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更新日:2023年2月16日

さっぽろ創造仕掛け人(第4回)

イベントプランナー 阿部さおりさん

今回の「さっぽろ創造仕掛け人」は、
インターリンクジャパンの代表取締役であり、
イベントプランナーとして活躍する阿部さおりさん。
大通公園で毎年5月に開催される「ワインガーデン」をはじめ、
北海道産ワインの魅力を伝えるイベントを数多く手掛ける阿部さんに
北海道産ワインへの思いや“仕掛け人“としての夢などを聞いた。

阿部さんの写真

北海道産ワインが今、注目を集めている

ワインの産地といえば、フランス、イタリア、スペイン、ドイツなどのヨーロッパの国々、さらには南米やオーストラリアといった地域を思い浮かべる人が多いかもしれない。また、日本に限ると、甲州ワインや勝沼ワインの山梨県が有名だろう。だが、実は今、北海道もワインの産地として高い注目を集めている。

その北海道産のワインの魅力を、さまざまな活動を通して発信しているのがインターリンクジャパンの代表取締役である阿部さおりさんだ。今年5月に発売された著書「北海道のワインを旅する」(発行元:北海道新聞社)では、今後オープン予定のワイナリーも含めて、北海道の20のヴィンヤード(ブドウ畑)とワイナリーを1年間に渡って取材。北海道で醸造用のブドウの栽培やワイン造りを行う人たちの熱い思いを伝えている。「北海道新聞社の『道新ブログ』での連載をきっかけにお話をいただきました。北海道産ワインの魅力と、それを造っている人たちの思い。いつか本にまとめたいと思っていただけに、感慨深い一冊ですし、夢がまた一つ実現しましたね」。

今年5月に発行された阿部さんの著書「北海道のワインを旅する」。北海道産ワインを愛する人たちの思いが詰まっている。

札幌から道産ワインを発信するワインガーデン

阿部さんは元々、札幌のFMラジオ局で番組ディレクターとして活躍。独立したのは2003年の春で、北海道の食や観光をテーマにした、フリーのイベントプランナーとして活動を始めた。「最初の1年はなかなか仕事がなく、民謡を歌う女性のプロモーションなどもしていた」という阿部さん。だが、転機は2年目に訪れた。「大通公園を歩いていて、この大倉山を望むロケーションでワインが飲めたら最高だろうなと、ふと思ったんです」。ビアガーデンがあるなら、ワインガーデンがあってもいいのではないか。そう思った阿部さんは企画書を作り、知人のソムリエと札幌市に持ち込んだ。「新しい祭りを立ち上げると実現するのに時間がかかると思い、ワインカラーと同じ白と赤紫の花が咲き誇る『ライラックまつり』内のイベントとして提案しました。また、大通公園という場所柄も考え、ワインも北海道産にこだわりました」。阿部さんが企画したワインガーデンは2005年の「ライラックまつり」から実現。以降、毎年開催されており、今年で7回目を迎えた。「実際にイベントをやってみると、北海道産ワインが札幌市民にまだまだ知られていないことを実感しました。最初は単に大通公園でワインを飲みたいという遊び心から提案したものの、『ワインガーデン』を通じて、北海道のワイナリーを知り、気に入ったワイナリーに足を運んでもらいたいという気持ちが強くなりました」。「ワインガーデン」の成功は、阿部さんが北海道産ワインに情熱を傾けるきっかけとなり、インターリンクジャパンにとっても柱となる事業の一つとなっていった。

 

室蘭市出身。会社名の「インターリンク」とは、英語で「つなぐ」という意味で、阿部さんがパイプ役となって地域の人やもの、こと、文化をつなぎ、新しいものを創造して発信していきたいという思いが込められている。

ワインが何倍もおいしくなる!? ワインツーリズム

第1回目の「ワインガーデン」を開催した翌年、阿部さんはインターリンクジャパンを有限会社として法人化。同時に活動の幅も広がり、さまざまな仕掛けを展開していく。2006年からは夜の円山動物園を散策し、一緒にワインや食事を楽しむ「ZOO LOHASナイト」(現在は「スムージアZOO Night」と改名)をスタート。さらに2008年からは道産ワインに関するセミナーと食事をセットにしたホテルイベント「和飲(ワイン)な人時間(ひととき)」も始めた。そうした北海道産ワインとの出会いの場を創出しながらも、インターリンクジャパンでは、ブドウ畑やワイナリーを訪ね、ワインはもちろん、その土地の食や文化などにも触れる観光ツアー「ワインツーリズム」の活動にもいち早く取り組んでいる。「『ワインツーリズム』は元々、ワインづくりの文化が育まれたヨーロッパで実践されていました。その後、アメリカのナパ・バレーで大規模なツアーへと拡大し、一躍注目を浴びました。北海道も2009年から推進協議会が発足して力を入れていますが、私たちも各地のワイナリーに足を運んでもらい、幅広い世代に北海道産ワインを知ってもらうため、2006年からワインツーリズムを続けています」。

インターリンクジャパンが扱う事業は、イベントだけに留まらない。北海道内のワイナリーや酒蔵をまとめた「醸造’Sマップ」をはじめ、出版物の制作なども行っている。

ワイナリーを訪れ、ワインが造られている背景や文化を知ると「ワインの味はひと味も、ふた味も違ってくる」と話す阿部さん。ワイナリーに足を運ぶことは中長期的な視点でも大きな意味があると語る。「ワインは、大人が飲むアルコール飲料ですが、ブドウ畑に子どもが行けないかというと、決してそんなことはないと思うんです。子どもと一緒にワイナリーを訪れ、その年のブドウに触れる。そして、そのブドウで造られた熟成ワインを子どもが成人したときに飲む。ワインにはそうした楽しみ方もあるんです」。

