ホーム > 市政情報 > 広報・広聴・シティプロモート > シティプロモートの推進 > 関連事業紹介 > 札幌市の未来へ向けたまちづくりを熱く語り合うオンラインコミュニティを実施 > 議論内容と専門家による解説記事
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札幌市とNewsPicksは、まちづくりや2030冬季オリンピック・パラリンピックなどについて議論するオンラインコミュニティ「SAPPORO FUTURE COMMUNITY」を2022年9月20日に連携して立ち上げ、約1か月半にわたって議論を行ってきました。
コミュニティでは議論のベースとして公開した記事3本に対して札幌市民や有識者、NewsPicksのプロピッカーなど105人の参加者からさまざまなコメントの投稿がありました。また、10月11日にはオンライン会議システムを使ったイベントを行い、参加した17人がコミュニティでの議論を踏まえて直接意見を交わしました。
この記事では、これまでにコミュニティ内で交わされたまちづくりや大会招致をめぐる議論を総括するとともに、専門家がこうしたテーマをめぐるコミュニティ内でのやりとりをどう受け止めたのか、改めて聞きました。
全体 | 公募に応募した60人、札幌市・北海道の経済界から19人、有識者26人 |
居住地別 | 札幌市内63人、北海道内6人、北海道外36人 |
年代別 | 20代6人、30代38人、40代34人、50代17人、60代以上8人、無回答2人 |
公募の60人のうち、論点の一つとなる札幌オリンピック・パラリンピック招致について、賛成25人、中立10人、反対25人
議論の出発点は、「札幌市の未来像をどう考えるか」という大きな観点から、札幌、北海道がどのような地域を目指すべきで、そのために何が必要か、というテーマでした。
札幌市も「第2次札幌市まちづくり戦略ビジョン」の策定を進めていて、以下の3つの概念を具体施策のベースと位置付けています。
また札幌市は、2030年冬季オリンピック・パラリンピックの招致によって、より短時間でビジョンに掲げたまちづくりを実現できる可能性があると主張しています。市は以下のように位置づけています。
大通公園(Photo by ogal/iStock)
コミュニティではこの3つの概念と未来に向けたまちづくりに関連して、札幌市・北海道の一次産業、自然環境、食文化などの地域資源のポテンシャルをどう交流人口の増加・経済の活性化に生かしていくか、議論が交わされました。また、雪対策を中心とした住みやすさの確保、エネルギー先進地域への投資、若者の雇用対策の必要性などについても意見が出されました。
「世界的に見ても特異な気象条件、立地条件にある北海道は見せ方やハード面ソフト面の整備を官民一体となり行えば世界一の観光都市を目指せるポテンシャルはある」(9月26日投稿、以下同)
「雪を観光資源にするのであれば、市民の生活の保持も前提としてほしいと思います」(9月26日)
「高齢者や障害者に特化した街にして、『札幌なら見捨てられない』というメッセージを強く打ち出すことができたら、こんな魅力的な街はないと思います」(9月27日)
「若者の就業環境のように民間の資本力ではなかなか変えられない課題や声に予算を投じ、地域の産業を振興していくことに行政の関心が高まるといいなと感じています」(9月29日)
一方で、まちづくりに関しては「具体的にどういうことをしているのかわからない」や「概念で終わらせないためにも何を目標としていくべきか明確に」といった意見があり、「(五輪より)除雪に関わる課題に取り組むべき」といった具体的に優先すべき施策についての指摘も寄せられました。
「ユニバーサル(共生)には誰も反対できない素晴らしい言葉が並んでいますが、現実にある具体的な問題についてどう対応しているのかの情報は欲しかった」(9月27日)
「2013年の『戦略ビジョンに基づくまちづくり』をもう少し振り返ったら良いのではないかと考えます。どういったところに資源を集中してきたのか、またその結果、できたことやできなかったことの振り返りです」(9月29日)
