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先日、ケニアで野生動物を観察する機会にめぐまれました。
サバンナを走り回る動物の様子はいやというほどテレビで見ているはずなのに、その後の私にとってかけがえのない心の寄りどころになっています。広い草原を堂々と横切るお腹の大きなメスライオン、子ゾウを守るために長い鼻から砂を吹き出して威嚇するオスのゾウ、薄暮の雨の中にたたずむキリンの群れ。
その時の感覚は、動物とも環境とも「一体化」した感じ・・・と言ったらいいでしょうか。なかなか言葉にすることは難しい体験です。でも、ライオンがいつ現れるか分からない恐怖や、子どもや家族を愛しいと思う気持ち、草原に吹く夕方の風の涼しさなどは、きっと動物達の感覚と共通しているはずです。そして、保護地区を二分する隣国タンザニアとの国境は、目に見えるはずもありません。どこまでも動物の住む環境が広がっていました。
さて、タイトルの「動物園はなぜ必要か?」についてですが、正直なところ、ケニアから帰って動物園の仕事についていろいろ悩むこともありました。私は、建築計画と環境心理学を専門としています。昨年は、オランウータンの弟路郎が暮らす「類人猿館」改修の基本計画に携わりました。動物園では、たくさんの種類の珍しい動物を、一挙に見ることができます。そして、野生環境ではほとんど不可能な、(ガラス越しに)接近して観察することもできます。最近では、動物の行動を引き出すしかけによって、人間とは全く異なる、それぞれの動物の能力を垣間みることも可能です。弟路郎は、以前の建物では外に出ることを嫌がりましたが、様々な工夫を施した改修後の屋外にはさっさと出てきて、草木の間に隠された食べ物を小一時間かけて食べ歩いたり、高いポールの頂上に立って大好きな飼育員さんを探したり、池の水をガラス越しに小さなお客さんにかけようとしたり、人のカバンの中を覗き込んだりするようになりました。お客さんは、もちろん大喜びした後、観察スペースの一角にあるオランウータンの絶滅危惧を伝える掲示を見て、環境破壊についてちょっと知識を得て帰っていきます。私達は、動物園の動物を見て、多くの野生動物やその生息環境に思いを馳せることができます。そういう意味でヒトは動物園が必要なのではないでしょうか。弟路郎は、ボルネオに住むオランウータンの代表選手といえます。札幌市立大学の私達は、彼らの獣舎や展示空間、情報などのデザインによって、ヒトと動物が出会うきっかけづくりをしていけたらと考えています。
これからも、ぜひ円山動物園をよろしくお願いいたします。
(2009年1月8日・片山めぐみ)
札幌市立大学 デザイン学部 助教 片山めぐみさん
プロフィール
1998年札幌市立高等専門学校専攻科卒業
2004年博士(工学)東京工業大学、 東京工業大学 都市地震工学センター 研究員
2006年公立大学法人 札幌市立大学 デザイン学部 助教
所属
札幌市立大学 デザイン学部 デザイン学科 空間デザインコース
専門分野
建築計画、環境心理学
研究のテーマ
放養場内の環境エンリッチメントと環境エマ―ジョン、高揚感を高める動物園の経路デザイン
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