取材は札幌市内にある「藤野ワイナリー」で実施。同ワイナリーのように女性の姉妹が経営するところは北海道でも珍しく、阿部さんも「最初に出会ったときは感動しました」と振り返る。「ブドウ畑にはカナリアのためにバラも一緒に植えるのですが、そのしつらえにも女性らしさが出ています。札幌市民の皆さんには、せっかく近い場所にあるのですから、ぜひ足を運んでもらいたいですね」。

北海道産ワインのおいしさを、海外へ

北海道が今、ワインの産地として注目を集める理由。そこには歴史と気候風土が大きく関係している。「北海道はワイン造りの歴史が浅く、食用ではなく、ワイン造りを目的に醸造用のブドウを作っているブドウ農家が多い。栽培方法もヨーロッパを見習った垣根式が主流です。また、醸造用のブドウは、日照時間が長く、寒暖差があり、ミネラル豊富で水はけのよい土壌が適しています。北海道は地球温暖化の影響も重なり、これからますます日本全国でも最も適している土地になると言われています」。

北海道は現在、醸造用のブドウの栽培面積が全国1位。ヴィンヤードやワイナリーもここ5~6年で大きく数を増やしている。「ワインの質の向上はもちろん、ワイン造りがますます盛んになってくると思いますし、北海道産のワインには今後さらなる可能性があると感じています」。そこで阿部さんが今、最も力を入れているのが、海外への物流システムの確立だ。中でもワインブームに沸く中国をはじめとするアジア圏での流通を視野に動き始めている。「生産者が個人で販路を拡大するには大変な労力がかかります。そこで私たちが消費者と生産者を結ぶパイプ役となり、コーディネイトしていかなければと考えています。ワインが北海道を代表する一次産品へ発展していくための基盤を整えていきたいです」。

実はワインとチーズが苦手だったという阿部さん。好きになったきっかけは会社員時代に参加したワイン会で、「そこで両方を一緒に食べたのですが、こんなに組み合わせでおいしく感じるんだと驚きました。以来、食べず嫌いが大好きになり、今ではすっかりハマっています」。

身近に北海道産ワインがある暮らしを目指して

大通公園でワインを飲みたいという思いから始まり、これまでたくさんの夢をかなえてきた阿部さん。そこには「ライフスタイルの中にワインがある楽しみ方を提案していく」という思いが一貫して貫かれている。「ワインは酔うためというよりも、雰囲気を楽しむお酒だと思うんですね。詳しいことは分からなくても色や香り、好みなどを話し合ったりと会話も弾みます。そういう意味では、家で飲むお酒をワインにすると、いつもとは違った会話の弾み方をするかもしれませんし、食事のメニューとの食べ合わせを楽しむことができる。それこそ地産地消ですよね」。地元の人たちがテーブルワインとして北海道産のワインを毎日飲む生活。そんな日が来るのも決して遠くないのかもしれない。

「北海道でワインを造る人たちと出会うようになって、いつかは自分でもワインを作ってみたいと思うようになった」という阿部さん。「自分の作ったワインを世界に持っていって、味の評価をしてもらう。本当に最高の夢ですね」。


【さっぽろ創造仕掛け人に聞きたい! 3つのクエスチョン】

Q.札幌は企画をするという面で、どんな魅力を持っていると思いますか?

A.札幌は北海道最大の都市でありながら、自然や魅力的な観光スポットがたくさんあります。それらのほとんどが都心から30分圏内というのは大きな魅力だと思います。また、住んでいる人たちも個性豊かで、距離が近いところも魅力的です。人と人がつながり、新たな創造が生まれる。そうした可能性があるまちだと思いますね。

Q.阿部さんが企画をする上で気を付けていることは?

A.自分だけの思いに終始するのではなく、ストーリーと着地点をしっかり考えること。そして、誰に参加してもらいたいかというマーケットをきちんと見極めることですね。ストーリーは短期と長期の両方の視点で捉え、数年後にはこうなっているだろうとイメージしながら企画するように気を付けています。

Q.ずばり、仕掛け人としての極意とは?

A.これまであったことをするのではなく、新しいものにチャレンジすること。失敗するかもしれないというリスクもありますが、まずやってみることが大切だと思います。また、最初からビジネスとして考えてしまうと、アイデアが小さくまとまってしまう可能性があります。私はそうした目線ではなく、一度しかない人生の中で、どう楽しみながらチャレンジできるかという思いを優先しています。経営者としては、失格かもしれません(笑)。

 

有限会社インターリンクジャパン

所在地

札幌市中央区北1条西7丁目3 おおわだビル4階

電話011-218-7575

設立 2006年3月3日
事業内容

旅行斡旋及び観光案内に関する業務、食生活、結婚に関するイベントの企画・運営、

ワインまたはコンサートを主体とした飲食店の経営及びマネージメント、広告デザイン及び商業デザインの企画、立案、製作など

WEB http://www.interlinkjapan.net/

取材・文 : 児玉源太郎
撮影 : 山本顕史(ハレバレシャシン

 

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