「共生、健康、快適、抽象的なテーマとしては、賛成です。問題は、具体的に何を盛り込むのか。除雪問題も解決できないのに、何がオリンピックか?というのが大方の市民の感覚ではないでしょうか」(9月29日)
※札幌市のまちづくりに関する、その他コメントは末尾にも掲載
オリンピック・パラリンピックの招致に関しては、札幌・北海道の未来のまちづくりに本当に必要なのかについて、参加者が議論を深めました。「原則税金投入はしないということなら、税金を投入する例外はどんな時か」などといった、追加負担を懸念する声があったほか、他に税金を投入して進めるべき課題があるとの指摘も複数ありました。
(ColobusYeti/iStock)
一方で、「大会施設が、今後のフェスなどのお祭り誘致などで盛り上がってほしい」といった意見や、SDGsやサステナビリティを考える機会になるとして、大会招致を肯定的に捉えた意見も出ています。
【オリンピック・パラリンピックの招致に関する主なコメント例(概要)】
【賛成】
【中立】
【反対】
オンラインイベントの様子
「SAPPORO FUTURE COMMUNITY」内でこれまで投稿されてきたのべ400近いコメントを分類すると、以下のような意見に集約されます。
「SAPPORO FUTURE COMMUNITY」コミュニティサイト
まちづくりに関してもっと具体的なアイデアを
オリパラをまちづくりのきっかけにする必要はない
五輪を開催するとしたら開かれ、サステナブルなものを
五輪に関して課題の検証や透明性の確保が必要
判断材料少なく説明が足りない
オンラインコミュニティに参加した専門家からは、今回の市民や専門家を交えた議論の取り組みを評価するとともに、まちづくりを前向きに進めるための提案がありました。
【シェアリングエコノミー協会代表理事 石山アンジュさん】
国の地方創生の委員や自治体の仕事をしていますが、いわゆるまちづくりは行政か民間企業がサービスを提供し、市民はサービスを受ける“お客様”になってしまいがちです。しかし、本来まちは市民が主体となって守り育てていく、行政が市民のまちづくりを支援、サポートすることがあるべき姿だと思います。
オンラインでの意見交換は地方ではまだまだ新しいことです。まちをこれまで作ってきたような商工会や農業団体、地方議員の方などのキーマンが、まだまだオンライン上にいないことも多いため、どうやってそういった方にオンラインコミュニティに入ってきてもらえるかも大事になります。
市民社会ってDAO(分散型自律組織)的だと思っています。いい側面は、利害関係がビジネスと比べるとないため、まちに必要なことを純粋に議論したり、肩書きの制約を外して対話できることです。
一方、課題として合意形成の難しさがあると思います。多様な意見が出てきたときに、それをどう具体的に決めるか、形にするかという部分でもっといろいろな選択肢が必要だなと思います。
また、東京と違って地方では、市民のアイデアをサポートしてくれるような団体や、イノベーションが起きた時に資金援助してくれる投資家、解決してくれるような技術者などのプレーヤーが少ないです。地方で市民のアイデアをどうサポートできるかが課題だと思います。
札幌市に当てはめて考えてみれば、NFTなどデジタルの力をまちづくりに使って、札幌市に住んでいなくても、オンライン“関係人口”的に東京の人がサポートをつなげられる仕組みを増やせるといいかもしれません。
【Yahoo! JAPAN SDGs編集長 長谷川琢也さん】
北海道は一次産業が強いと思います。北海道で生産される農産品は海外で知られていて、マーケティングやブランディングの成功のレールに乗っています。
また、エネルギー産業も強いと思います。自然の資源が大きいところはエネルギーのポテンシャルもあるはずです。かつて石油や石炭でしたが、現在だと太陽光や風力など、北海道でこそ取り組むことができる次のエネルギーはあると思います。
北海道はSDGsの先進事例に取り組むための実証フィールドを備えていますし、日本流のSDGsを実現できる土地だと思います。
こうした中で、オリンピック・パラリンピックを、SDGsがゴールと定めた2030年に行われる国際的なイベントと捉え、SDGsの集大成として無理なく伝えられれば、ものすごい日本のリブランディングにつながります。そういう発信ができると思い、期待したいです。
