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更新日:2023年3月20日

(仮称)オランウータン館、建てます!

目次

第1章 基本計画・設計

第2章 動物移動(釧路・病院)

            飼育担当者より:現在のオランウータンの様子(テイジロウ)

            飼育担当者より:現在のオランウータンの様子(レンボーとレイト)

第3章 工事

(1)解体

(2)新設

オランウータンについて

オランウータン

ヒト科に分類される大型類人猿の中で唯一、私たちと同じアジアに生息します。

樹上性の哺乳類では最大で、地面に降りることはほとんどなく寝る時も高い木の上に枝葉を組んだベッドを作って休みます。

基本的に単独性で群れを作らず、複数で見られるのは母親と7才頃までの仔の親子だけです。オランウータンの子育ては母親のみで行い、その期間はヒトの次に長いと言われます。とても愛情深いとともに、高い知能と思慮深さを持つのがオランウータンです。

そんな彼らの生息地の一つであるボルネオ島は「生物多様性の宝庫」と評されるほど、多種多様な動植物が生息し、お互いに絶妙なバランスを保つことで豊かな自然環境を形作っています。

 

なぜ今回の工事を行う必要があったのか

旧類人猿館

円山動物園でオランウータンが暮らしていた「類人猿館」は1977年に建てられました。

当初は、オランウータン、チンパンジー、ゴリラ、テナガザルが暮らし、類人猿どうしの比較を通して種間の類似点や相違点について来園者にお伝えすることを目的としていました。

旧類人猿館

動物園が動物の肉体的、精神的な健康と暮らしの質(動物福祉)の向上に力を注いでいく中で、2000年にチンパンジーを新しい施設に移動、2004年には単独飼育となっていたゴリラを野生本来の群れの暮らしに戻すため京都市動物園に移動し、類人猿館に最後に残ったのがオランウータンでした。

以降も2008年に屋外放飼場の緑化と立体化を実現するなど、オランウータンの生態に則した飼育と展示に力を入れてきました。

そんな経過をたどりつつ、築後40年が過ぎ、施設の老朽化も進んだことから、オランウータンの動物福祉の向上と、多くの来園者の方に東南アジア熱帯雨林の環境や生物多様性の重要さを感じてもらうことを目的として新施設の建設が決まりました。

オランウータンが暮らす新施設を貫く三原理

  1.  動物福祉へのできうる限りの配慮ができる施設
  2.  ボルネオの生物多様性を「知ること」「感じること」ができ、生命の営みを感じられる施設 
  3.  SDGs―持続可能な開発目標― を動物園の視点から考えられる施設

動物を取り巻く飼育環境に完成はなく、適宜適切に変化させる必要があると考えています。その時々で必要な変化を取り入れていくことで、月日が経つにつれ「最良の形」となっていくようになることを目指します。

完成図(予定)

 
外観アイレベル 外観鳥
内観放飼場側

新施設の床面積は、旧施設のおよそ3倍となる約1,300㎡となります。

屋内展示場は約200㎡から100㎡の大小3面を用意し、オランウータンが利用可能な空間の高さは旧施設の約2倍となる最高8mとなります。

夜間を含めバックヤードで過ごす時間が長いことから、旧施設の屋内展示場と同程度の広さの非公開サブパドックを確保するとともに、健康管理のためのトレーニング室、検疫室なども備えています。

屋内展示場には、多くの擬木や擬蔦などを設置するとともに、常に自然光が入り、植物が自生する環境を目指します。樹の上での生活を基本とするオランウータンが、木々の間を腕で渡るという本来の能力や行動を発現しながら、生き生きと暮らすことができるよう工夫しています。

オランウータンが棲む森の多様な生態系を再現すべく、昆虫や魚、両生類や爬虫類、鳥なども飼育できるようにするなど、良好な動物福祉に配慮した施設を目指します。

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動物移動(釧路・病院)

移動

新施設は類人猿館を取り壊して同じ場所に建設されるため、建設の間は当園で飼育する3頭のオランウータンを別の場所に移動させる必要がありました。

元来、野生動物は自らの暮らす区域から理由もなくその外へ移動することはありません。移動は生存するうえで避けることのできない必要性が生じた場合にのみ自発的に行われる行為です。

一方、動物園では動物の意思にかかわらず移動を行わざるを得ず、動物には極めて大きなストレスがかかります。そのストレスにより死に至るケースもあることから、移動に際しては慎重な準備を行う必要があります。

当園のオランウータン飼育においては、将来を見据えて普段からさまざまな刺激と変化を取り入れ、動物を精神的に強く安定させることを心掛けてきました。また、飼育動物の移動の際に使用する移動檻を獣舎に常設し、日頃から出入りの訓練をすることで、移動檻自体が動物にとって生活区域に準じた空間となるよう取り組みました。

