ここから本文です。

更新日:2011年2月24日

何でも知っている最近の子ども

 情報化が進んだ現在、テレビや本、インターネットから動物のことを学ぶことができます。こんな時代に小さな子どもを持つ私たち親が、子どもを連れて動物園へ行くと、動物を見させることに必死になることがあります。「よく見てごらん」と言って。
 ところが、百獣の王は昼間なのでじっとしていて、肉食の恐ろしさを感じられないのか、子どもは映像を見るように通り過ぎる始末。最近の子どもは、ライオンさんに視覚的には見慣れているようです。

 動物園で感じてほしいことは、生身の動物の臨場感です。驚いた目で、人間との違いを観察してほしいのです。さらには、地球で共存していく大切な仲間だということも。動物の生体を撮ったすばらしい映像のように、獲物を追いかけたり、争ったり、求愛のダンスを踊ったり、仲間同士の合図を遠吠えしたり、そんなおいしい瞬間を動物園で見ることは難しいです。でも、時々感じられる足元から伝わってくる低いうなり声や、リアルな大きさ、するどい目つきから、本当はこんな狭い所で暮らす生き物ではない野生を思うことができるのだと思います。

 私は札幌に来て1年です。
 円山動物園で、ガラス越しに近くでライオンの食事の様子を見ることができました。いつもは「ライオン?あー見た見た」なんて言っている子どもも、その光景に出会うと釘付けです。ガラス越しなのに「パパー危ないから近くにいかないでー!」と焦ります。

 デザインは、人々が快適で豊かな生活を送るためのものですが、檻の中で生きていくための動物たちにとっても重要な考え方です。近年、動物園が変わり始めました。動物本来の個性を引出す工夫が凝らされ、動物たちも本当の姿を見せてくれるようになってきました。円山動物園も、現場での工夫から、インターネットを通じたエンターテインメントにも取り組んでいます。私が専門とする、感性コミュニケーションや情報プロダクトという分野では、私たちの暮らしの一部となった情報ネットワークの中で、人間らしいコミュニケーションのあり方や、プロダクトと情報との繋がりを研究しています。そういった情報時代の中において、円山動物園の新たな魅力を展開するお手伝いができたらと思っています。

(2009年7月9日・柿山浩一郎)

画像:柿山浩一郎さん
札幌市立大学 デザイン学部 専任講師 柿山浩一郎さん

プロフィール
2003年 日本学術振興会 特別研究員(21COE)
2005年 博士(デザイン学)筑波大学
2005年 静岡産業大学 情報学部 講師
2008年 4月より現職

所属
札幌市立大学 デザイン学部 デザイン学科 製品
デザインコース

専門分野
感性情報学、感性官能計測・評価、情報プロダクトデザイン、ヒューマンインタフェース、教育工学

研究のテーマ
感性価値の評価基準構築と、製品デザインプロセスへの適応


円山動物園のトップへもどる

このページについてのお問い合わせ

札幌市円山動物園

〒064-0959 札幌市中央区宮ケ丘3番地1

電話番号:011-621-1426

ファクス番号:011-621-1428