あくまでオリンピック・パラリンピックだけでなく、SDGsについて世界に向けて表現し発信するイベントということであれば、日本に対するリスペクトがすごく高まり、楽しそうと感じてくれる人が海外からも増えると思っています。
大量の情報が流れてくる中で、場づくりや空気づくりが大事です。オンラインコミュニティでは、交わされた意見やテーマを自分のものとして熱を込められるか、きちんと意見を聞き双方向でコミュニケーションを取れているか。こうしたことができれば、参加者の方は札幌市のことをこれまで以上に気にかけていくと思います。
【Ezofrogs代表理事 大湊亮輔さん(札幌市出身、札幌市在住)】
コミュニティでのやり取りで気になったのは、議論の軸がどこだったのかという点です。
大きな話ですと、五輪の存在自体の是非と北海道・札幌市でやるべきかの是非が、いろいろな事件や歴史の影響で混在しているなと感じました。透明なガバナンス構造を設けようとか、そのために過去の取り組みを評価しようというのはその通りですが、なぜできなかったか、どうすればできたかについても話せたらよかったと思います。
今後は、例えば札幌市長が登壇して五輪について話すような機会を設け、そこに市民らが参加したり、関連するアーカイブを見たりできるといった活動は必要だと思います。政治離れという話がありますが、それは他責にしているだけなので、行政側にコミットしていく姿勢を自分たちが見せていく必要があると思います。
一札幌市民として、一北海道民として、札幌市・北海道をもっと未来志向で魅力的な場所にすることは、私たちのシビックプライドに直結します。そういう地域に自分たちの手で変えていくために、ごみのポイ捨てをしないなど小さなことからでもいいので、まちをどうしていくかということを市民一人一人が考えてもらいたいです。
札幌市については中庸的な取り組みしかできていない印象です。掲げるビジョンは総花的になりがちなので、例えば、どう北海道を持続可能なまちにするか、そのためにスマートを優先するのであれば規制緩和をしていくなど、札幌市には優先順位をつけることができるリーダーシップを取ってもらいたいです。
一方、オンラインコミュニティに参加してない立場からは、今回の議論についてどう見えているのでしょうか?政策シンクタンク事業や人材育成事業などを手掛ける、青山社中の筆頭代表CEO、朝比奈一郎さんは次のように話します。
【青山社中の筆頭代表CEO、朝比奈一郎さん】
オリンピック・パラリンピックは呼べるなら呼んだ方がいいというスタンスです。五輪は本来は開催都市が招致するものです。東京大会の時は国の印象が強かったですが、札幌市ではもう少し地域性を出せると思っています。地域活性のためにスポーツを掛け合わせることは大事で、札幌市がスポーツ地域文化を大切にする意味があると思います。
そのために大切なのは、1つが住民参加です。いろんな形でのボランティアへの参加というのもありますし、ホストタウンとして地域の人が特定の国と交流していくこともあります。これを機に世界とつながることで、地域産品や文化を輸出することも可能で、住民が五輪をきっかけに参加していくという視点が大事です。
2つめに大切なのが、レガシーをどう残すかということです。競技場など分かりやすいものもありますが、1964年の東京大会の時はスポーツ少年団や水泳教室ができる契機となり、教育と地域スポーツがレガシーとして定着したと思います。
今回、五輪を契機にどういうレガシーを札幌市や日本全体に残していくかということを考えていくことが、まさに住民参加にもつながります。こうした点を踏まえてどう誘致するかということだと思います。
オンラインでの直接対話で議論を深めていくことは大事ですが、ポイントはこうした議論が続くかどうかです。議論をすると楽しく盛り上がり勉強になりますが、対話や議論もサステナブルにすることが必要です。
欲を言えば出口がどうなるかが見える方がいいと思います。例えば、議論の結果を市長なり町長なりが聞くとか、行政や政治、地元の有力企業が引き取って実現するなどの方法がありえます。
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