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更新日:2024年4月10日

「オランウータンとボルネオの森」2024年5月下旬オープン!

2023年10月末に完成しました、2024年5月下旬にオープンを予定しています。

 

第2章 動物移動(釧路・病院)

移動

新施設は類人猿館を取り壊して同じ場所に建設されるため、建設の間は当園で飼育する3頭のオランウータンを別の場所に移動させる必要がありました。

元来、野生動物は自らの暮らす区域から理由もなく移動することはありません。移動は生存するうえで避けることのできない必要性が生じた場合にのみ、自発的に行われる行為です。

一方、動物園では動物の意思にかかわらず移動を行わざるを得ず、動物には極めて大きなストレスがかかります。そのストレスにより死に至るケースもあることから、移動に際しては慎重な準備を行う必要があります。

当園のオランウータン飼育においては、将来を見据えて普段からさまざまな刺激と変化を取り入れ、動物を精神的に強く安定させることを心掛けてきました。また、飼育動物の移動の際に使用する移動檻を獣舎に常設し、日頃から出入りの訓練をすることで、移動檻自体が動物にとって生活区域に準じた空間となるよう取り組みました。

その結果として、ハヤト(雄・当時8才)の愛媛県立とべ動物園への移動(2018年)、今回の新施設建設に伴う弟路郎(当時24才・オス)の釧路市動物園への移動(2021年5月)、そしてレンボー・レイト母子(当時22才、1才)の当園内動物病院への移動(2021年7月)について、彼らの自発的な移動檻への収容に成功し、安全な動物移動が実現しています。

 類人猿館からの引っ越し

 引っ越し先での様子

飼育担当者より:オランウータンたちの今その1「弟路郎」(2023年2月21日更新)

釧路市動物園のていじろう

現在、弟路郎は生まれ故郷の釧路市動物園へ、レンボー・レイト母子は当園の動物園病院に移動して過ごしています。
今回は釧路市動物園にいる弟路郎の現在の様子を皆さんにお伝えしたいと思います。

釧路市動物園のていじろう

食べても大丈夫なクレヨンで描いています

釧路市動物園のていじろう

今、釧路市動物園では、1997年に弟路郎が生まれた時に担当していた飼育員さんが弟路郎を担当しています。
これらの写真も撮影して送ってくださいました。
妹の「りな」と過ごしながらよく絵を描いているようです。

釧路市動物園でていじろうが描いた絵

きっちり塗りつぶし系です

釧路市動物園でていじろうが描いた絵

壁画も描いちゃってるみたいです

弟路郎の性格通りな絵です。
担当飼育員さんから「弟路郎はちゃんとした画用紙じゃなきゃ描かないの。ダンボールとかじゃイヤみたいで」とコメントを頂きました。
本当に賢い弟路郎です。
オランウータンは一般に認知能力が非常に高いことが知られていますが、私は飼育を通して何度も彼から思い知らされています。
たとえば、私が彼と出会って間もないころ、ニンジンの輪切り100ピースくらいの中で1ピースだけ皮をむいてその他は皮付きのまま与えたことがありました。
一日の終わりに私が様子を見に行くと彼は落ちているニンジンを拾い上げて、前歯でその皮をむき私の目の前に置いたのでした。
そしてこちらを見つめる弟路郎。一つだけ皮むいたということを私にこんな風に伝えてくれるのかと衝撃でした。
たくさんの方々のご協力を頂きながら、彼らにとって住み良い施設を完成させて、円山動物園へ元気に戻ってきてほしいと心から願っています。

飼育担当者より:オランウータンたちの今その2「レンボーとレイト」(2023年3月20日更新)

オランウータンのレンボーとレイト

現在、弟路郎は生まれ故郷の釧路市動物園へ、レンボー・レイト母子は当園の動物園病院に移動して過ごしています。
今回は動物病院にいるレンボー・レイト母子の現在の様子を皆さんにお伝えしたいと思います。

オランウータンのレンボーとレイト

病院に来てすぐのころの様子です

オランウータンのレイト

レイトは令和5年2月3日に3才になりました

レイトは今はやんちゃのさかりです。
レンボーのまねを通り過ぎて、興味のあるものにまっしぐら。

オランウータンのレンボーとレイト

イタズラも板についてきました

オランウータンのレンボー

ココナッツを食べるレンボー

新獣舎が完成するまで、元気で過ごしてもらいたいと思っています。
それには、母親レンボーの健康がなにより大切です。
元気なレイトがあるのは、レンボーが元気で頑張ってくれているからです。

