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更新日:2023年1月24日

札幌市衛生研究所-調査研究(2005)

調査研究
年報第32号(2005年)


 札幌市における先天性代謝異常症のハイリスク・スクリーニング結果 (2001-2004年度)
札幌市では、1990年から痙攣や意識障害などの臨床症状により先天性代謝異常症が疑われた児を対象としたハイリスク・スクリーニング検査を実施してきた。検査は、札幌市内、道内はもとより、国内の小児科関連病院のほか、国際協力事業団(JICA)海外研修員受け入れ事業を受講した研修員などから依頼があり、2001年4月から2005年3月までに2,389件を受け付けた。スクリーニングの結果、市内、道内における初回受付検体947件から10例、海外からの依頼検体746件から54例において先天性代謝異常症の化学診断がなされた。
  本文(PDFファイル 261Kバイト)
(31-39ページ)


 札幌市における神経芽細胞腫スクリーニング結果(2004年度)

札幌市で行っている生後6か月児を対象にした神経芽細胞腫スクリーニング(以下6MS)は、平成15年度をもって休止となり、生後1歳2ヵ月児を対象にしたスクリーニング(以下14MS)に一本化された。2004年度には、6MSにおいて1例、14MSにおいて2例の新たな患者を発見・治療した。札幌市の6MSの最終的な結果は発見患者77例で発見頻度は4,372人に1人であった。発見患者はすべて外科的治療が行われ、1例は術後合併症で死亡したが、他の症例はすべて再発もなく、良好な予後であった。14MSについては、平成18年度から、対象年齢を1歳6カ月に変更して実施することとなった。
  本文(PDFファイル 40Kバイト)
(40-44ページ)


 安定同位体希釈法を利用したタンデムマスによる新生児スクリーニングにおける溶媒中の水分含量と塩酸添加の影響

タンデムマスにより新生児スクリーニングを行う際、アミノ酸、アシルカルニチンなどの指標物質は、乾燥ろ紙血液から安定同位体を内部標準物質として含むメタノール溶液で抽出することとなるが、このメタノール溶液について、水分含量、塩酸添加の有無の異なる3種類の抽出溶媒を用いた場合の正常検体の各指標物質の血中濃度の分布を検討したところ、オルニチンとアルギニノコハク酸などのアミノ酸では分布が異なっていたが、他のアミノ酸、アシルカルニチンについては、検討した範囲内では分布にそれほど差は無かった。
  本文(PDFファイル 123Kバイト)
(45-53ページ)


 タンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングのシステム構築 (1)体制整備

札幌市では2005年4月から2年間の予定で、タンデム質量分析計(以下、タンデムマス)による新生児マス・スクリーニングのパイロットスタディを開始した。その際、従来の新生児マス・スクリーニングシステムに、本スタディを組入れることに伴う問題点を解決し、かつタンデムマスによるスクリーニング検査事業の有効性を高めるために、新生児マス・スクリーニング関連の実施要綱及び要領の改定を行い、検査の周知方法や申込方法の変更など体制整備を実施した。
  本文(PDFファイル 68Kバイト)
(54-61ページ)


 タンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングのシステム構築 (2)事務処理プログラム

 札幌市において2005年4月から、タンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングのパイロットスタディを開始するにあたり、検査の希望の有無を登録するなど、これまでのスクリーニングとは異なった受付処理に対応し、かつ、従来の事務処理プログラムと連動して運用できるプログラムを開発した。
  本文(PDFファイル 187Kバイト)
(62-69ページ)


 タンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニングのシステム構築 (3)データ処理システム

札幌市では平成17年4月から、タンデム質量分析計(以下タンデムマス)を用いる新たな代謝異常症マス・スクリーニングのパイロットスタディを開始した。研究の開始にあたって、タンデムマスの測定データを取り込み、自動的に判定処理を行い、検査結果を出力するデータ処理システムを作成した。また、判定結果は検査データとともに事務処理プログラムに転送し、成績発行・精査の依頼処理などを行うこととした。さらに、これまでのアミノ酸代謝異常検査など精度管理データベースを参考にして、タンデムマスを用いる検査の内部精度管理システムを構築した。
  本文(PDFファイル 131Kバイト)
(70-74ページ)