その結果として、2018年ハヤト(雄・当時8才)の愛媛県立とべ動物園への移動、および今回の新施設建設に伴う2021年5月弟路郎(雄・当時24才)の釧路市動物園への移動、同年7月レンボー・レイト母子(当時22才、1才)の当園内動物病院への移動について、彼らにの自発的な移動檻への収容にそれぞれ成功し、各移動先への安全な動物移動が実現しています。

弟路郎 2021/5/26に釧路市動物園へ移動(PDF:763KB)

レンボーとレイト 2021/7/14に当園動物病院へ移動

参考:ハヤト 2018/11/3にとべ動物園へ移動(PDF:1,088KB)

 

飼育担当者より:オランウータンたちの今その1「弟路郎」(2023年2月21日更新)

釧路市動物園のていじろう

現在、弟路郎は生まれ故郷の釧路市動物園へ、レンボー・レイト母子は当園の動物園病院に移動して過ごしています。

今回は釧路市動物園にいる弟路郎の現在の様子を皆さんにお伝えしたいと思います。

釧路市動物園のていじろう

食べても大丈夫なクレヨンで描いています

釧路市動物園のていじろう

今、釧路市動物園では、1997年に弟路郎が生まれた時に担当していた飼育員さんが弟路郎を担当しています。

これらの写真も撮影して送ってくださいました。

妹の「りな」と過ごしながらよく絵を描いているようです。

釧路市動物園でていじろうが描いた絵

きっちり塗りつぶし系です

釧路市動物園でていじろうが描いた絵

壁画も描いちゃってるみたいです

弟路郎の性格通りな絵です。

担当飼育員さんから「弟路郎はちゃんとした画用紙じゃなきゃ描かないの。ダンボールとかじゃイヤみたいで」とコメントを頂きました。

本当に賢い弟路郎です。

オランウータンは一般に認知能力が非常に高いことが知られていますが、私は飼育を通して何度も彼から思い知らされています。

たとえば、私が彼と出会って間もないころ、ニンジンの輪切り100ピースくらいの中で1ピースだけ皮をむいてその他は皮付きのまま与えたことがありました。

一日の終わりに私が様子を見に行くと彼は落ちているニンジンを拾い上げて、前歯でその皮をむき私の目の前に置いたのでした。

そしてこちらを見つめる弟路郎。一つだけ皮むいたということを私にこんな風に伝えてくれるのかと衝撃でした。

たくさんの方々のご協力を頂きながら、彼らにとって住み良い施設を完成させて、円山動物園へ元気に戻ってきてほしいと心から願っています。

 

飼育担当者より:オランウータンたちの今その1「レンボーとレイト」(2023年3月20日更新)

オランウータンのレンボーとレイト

現在、弟路郎は生まれ故郷の釧路市動物園へ、レンボー・レイト母子は当園の動物園病院に移動して過ごしています。

今回は動物病院にいるレンボー・レイト母子の現在の様子を皆さんにお伝えしたいと思います。

オランウータンのレンボーとレイト

病院に来てすぐのころの様子です

オランウータンのレイト

レイトは令和5年2月3日に3才になりました

レイトは今はやんちゃのさかりです。

レンボーのまねを通り過ぎて、興味のあるものにまっしぐら。

オランウータンのレンボーとレイト

イタズラも板についてきました

オランウータンのレンボー

ココナッツを食べるレンボー

新獣舎が完成するまで、元気で過ごしてもらいたいと思っています。

それには、母親レンボーの健康がなにより大切です。

元気なレイトがあるのは、レンボーが元気で頑張ってくれているからです。

 

北海道の長い冬も終わりをむかえ、春ももうすぐです。

非公開の動物病院内ですごすオランウータン母子ですが、雪がとけて暖かさの増す5月頃からは、また「オランウータンのガイド」を再開します。

ご参加いただける方の人数に制限はありますが、毎週お客様に間近でレンボーとレイトを見て頂けます。

ぜひ、ご参加ください。

 

コラム:ハズバンダリートレーニング / 受診動作訓練

エコー検査

飼育動物の福祉向上に資する取り組みをより積極的に行っていくことを考えるとき、飼育個体の健康増進はもとより、疾病予防、早期の治療、繁殖等に向けた日々の検査や、あるいは今後必要となりうる人工授精などの技術に対し、より負担の少ない有効な手段を整えていくことが求められます。

ヒトとオランウータンの「相互協力」によるトレーニングを通じて、当園では人間の健康診断と同程度の検査をオランウータンに麻酔などの負担をかけることなく実施することができています。