北海道の長い冬も終わりをむかえ、春ももうすぐです。
非公開の動物病院内ですごすオランウータン母子ですが、雪がとけて暖かさの増す5月頃からは、また「オランウータンのガイド」を再開します。
ご参加いただける方の人数に制限はありますが、毎週お客様に間近でレンボーとレイトを見て頂けます。
ぜひ、ご参加ください。(記:2023年3月20日)

 飼育担当者より:オランウータンのガイド(2023年7月●日更新)

毎週木曜日(たまに違う曜日)に「ボルネオオランウータンガイド」を行っています。
オランウータンが餌を食べるところを見て頂きながら、彼らの生態や動物園でのエピソード、取組についてお客様にお話ししています。

オランウータン

レンボーとレイトは現在、非公開ゾーンである動物病院の仮住まいに暮らしているため、ガイドでお客様を動物病院にご案内して、上の写真のような今の様子を伝えています。それに加えて、円山動物園のオランウータンの歩みも。
ガイドでお話ししている内容を少しご紹介します。

レンボーとレイト

レンボーとテイジロウの第二仔。ハルトのお話。

エコーの様子

ハルトの「生」と「別れ」から学び、日々の健康管理に取り組んだこと。

歯科検診

長男ハヤトの「とべ動物園」への旅立ち。

ハヤト

2018年11月3日。
晴天で20℃近く気温が上がりぽかぽか陽気の日でした。

オランウータン移動

そこで目の当たりにした動物の持つ高い能力とすばらしさ。

オランウータンの糞

これは、ハヤトがとべ動物園到着後、私が帰る日にしてくれた糞です。
一生忘れられない糞なのです。変ですよね。
でもガイドではよくこの糞のエピソードもします。
聞いていただければこの糞の価値が伝わるはずです。

そして、満を持して取り組んだレンボーとテイジロウ3度目の繁殖。

オランウータン

驚きと発見の連続でした。

レンボーの出産前

そこでのレンボーの気遣い。
この写真は、出産前に一旦施設を閉館するのですが、その閉館時期をレンボーに話しかけて聞いた時に、レンボーが私の目の前で出産する姿勢をとったもの(2020年1月31日)です。「もう生むよ」と言われたと思い、翌日閉館しました。結果として3日後の2020年2月3日に第三仔のレイトが誕生しました。

レンボーとレイト

誕生直後のレンボーとレイト。

レイトの成長のお話しもします。

テイジロウ

弟路郎の今も伝えています。
生まれ故郷の釧路で元気にしてくれています。

そんなガイドには想いがあります。
希少動物である彼らを飼育する動物園が、彼らについてお客様に伝え、彼らの保全、生物多様性の保全に寄与すること。
また、動物の営みを通して命の尊さをお客様と共有すること。ボルネオオランウータンは、生物多様性のホットスポットといわれるボルネオ島に暮らし、私たちヒトの次に子育てをする期間(8年程度)が長い、とても愛情深く、賢い動物です。
円山動物園では彼らの飼育を通して、飼育下でしか気づくことのできない貴重な科学的知見を数多く積み上げてきました。彼らから教わり、知れば知るほど、彼らを心身ともに健康に、元気に飼育する技術の向上は欠かすことのできないものという認識が高まりました。
30年以上オランウータンを飼育してきた先輩職員が積み上げた当園のオランウータン飼育技術とその概念は、「世界のどこに出しても胸をはれるものである」ことが、2016年にドイツとチェコの動物園を海外視察した際に、はっきりとわかりました。

その上で、彼らをより良い状態で飼育する、彼らの動物福祉を高い質で確保するには、飼育技術(ソフト)とともに、彼らの暮らす環境(ハード)を整えることが重要です。

ソフトとハードは、動物福祉を確保する両輪なのです。片輪ではうまく走れませんよね。ハードの整備には市民の皆さまのご理解とご協力が不可欠です。
そこで2017年以降、ソフト(飼育技術)をより実践的に高めつつ、それをガイドを通じて皆様にお伝えしてきました。「円山動物園のオランウータンを飼育する技術は、世界基準を満たしています」と。お話しだけではなく、検診の様子などを実際にご覧いただいたりもします。

日々の取組とガイドを通して、「オランウータンを円山動物園で飼育していく意義」を皆様にご理解頂き、結果としてハード(新獣舎)の整備が実現することとなりました。

新オランウータン館 新オランウータン館内部

ガイドには想いがあります。
皆さまへの感謝を伝えること。そして、動物園を未来に、こどもたちに残し、つないでいくこと。

レンボーとレイト

お時間のある時にぜひ一度、オランウータンたちのお話しを聞きにいらして下さい。(記:2023年7月●日)

 

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札幌市円山動物園

〒064-0959 札幌市中央区宮ケ丘3番地1

電話番号:011-621-1426

ファクス番号:011-621-1428