更新日:2014年4月4日
移植看護倫理指針
移植医療は亡くなった方もしくは健康な家族の方からの臓器提供で成り立つという特殊性のある医療である。近年、生体腎移植においては、血縁者間に加え非血縁者間となる夫婦間移植が急増している。また、脳死下臓器提供においては臓器移植に関する法律の改正により2010年から本人の生前の意思表示がなくても家族の承諾のみで臓器提供が可能となり、多臓器の提供件数が増えている。移植医療が人々の生活の質を高める医療となり得るためには、治療法の選択とドナーの意思決定を含む移植医療のすべてのプロセスにおいて、レシピエントとドナーおよび家族の尊厳や権利を十分尊重した支援が行われることが前提となる。
移植医療に携わる看護者はレシピエントとドナーおよび家族に対して意思決定支援を行ない、レシピエントが移植後も生活の質を高めるべく支援を継続的に行うため、以下の行動規範を移植看護倫理指針として定める。
- 私たちは、レシピエント・ドナー及び家族の人格、信条を尊重し、他職種との相互の協力関係のもとで、質の高い看護を平等に提供します。
- 私たちは、臓器提供・移植に関する十分な説明と情報を提供し、自らの意思で移植に関する意思決定ができるよう支援します。
- 私たちは、臓器提供・移植にかかわる情報を適正に管理し、権利とプライバシーを擁護します。
行動指針
- 私たちは、レシピエント・ドナー及び家族の人格、信条を尊重し、他職種との相互の協力関係のもとで、質の高い看護を平等に提供します。
《脳死下・心臓停止後臓器移植ドナー及び家族》
1. 患者・家族の意思を尊重し、病院内外の移植医療にかかわる医療従事者や関係者と互いに協力し、患者・家族が望む終末期ケアを提供します。
《レシピエント・生体腎移植ドナー》
1. レシピエント・ドナー共に生命を守ることを基本とし、人としての尊厳を尊重した看護を提供します。
2. レシピエント・ドナー・家族のQOL向上を目指し、他職種と連携し継続的な看護を提供します。
- 私たちは、臓器提供・移植に関する十分な説明と情報を提供し、自らの意思で移植に関する意思決定ができるよう支援します。
《脳死下・心臓停止後臓器移植ドナー及び家族》
1. 看護者は移植における患者の権利に基づき、患者・家族の意思を尊重し、臓器提供に関する情報提供を行い、意思表示しやすい環境を整え、意思決定ができるように支援します。
《レシピエント・生体腎移植ドナー》
1. ドナーの臓器提供に関しては、あくまでも見返りのない善意の提供であることを確認し、提供手術が実施されるまで、提供の意思をいつでも撤回できることを保証します。
2. 腎臓提供のリスクに関して十分な説明と情報提供を行うことで自らの意思決定を他職種と連携をとりながら支援します。
3. 移植医療のリスク・メリット・デメリットについて、十分な説明と情報提供を行うことで自らの意思決定を支援します。
- 私たちは、臓器提供・移植にかかわる情報を適正に管理し、権利とプライバシーを擁護します。
《脳死下・心臓停止後臓器移植ドナー及び家族、レシピエント》
1. レシピエント・ドナー互いの匿名性を保持するため、その業務において知り得た提供者およびその家族・レシピエント個人にかかわる情報を守秘します。
2. レシピエント・ドナーに関する情報について、日本臓器移植ネットワークの規約に基づき個人を特定する情報の開示をしないことを遵守します。
用語の定義
レシピエント:臓器移植を受ける患者
ドナー:臓器の提供者
生体腎移植ドナー:親族(6親等以内の血族と配偶者及び3親等以内の姻族)
脳死下・心停止後臓器移植ドナー:亡くなられた方からの善意の提供
参考文献
- 日本移植学会倫理指針:日本移植学会
- 生体臓器移植ドナーの意思確認に関する指針:日本総合病院精神医学会