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更新日:2021年10月22日

令和3年度の発掘調査の様子をご紹介します

丘珠縄文遺跡では、平成25・26年度に実施した確認調査(第1次調査)で遺構や遺物が集中して見つかった調査区(「調査区013」)を対象に、平成30年度から毎年少しずつ調査を進めています。

令和3年度の発掘調査(第5次調査)は、次のことを目的として、8月下旬から9月下旬にかけて、およそ1か月間で実施しました。
・第1次調査で遺構や遺物が見つかった層よりも下に、遺構や遺物を含む層が何枚あるかを確認すること。
・今まであいまいだった炉跡の層位を確認すること。
・遺構の種類や内容を確認すること。

※平成25・26年度に実施した確認調査(第1次調査)の成果については、「丘珠縄文遺跡の調査1~平成25・26年度調査~(概要版)」をご確認願います。

 

01すき取り

 調査スタート

雨雪による浸食や冬期の凍結から遺跡を保護するために、発掘調査区は、毎年の調査終了後に埋め戻しを行っています。

調査の開始にあたって、まずはじめに、昨年度に埋め戻した土を重機を使って取り除きます(左下の写真)。

埋め戻した土を取り除いた後は、風雨による浸食や直射日光による乾燥・ひび割れから調査区を保護するために、ブルーシートで調査区を養生します(右下の写真)。

02すき取り  03シート養生

調査区の設定

今年度調査する場所をきれいに清掃し、調査を進める準備を行います(左下の写真)。

土の中に含まれる微細な遺物(植物の種子、魚や動物の骨、石器をつくる際に生じた破片など)の分布を調べるために、調査区を50cm四方のマス目に区画し、このマス目毎に掘り進めていくこととしました(右下の写真)。

04調査区清掃  05調査準備

土壌のサンプリング 

50cm四方のマス目毎に、移植ゴテを使って少しずつ丁寧に掘り進めていきます(左下の写真)。

掘削した土は、掘削箇所のマス目の番号を記したビニール袋に入れて回収します(右下の写真)。

回収した土は、乾燥させた後、水を使って浮遊選別(フローテーション)し、土の中に含まれる微細な遺物(植物の種子、魚や動物の骨片、石器をつくる際に生じた破片など)を選別します。

回収した微細な遺物は、縄文晩期から続縄文文化の人々が、ここでどんな活動をしていたのかを復元するための貴重な資料となります。

※これまでの調査で回収された微細遺物については、「丘珠縄文遺跡の調査1~平成25・26年度調査~(概要版)」の「4ページ:炉跡などの土の中から見つかった微細な遺物」をご覧ください。

 07移植ゴテ  08土壌サンプル

調査の様子

50cm四方のマス目毎に掘り進めながら、遺構・遺物の分布状況や地層の堆積状況を確認していきます(左下の写真)。

マス目をつなげて細長いトレンチ状に掘り進めながら、トレンチの壁で土層の断面を観察し、遺構や遺物が見つかる地層がどのように堆積しているのかを確認しました(右下の写真)。

06調査経過  15調査終了

見つかった遺構

炉跡(ろあと)

熱を受けて赤く変色した土が不整円形に広がっている範囲が見つかりました(左下の写真)。これは、この場所で火を焚いたことにより赤く焼けた火床(ひどこ)で、炉の跡と考えられます。

炉跡の断面を見ると、火床の部分には赤く焼けた土が堆積していることがわかります(右下の写真)。また、火床の上の土には、白い粒がたくさん含まれている様子がわかります。この白い粒は、魚や動物のものと思われる焼けた骨片であり、この炉跡の周囲では、魚や動物の解体や調理などをしていたのかもしれません。今後の調査でこの骨片を回収し、魚や動物の種類を調べることで、当時の人々がどんな魚や動物を利用していたのかを調査していく予定です。

09炉跡  10炉跡断面

土坑(どこう)

周囲の土よりも暗い色の汚れた土が楕円形状に広がる範囲が二つ重なるように見つかりました(左下の写真;白い点線は推定線)。これは、当時の人々が地面を掘った穴の跡(土坑)と考えられます。二つ重なるように見つかっていますので、二つの土坑が時間差をもって掘られたようです。

土坑の一部を掘削して調査したところ、土坑の中の土には、焼けた土の粒や炭化した木材の粒、魚や動物のものと思われる焼けた骨片が多く含まれていることがわかりました(右下の写真)。来年度以降、土坑の調査を行い、土の中に含まれている微細な遺物を回収し、その分析を行うことで、この土坑が何のために掘られたのかを調べていく予定です。

11土坑  12土坑断面

見つかった遺物

土器の破片がまとまって出土しました(左下の写真)。これらの土器は続縄文文化初頭頃のものと考えられます。

黒曜石を割って作った石の矢じり(石鏃)も見つかりました(右の写真)。丘珠縄文遺跡からは、これまでの調査でも、炉跡の周囲から石鏃や石のナイフが見つかっており、炉の周りで、狩りの準備やつかまえた魚や動物の解体・調理などを行っていたのではないかと考えられています。

※これまでの調査で見つかった土器や石器などの遺物については、「丘珠縄文遺跡の調査1~平成25・26年度調査~(概要版)」の「5ページ:丘珠縄文遺跡から出土した遺物(1)」と「6ページ:丘珠縄文遺跡から出土した遺物(2)」をご確認願います

13土器  14石鏃

調査終了

今年度の調査終了後、雨雪による浸食や冬期の凍結から遺跡を保護するため、再び発掘調査区を埋め戻しました。

 

16埋め戻し

まとめ

・第1次調査で確認した層よりも下に、遺構や遺物を包含する層(包含層)が複数枚堆積していることを改めて確認することができました。

・赤く焼けた火床を伴う炉の跡を明確に確認することができました。

・昨年度の調査ではじめて確認した土坑が、複数分布していることがわかりました。

来年度の遺跡公開デーをお楽しみに!

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