※飼育下のオランウータンで獣医療の観点から問題となっている事柄には、肥満、代謝異常による糖尿病や心疾患、フランジオスにおける麻酔時の唾液等の誤嚥による呼吸器系疾患などが挙げられます。

※フランジオス:成獣の強く優位な雄。頬の部分にドーナッツ状の大きなひだ(フランジ)をもち、のど袋が発達している。

 

3つのポイント

  1.  関係性の構築
    トレーニングに取り組む前に、種および飼育個体の特性を十分に理解し実施個体との関係性をしっかりと構築しておくことで、トレーニングがよりスムーズに進むよう注意しています。
     
  2.  相互協力の認識
    オランウータンが興味を持ってトレーニングを行うことができる時間は、長くてもせいぜい10分間ほどです。トレーニングは人間と動物の「相互協力」であることを認識し、明確な目的を持ち、適度な時間内で、的確にトレーニングを行うように心がけます。そうすることで、動物の負担は軽減されトレーニングを心待ちにするようになります。
     
  3.  ボランタリー
    ハズバンダリートレーニングを行う際には、動物のボランタリー(自発的にトレーニングに参加すること)を保証する必要があります。そのため、トレーニング実施場所は基本的に閉鎖せず、動物がその場を離れたいときは自由に離れられるように配慮して行っています。
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工事

類人猿館解体工事タイムラプス動画

新築工事はじまりました

令和4年2月18日撮影

真冬の工事スタートなので、工事エリアの除雪から始めます。(令和4年2月18日撮影)

令和4年4月5日撮影

雪解けが進んでいます。アースオーガという地面を掘る機械を使って、建物の地下部分をつくるための準備をしています。(令和4年4月5日撮影)

令和4年4月29日撮影

桜の季節です。工事エリア右奥の工事が進んでいるのがわかります。ここは機械室になります。(令和4年4月29日撮影)

Zooむイン工事:杭工事編

令和4年3月に、建物の基礎となる杭の工事を行いました。

やわらかい地面の上に建物を建てても傾いてしまうため、杭が地面の中の硬い層と建物とをつなぐ役割をします。最終的に見えなくなってしまう部分ですが、とても大事な工事です。

杭の搬入

杭が搬入されました。長さは13~15m、太さは40㎝~80㎝あります。

確認中

現場に届いた杭が設計どおりの杭か、1本1本関係者で確認します。

杭を地面の中に埋めていきます

パイルドライバという大きな機械を使って杭を地面の中に埋めていきます。

全部で43本の杭を地面の中に埋めました。この杭がこれから何十年ものあいだ建物を支えます。

Zooむイン工事:アースチューブ編

(仮称)オランウータン館は、建築工事、機械工事、電気工事の3つの工事により建設されています。

機械工事の内容としては、衛生設備(水道や排水設備など)、暖房設備、空調・換気設備、人工降雨設備、ろ過設備などの工事があります。

今回は、新施設の建物の下に埋め込まれて設置されるため、来園者の方々にはほぼ気づかれることはないのですが、省エネルギーのために役立つ設備「アースチューブ」についてご紹介します。

アースチューブ

アースチューブは、外気を建物の中に直接導入するのではなく、地中に埋めたパイプに送風し、土中で熱交換した空気を空調・換気に利用する自然エネルギー利用のシンプルなシステムです。

地中温度は、外気温度に比べて、夏は低く、冬は高く、深いところでは1年を通しほぼ一定の温度となるため、建物に導入する外気を、地中に埋めたアースチューブに通すことで、地中熱と熱交換が行われ、冷却や加熱を行うことができます。

アースチューブ アースチューブ

アースチューブの配管は、外側はギザギザに(表面積を大きく)することで地中と熱交換しやすく、内側は平滑で発生する結露水が流れやすくなっています。

アースチューブ設置 アースチューブ設置

新施設においては、直径35cmのアースチューブを51m×2列、地面から2.5m下に設置しています。

このアースチューブにより、空調設備に導入される空気が外気より夏は涼しく、冬は暖かくなるため、冷暖房に必要となるエネルギーを削減することができるのです。(シミュレーション上は、年間131,971MJのエネルギーの削減を想定)

アースチューブ

SDGsの目標7のターゲット「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を実現するため、アースチューブにより、地熱という再生可能エネルギーを利用し、雪国札幌においてオランウータンが暮らすボルネオ島を感じることできる環境を整えていきます。

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このページについてのお問い合わせ

札幌市円山動物園

〒064-0959 札幌市中央区宮ヶ丘3番地1

電話番号:011-621-1426

ファクス番号:011-621-1428