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私は、円山動物園ホームページ編集委員として、動物園の活動に携わっています。
札幌市立大学が3年前に開学して以来、情報関連のさまざまな試みで円山動物園と関わりを持ってきました。この間、一般市民として思い描いていた動物園像は、大きく変わってきたように感じています。その中でも飼育員の朝倉さんから伺った、小中学校の総合学習支援の取り組みは、私にとって極めて刺激的なものでしたので皆様にお知らせしようと思います。
円山動物園の行う教育支援の最大の目的は、動物の生態や取りまく環境の理解にあります。
こうした教育支援は、動物園本来の機能のひとつではあるのですが、円山動物園の行っている教育活動のユニークさは、その教材を学校の先生と共に試行錯誤しながら構築している点にあります。学校教育の実情を考えると、動物園が単独でこうした教育プログラムを作成しただけでは、教育の現場での実践性に課題が残るものであり、学校の先生としても歯がゆい思いをしてきたのに違いありません。
長い歴史を持つ円山動物園では、こうした課題を見抜いた上で、最大の教育効果が得られるよう、先生と共に工夫した教材をつくり上げきたのです。
この教材の特徴がもっともあらわれているのが、学習を「事前」「動物園学習」「事後学習」の3段階のプロセスに分け、それぞれのプロセスで動物園と子どもたちが知を交換し合う設計がされている点です。
ぬり絵教材を例にとると、子どもたちは「事前学習」で自分の予想する動物の姿を描き、「動物園学習」で描いたものと実際の動物の姿の違いを確かめて現場でその理由を探ります。そして、「事後学習」で、このような経験からわかったことをまとめ、報告するといった、動物園の提供する知と、学校教育が目指す学びの本質がきわめて有機的に結びついたものとなっています。
私は、こうした連携的な教育の試みが「動物園」という最適な場所で進みつつあることに大変驚きました。
円山動物園の教育支援には、もうひとつユニークな着眼があります。それは、子どもがどのような発見をし、動物や環境のいかなる理解につなげられるかを静かに見守っている点にあります。
われわれは、学校での教育といえば、あらかじめ用意された答えに学習を導くものと考えがちです。実際、こうした導き方をしなければ学習が成立しない場面も多いものなのですが、現実の社会ではそればかりとは限りません。
円山動物園が用意した教材は、動物の生態を絶対的な回答に導くものではなく、子どものとらえた動物の事実を理解へと的確に導く工夫が随所にされたものとなっています。動物の生態は、どこをとらえても奥深い理由が潜んでいます。この教材は、動物園が持つ知の資産が、こどもの着眼に柔軟にこたえられることを実現している点にすばらしさがあるのです。
私が大学で教える「デザイン」は、まさにこのような着眼を日常的に行うようになれることを目指した学問のひとつです。小中高等学校を通じて、自分の着眼を養う機会を提供している円山動物園のスタッフは、動物の生態や環境に対する教育のみならず、将来の幅広い分野に関わる人材育成に貢献しつつある点にも深く共感しました。
(2009年9月23日・札幌市立大学デザイン学部 准教授 細谷多聞)
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