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雪の季節がやってきました。夏は動き回っていた動物でも、冬は動くのをやめ、じっと巣ごもりして寒さをしのぐものもいます。例えば、ヒグマやシマリスは冬になると地面の下の巣穴で冬ごもりします。
では、植物はどうでしょうか?植物は根をのばした場所から動けないので、動物のようにあたたかい巣穴を作ったり、歩いたり飛んだりして寒さから逃れることができません。
しかし、全ての植物が秋に実をつけて葉が枯れて、冬になる前に一生が終わってしまうかというと、そうではありません。木は何年も冬を越えて生き続け、種類や生えている環境によっては数百年生き続けるものも知られています。
写真:推定樹齢300年と言われるシバグリ(撮影地:豊平区平岸、天神山。相馬神社境内。)
冬に木の枝をよく見ると、硬い皮に包まれた芽がついています。これを冬芽(ふゆめ)と呼んでいます。
写真:冬芽の樹脂封入標本(当センター収蔵)
冬芽の形はいろいろありますが、その形の多くは小さな三角形をした魚の鱗(うろこ)のような皮(芽鱗(がりん))が何枚も重なって、春に開く芽を守っています。秋に葉を落とし、冬の間は大事な芽の部分だけ残して寒さに耐えられる形態になるのです。
芽鱗のある冬芽(植物名:コナラ 撮影地:豊平区平岸) 冬芽観察のポイント(PDF:800KB)
柔らかくて寒さに弱そうに見える草でも、冬を越して数年間生きる種類があります。こうした植物を多年草(たねんそう)といいます。中には緑の葉を残したまま冬を越す草もあります。
初雪が降った朝に植物を観察してみると、青々した葉が残っていました。
エゾノギシギシ |
オオマツヨイグサ |
コケ(左の落葉の下の黄緑色) ブタナ(右の緑の葉) |
でも、夏の姿とちょっと違います。
例えばセイヨウタンポポで見てみると・・・夏は地面に対して立ち上がるように斜めに出ている葉がたくさんありますが、冬前には全部の葉が寝そべって地面にぴったりと張り付くように四方八方に広がっています。まるで踏まれてぺちゃんこになったように見えますが、植物が気温や日照時間の変化といった季節の変化を感じ取り、自らこのような形態に変化します。冬を越すために特化したこの形態を「ロゼット」と言います。
夏の姿 |
冬の姿 |
なぜこの形がいいのかというと、雪がたくさん積もる札幌のようなところでは、雪と地面の境い目付近は真冬でも気温が約4度で安定していて、大事な芽や葉が凍ることがないからです。さらに、平べったい形になっていれば雪の重みで体が折れたり曲がったりするダメージを少なくできます。
しかも、緑の葉のまま冬を越せば、雪がとけて太陽の光が当たるようになるとすぐに活動をスタートできます。そのため、生きるための競争で、春から芽を出して一から体作りをする植物に差をつけることができるのです。
※植物は光と水を使って自ら栄養分を作り出して体を作ります(光合成(こうごうせい))。雪の下では光がほとんど届かないので光合成はほとんどできません。ですから、ロゼットの形態になって活動を低下させているという意味では「休眠(きゅうみん)している」と言うことができます。
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