5宮城県保健環境センター、*6山形県衛生研究所、*7福島県衛生研究所、*8新潟県保健環境科学研究所、*9仙台市衛生研究所


2012年の北海道における麻疹・風疹について

平成24年度厚生労働科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)「早期麻疹排除及び排除状態の維持に関する研究」分担研究報告書87、2012

長野秀樹*1、駒込理佳*1、三好正浩*1、岡野素彦*1、菊地正幸、佐藤寛子、伊藤はるみ

2012年の北海道における麻疹患者報告数は1例のみであった。本報告例は遺伝子検査において麻疹ウイルスは否定されたものの、IgM抗体指数が9.65と高値であったため届出となった。しかし、本例の詳細検査において他社のキットでは麻疹IgMが陰性となり、E型肝炎ウイルスのRT-PCR及び血清検査(IgM、IgA)ともに陽性であったことから、麻疹の可能性は低いと考えられる。検査件数については北海道立衛生研究所で28例、札幌市衛生研究所で8例の検査実績があった。上記のE型肝炎ウイルスの他、B型インフルエンザウイルス、風疹ウイルスが遺伝子検査で検出された。一方、風疹については21例の届出があった。このうち、6例について衛生研究所(道立、札幌市併せて)での遺伝子検査の結果、5例については遺伝子型が2Bと同定された。1例はNS遺伝子の増幅が確認されたが、遺伝子型を決めるためのE1領域の増幅が確認されず、型不明となった。

*1北海道立衛生研究所


分煙施設の室内環境と受動喫煙状況の検討

厚生労働科学研究費補助金(第3次対がん総合戦略研究事業)分担研究報告書,2011

三觜雄、水嶋好清、花井潤師、立野英嗣

調査対象を完全分煙施設1箇所とし、調査対象施設及び対照とした庁舎内禁煙施設で執務を行う非喫煙者の受動喫煙状況調査として、午前10時及び午後4時に唾液を採取し、唾液中コチニンを測定した。一方、室内環境調査として、浮遊粉じん濃度、一酸化炭素濃度、炭素ガス濃度について6時間のモニタリングを行うとともに、厚生労働省が室内濃度指針値を定めている揮発性有機化合物(VOC)6物質についても試料採取及び分析を行った。

また、唾液中コチニン測定による非喫煙者の受動喫煙状況については、両施設の平均コチニン濃度には有意差はなく、また、採取時間による差も認められなかった。また、執務環境の違いによる受動喫煙状況の有無を示す傾向は認められなかった。

室内環境調査において、浮遊粉じんは、0.001~0.007μg/m3、一酸化炭素はすべて10ppm以下、炭酸ガスについては1,000~1,500ppmであり、特に問題のある結果ではなく、喫煙所からの影響も認められなかった。一方、トルエン、キシレンなどのVOCについては、いずれも指針値の1月10日以下の濃度であり、通常の執務室環境であった。


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