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2007年11月16日、雪のちらつく中で午睡するララ
現在とても落ち着いている様子です
ララの出産準備
円山動物園のホッキョクグマ・オスの「デナリ」とメスの「ララ」はとても相性の良いペアで、これまでにララは5回の出産を経験しています。
2000年、2001年、2002年の出産時には環境の整備が不十分だったためか育児に失敗してしまったものの、2003年には「ツヨシ」、2005年には「ピリカ」を立派に産み育て、娘達はそれぞれ釧路市動物園、おびひろ動物園へ転出しました。
ピリカが帯広へ旅立った約1ヶ月後、それまで別居していたデナリとララを同居させると、2頭はすぐに交尾に至りました。9月には妊娠・出産に備えて再び別居させ、これまでララの様子を見守ってきました。
そして2007年11月18日日曜日、ララが出産の兆候を見せたため、産室に収容し、今後数ヶ月の間ご覧いただくことができなくなりました。
やや唐突な感があるかとは思いますが、産室に収容する日にちは人間が決められることではないので、ララの様子をうかがってそれに合わせるよりほかないのです。
今後ララの様子を見て、おそらく今月末には世界の熊館全体も閉鎖し、職員の立ち入りも制限します。
他の2頭のホッキョクグマや、ヒマラヤグマ、ヒグマ、マレーグマ、ナマケグマ、アメリカクロクマ達にも来春まで会えなくなります。ご了承下さい。
後は極力刺激を与えず、産室に設置したカメラを通じて、ララの様子を見守るほかありません。
また、今のララはいかにも妊婦さんらしい体つきに見えるのですが、大変な出産と育児に備えてエサの量を増やしてきたためにふっくらしているのであって、実のところお腹に赤ちゃんがいるか否かは体型からは判断できません。
なにしろホッキョクグマの赤ちゃんはとても小さく、ツヨシもピリカも生まれたときには推定600gほどの体重でした。
そのため妊娠に関しては、交尾の状況や産室の様子を気にする等のララの行動から判断しています。
また、例年ララは12月中旬に出産してきましたが、今年は交尾時期がやや早かったため、11月中に産まれる可能性もあります。
ですがクマ類は、母胎の栄養状態によって受精卵が胚の状態で成長を休止させる「着床遅延」という生理学的なメカニズムを有しており、出産時期は未定です。
2005年11月20日、ピリカがお腹に居た頃のいたころのララ
世界の熊館の閉鎖直前です
ホッキョクグマの繁殖は難しい!
野生のホッキョクグマのメスは、雪原に作った巣穴に単独で篭り、暗く静かな環境で出産します。生後三ヶ月程度を経て子供が巣穴から出られるようになるまでは、メスは食事をすることもなく育児に専念します。
飼育下のホッキョクグマが安心して子供を産み育てるためには、出来る限り野生に近い環境を用意する必要があります。
ホッキョクグマは非常に繊細な生き物なので、飼育下では騒音や他の動物・人間の動向などがストレスになり、出産後に育児を放棄してしまうことが多いのです。
そのため、ララをデナリと別居させた上(オスは子供を殺してしまうのです)、産室を作って収容し、こうしてお客様の観覧も制限する必要があります。
ホッキョクグマの繁殖は全国的に成功率がとても低く、オスがメスに敵わず交尾に至れなかったり、メスがストレスから子供を育てられなかったりといった例が多々あります。
実際、2000年以降に自然繁殖に成功したのは当園だけなのです。
デナリとララの仲が良いこと、うまく交尾や出産・育児のための環境を整えられたこと、ララが良い母親としての資質をそなえていたこと・・・様々な要因があってようやく、円山動物園はツヨシとピリカの自然繁殖の成功に至ることができました。
ララとツヨシ
じゃれついて変なポーズになりました
ララとピリカ
母子で見つめあい
でもやっぱり赤ちゃんが待ち遠しい。
このように繁殖の難しい動物ですから、2度自然繁殖に成功した実績があっても、今回もうまくいくとはいえないのです。
けれども期待は持てます。
今年の繁殖が成功したならば、2008年3月末頃には可愛い赤ちゃんを公開できることでしょう。
著しい環境の悪化により、ホッキョクグマはもうすぐ地球上からその姿を消してしまうかもしれません。
ですから動物園がこの美しい生き物の種の保存に尽力する必要があるのです。
ララが元気な赤ちゃんを生んでくれることと、他の施設でもホッキョクグマの繁殖が成功することを願ってやみません。
(2007年11月19日・記)
<2019年8月23日リンク修正>
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