 RT-PCRによるエンテロウイルスの検出

2003年6月から2003年10月までに採取された咽頭ぬぐい液等149検体について、培養細胞によるウイルス分離とともに、5’非翻訳領域とVP2領域に設計されたプライマーを用いたRT-PCR法によるエンテロウイルス(EV)遺伝子の検出、VP4領域の塩基配列解析による相同性検索および分離株間の多様性について検討した。
149検体中56検体からEVが分離され、RT-PCR法では分離された56検体を含む74検体からEV遺伝子が検出された。54検体について塩基配列を決定してBLAST検索を実施したところ、エコーウイルス6型を除きGenBankに登録されている分離株と91.8%以上の相同性を示した。各血清型の分離株間の相同性はコクサッキーウイルスA10型(CA10)を除き99.0%以上とほぼ同じウイルスと考えられた。CA10については2つのグループに分類されるウイルスが流行していたと思われる。
 ウイルス分離により血清型が同定された検体すべてについてEV遺伝子が検出されたことから、今回使用したプライマーはEVのスクリーニングに有効であると考えられる。また、塩基配列の解析から一部の血清型を除き同定可能であり、ウイルス検査の迅速性を高める上で有用と考えられる。

  本文(PDFファイル 51Kバイト)
(75-82ページ)


 市販乾麺における非意図的そばタンパク混入について-ELISAによる測定-

市販食品における食物アレルゲン物質の非意図的混入の把握を目的として、アレルゲンとしてそば、食品として乾麺を選択し、そばタンパク質量の調査を実施した。アレルゲン検査のための厚生労働省通知に示されたELISAで、2004年11~12月に市内販売店で購入した、包装の原材料にそばの表示がなく、そば製品と製造の施設または設備を共有する旨表記がある乾麺(13社26製品)中のそばタンパク質量を検査した。その結果、3社7製品から、通知で陽性の判断基準とされている10μg/g以上のそばタンパク質を検出した。これらのうち2005年6月にロットの異なる製品が入手可能であった5製品を検査した結果、3社3製品から10μg/g以上の、そばタンパク質を検出した。
  本文(PDFファイル 39Kバイト)
(83-88ページ)


 クロルフルアズロン等7農薬に対する一斉分析法の適用

平成18年5月、食品に残留する農薬等にポジティブリスト制が導入されることになり、新たに分析可能である農薬を増やす必要がある。そこで、クロルフルアズロン等7農薬について、当所が実施している一斉分析法の前処理法が適用可能か検討した。その結果、2種類のミニカラムを使用した精製法を用いることにより一斉分析が可能であった。また、回収率は69.3%~93.1%と良好であった。
  本文(PDFファイル 259Kバイト)
(89-97ページ)


 2002-2004年度の札幌市における残留農薬の検出状況について

1998年度に報告した農薬の系統分析法を用いて、2002~2004年度に収去検査の検体として持ち込まれた農畜産物について残留農薬検査を行ったところ、国内品172検体中36検体から21種、輸入品217検体中55検体から21種の農薬が検出された。このうち輸入冷凍ほうれん草2検体から食品衛生法の基準値を超えるクロルピリホスが検出された。また、系統分析法における混合標準溶液に新たに3成分を追加し、添加回収試験回収率を検討したところ良好な結果が得られた。
  本文(PDFファイル 215Kバイト)
(98-117ページ)


 札幌市における黄砂による湿性水素イオン沈着の減少について

 黄砂は、中国大陸から偏西風に乗って冬から春にかけて日本に運ばれ、炭酸カルシウム(CaCO3)等の塩基成分を含んでいる。札幌市で黄砂が話題なった2002年以外の年でも春先にpHの高い降水がみられたので、黄砂による影響を調べるため、ウェットオンリー採取法を用いて札幌市衛生研究所屋上で採取した湿性沈着調査結果のうち、水素イオン(H+)、非海塩由来硫酸イオン(nss-SO42‐)、硝酸イオン(NO)、非海塩由来カルシウムイオン(nss-Ca2+)の各沈着量を用いてH+沈着量の動向を検討した。さらに、ダストジャー法による降水中の不溶性粒子状物質沈着量を用いて黄砂量の経年変化を併せて検討したので結果を報告する。各年の降水のpHは春先に上昇する傾向がみられ、特に2002年と2004年の3月、4月はpH5.1~6.5の範囲にあり、nss-Ca2+沈着量も同様な傾向がみられ2000μmol/m2に達した。降水中のnss-SO42‐沈着量およびNO沈着量から求めた計算H+沈着量と実測H+沈着量を用いることにより、黄砂の塩基成分によって減少したH+沈着量の減少率は、2002年3月で99%、4月で94%、2003年4月で79%、2004年3月で99%、4月で97%程度と推定された。黄砂量を反映するダストジャー法による乾性不溶性粒子状物質沈着量は、2002年の春先では5.5g/m2であったが、2003年以降は3.0g/m2で前後であった。札幌に降る黄砂は減少しているかのようにみえるが、湿性不溶性粒子状物質沈着量を含めた総不溶性粒子状物質沈着量は2002年以降2003年を除き6.0g/m2程度あり、湿性を含めた黄砂の量は大きく変化していないと考えられる。
  本文(PDFファイル 78Kバイト)
(118-123ページ)


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札幌市衛生研究所 003-8505 札幌市白石区菊水9条1丁目(電話代表:011-841-2341)

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