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更新日:2011年2月26日

動物園での取組み

画像:コウノトリ 野生生物の生息数が急速に減少している現在、種の保存は動物園にとって非常に重要な役割です。

 動物園が種の保存活動として行なっていることとしては、まず絶滅のおそれのある希少な動物(希少種を)を増やすことです。希少動物の飼育下繁殖では累代繁殖を重ねていくと近親交配が起こり、遺伝的な多様性が失われて繁殖力の低下や病弱な個体が出現することが多くなります。近親交配による劣化を防ぐために、血統登録による個体の把握とそれに基づく繁殖計画の策定と遂行が必要であり、国内(種によっては世界)の動物園で血統登録と個体群管理が行われています。

 動物園間の動物の貸し借りで血統的に離れた個体のペアリングにより繁殖を目指します。また、繁殖するためには動物が健康で心地よく毎日を過ごすことが必要ですが、これを実現するため飼育環境や餌の工夫などの飼育技術の研鑽や動物園間の情報交換も重要なことです。動物の生息地がどんどん減少し、環境が悪化している今動物園は「ノアの箱舟」の役目も担っているのです。

 そして最終的な目標は飼育下で繁殖した動物を野生にかえすことです。欧米の動物園では野生下で絶滅したヨーロッパバイソンやアラビアオリックスを飼育下で繁殖し、野生復帰させた例が良く知られています。日本でも野生のコウノトリを全て捕獲し、兵庫県のコウノトリの郷公園で繁殖させ、放鳥した例があります。
 しかし、飼育下で繁殖させた動物を野性に戻すには、たくさんの課題があります。飼育下では何もしなくても餌を与えられ、限られた空間で生活しているため筋力も不足していることもあり、野生に戻されても自力で生きて行けません。自分で餌をとったり、危険を避ける訓練が必要です。
 またもともと野生には存在しない病原菌を持ち込む可能性もあります。中でも一番問題なのは、生息地の環境が改善されておらず生息に適さない場合は、せっかく戻しても生きて行けないことになります。どんどん失われている希少な動物たちの生息地を取り戻し、環境を改善する必要があるのです。

 動物園の役割は、飼育している動物を通じて、彼らの生息地の現状を知ってもらい、環境の悪化を食い止め、更には生息地を取り戻すために私達にできることは何かを考えるきっかけを与えることです。それが、動物園が行う種の保存のための活動のうち最も重要な事だと思います。

(平成20年3月18日・種の保存担当部長 大谷倫子)

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