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更新日:2024年4月10日

「オランウータンとボルネオの森」2024年5月下旬オープン!

2023年10月末に完成しました、2024年5月下旬にオープンを予定しています。

 

第1章 基本計画・設計

(1)オランウータンについて

オランウータン

ヒト科に分類される大型類人猿の中で唯一、私たちと同じアジアに生息します。

樹上性の哺乳類では最大で、地面に降りることはほとんどなく寝る時も高い木の上に枝葉を組んだベッドを作って休みます。

単独性で群れを作らず、複数で見られるのは母親と7、8才頃までの仔の親仔だけです。オランウータンの仔育ては母親のみで行い、その期間はヒトの次に長いと言われます。愛情深さとともに、高い知能と思慮深さを持つのがオランウータンです。

そんな彼らの生息地の一つであるボルネオ島は「生物多様性の宝庫」と評されるほど、多種多様な動植物が生息し、お互いに絶妙なバランスを保つことで豊かな自然環境を形作っています。

 (2)なぜ今回の工事を行う必要があったのか

旧類人猿館

円山動物園でオランウータンが暮らしていた「類人猿館」は1977年に建てられました。

当初は、オランウータン、チンパンジー、ゴリラ、テナガザルが暮らし、類人猿どうしの比較を通して種間の類似点や相違点について来園者にお伝えすることを目的としていました。

旧類人猿館

動物園が、飼育動物の肉体的、精神的な状態(動物福祉)をより良くしていくことに力を注ぐ中で、2000年にチンパンジーを新しい施設に移動、2004年には単独飼育となっていたゴリラを野生本来の群れの暮らしに戻すため京都市動物園に移動し、類人猿館に最後に残ったのがオランウータンでした。

以降も2008年に屋外放飼場の緑化と立体化を実現するなど、オランウータンの生態に則した飼育とそれを伝える展示に力を入れてきました。

このような経過をたどりつつ、築後40年が過ぎ、施設の老朽化も進んだことから、オランウータンの動物福祉のさらなる向上と、多くの来園者の方に東南アジア熱帯雨林の環境や生物多様性の重要さを実感していただくことを目的として新施設の建設が決まりました。

 (3)オランウータンが暮らす新施設を貫く三原理

  1. 動物福祉へのできうる限りの配慮ができる施設
  2. ボルネオの生物多様性を「知ること」「感じること」ができ、生命の営みを感じられる施設 
  3. SDGs―持続可能な開発目標― を動物園の視点から考えられる施設

動物を取り巻く飼育環境に完成はなく、適宜適切に変化させる必要があると考えています。その時々で必要な変化を取り入れていくことで、月日が経つにつれ「最良の形」となることを目指します。

完成図(予定)

 
外観アイレベル 外観鳥
内観放飼場側

新施設の床面積は、旧施設のおよそ3倍となる約1,300平方メートルとなります。

屋内展示場は約200平方メートルから100平方メートルの大小3面を用意し、オランウータンが利用可能な空間の高さは旧施設の約2倍となる最高8mとなります。

夜間を含めバックヤードで過ごす時間が長いことから、旧施設の屋内展示場と同程度の広さの非公開サブパドックを確保するとともに、健康管理のためのトレーニング室、検疫室なども備えています。

屋内展示場には、多くの擬木や擬蔦などを設置するとともに、常に自然光が入り、熱帯性植物が自生する環境を目指します。樹の上での生活を基本とするオランウータンが、木々の間を長い腕と対向性(足指が手のように長くものを掴むことが可能)のある足で渡るという本来の能力や行動を発現しながら、生き生きと暮らすことができるよう工夫しています。

オランウータンが棲む森の多様な生態系を再現すべく、昆虫や魚、両生類や爬虫類、鳥なども飼育できるようにするなど、良好な動物福祉に配慮した施設を目指します。

 (4)新施設の設計について

動物施設における動物専門員の毎日の仕事の基本は、「観察、記録」・「給餌」・「清掃」です。

それに加え、「教育的ガイド」、「掲示・展示物の製作」、「動物福祉の向上」、「調査・研究」や「保全活動」など様々な業務を行っています。

動物施設は、ひとつひとつがオンリーワンの施設であり、動物種による違いや、飼育頭数、年齢、個体による変化などにも対応できることが求められ、動物専門員が様々な業務を効率的に行うことができるようにするため、非常に難度の高い設計となります。

動物施設の設計業務は、本市都市局が担当しています。今回、オランウータンの新施設の設計業務が始まってすぐに、動物専門員の仕事とその動きを理解してもらうために、都市局と設計業務受託業者の担当者には、類人猿館において給餌や清掃などのオランウータン飼育体験を行ってもらいました。また、円山動物園のその他の動物施設を案内し、良い箇所や改善した方がいい箇所などについて、現物を確認しながら説明しました。

新施設が、市民や動物だけでなく動物園の職員にとっても、世界に誇れる素晴らしい施設だと想い続けてもらえるように、以下のポイントに注意して設計を行いました。

建築設計

1.動物を観察しやすいワイヤーメッシュの使用について検討すること。

2.床面の水勾配(清掃時間・衛生面に影響)をしっかりつけること。

3.キーパー通路は、動物の逸走確認等を行いやすい構造とすること。

4.屋内放飼場上部の空間で、給餌、エンリッチメント作業、設備メンテナンス等を行えるようにすること。職員の安全対策についても配慮すること。

5.ガラスについては動植物に必要な紫外線を把握した上で選定すること。

6.動物施設への光の入り方等を入念に検討すること。

7.オランウータンはボルトを外すことができること等を加味して計画すること。

8.防虫対策について考慮すること。

設備設計

共通事項

1.メンテナンス性を考慮した配置とすること。
2.メンテナンスコストを意識し、汎用性の高いものを選定すること。
3.設備の操作場所は、動物専門員・設備管理者・清掃業者・来園者等の動線を考慮し、配置すること。
4.オランウータンはボルトを外すことができること等を加味して計画すること。
5.防虫対策(空調・排水)について考慮すること。

空調設備

1.換気量は、過大にならないように留意し、熱交換を行うなど省エネ設備を導入すること。
2.換気のゾーニングは、動物への感染症対策や臭気に配慮すること。
3.屋内放飼場は自然給排気できるようにすること。

暖房設備

1.動物に対するホットスポットを意識して暖房設備を配置すること。
2.24時間施設なので、施設全体で蓄熱し、空間を温めるよう配慮すること。
3.熱帯地方の動物であるため、ボイラーは予備機の設置を基本とすること。

給水設備

1.降雨装置は、ノズルや水温等についても考慮し、選定すること。

排水設備

1.動物側の排水口は、残滓に枝や葉、チップ等があること等を加味して計画すること。
2.排水桝は管理側に設けること。一日当たりの廃棄物量を把握した上で、清掃頻度に見合った桝のサイズ(深さを重視)とすること。

照明設備

1.動物を観察しやすいように、観客側より動物側を明るくすること。

カメラ設備や計装設備

1.カメラ設備や計装設備の利用目的を確認した上で、機種選定や設置位置、調整方法等を決めること。

このページについてのお問い合わせ

札幌市円山動物園

〒064-0959 札幌市中央区宮ケ丘3番地1

電話番号:011-621-1426

ファクス番号:011-621-1428