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更新日:2011年2月28日

学会発表抄録(2005年)

日本動物園水族館協会北海道ブロック秋季飼育技術者研究会

「トナカイの人工保育について」

弓山 良

 当園では昭和48年よりトナカイを飼育展示している。飼育頭数は平成6年の21頭を最高に、近年は8頭から10頭前後で推移している。過去の繁殖実績は平成17年度3月現在、111件111頭で、このうち平成2年、4年、5年、6年と4回の人工哺育を試みているが、いずれも成功に至っていなかった。
 本年5月22日の昼過ぎに出産を確認したが、産まれた雌個体はやや小さめで元気も無かった。同日夕方過ぎまで観察を続けたが、哺乳する様子もなく1度も立ち上がることができず衰弱が見られたため、母親から取り上げ人工哺育を行うこととした。
 今回、過去のデータをもとに人工哺育を行い、5ヶ月余りを経過して順調に発育しているので、その概要を報告する。

 

「ニホンザルの精管切除術の再実施について」

山本秀明

 本園のサル山は昭和57年のオープン当初、適正頭数と思われる61頭から始まった。その後、出産等により、昭和60年に100頭を超えてから、他園への譲渡等により過密状態を解消すべく対応してきた。しかし、根本的な解決にはならず、繁殖を制限するために何らかの措置を施す必要性がでてきた。そこで、繁殖制限を目的として、当時3歳以上のオスを対象に平成11年に35頭(うち3頭は去勢)、平成12年に1頭、平成13年に14頭精管切除術を実施した。その結果、平成12年には出産数が0頭になり、効果があったように思われたが、翌年からは再び出産する個体が出てくるようになった。このことから、一度切除した精管が、成長とともに、再疎通した可能性が示唆された。
 また、妊娠可能なメスに対しても、例年インプラントの埋め込みによる避妊法を実施しているが、他個体による引き抜きやインプラントの脱落等もあり、期待される効果がでていないのが現状である。
 そこで、今回、過去に一度精管切除術を施した個体の精管の繋がり方を確認し、再疎通することがないよう若干手法を変えて再度切除術を実施することとした。組織との癒着が激しく、確認できなかった個体もあったが、18頭のオスのうち、精管が繋がっていた個体は7頭であった。
 今回、事情により全ての対象のオスに精管切除術を施すことができなかったが、来年、残りのオスに再切除術を実施することで効果ある繁殖抑制を期待している。

 

 

「ワラビーの散歩訓練について」

 

川野弘幸

 タスマニア館は、平成元年に北海道観光連盟とオーストラリア・タスマニア州観光協会の姉妹提携を記念し、タスマニア産動物の寄贈を受けて建設した施設である。当初15種37点の動物を飼育展示していたが、平成8年最後のタスマニアデビルの死亡後はタスマニア州との交流が途絶え、死亡した動物を補充できない状況となり、現在8種18点まで飼育展示動物数が減少し、館内は空きマスが目立つ状況である。
 このため、タスマニア館の新たな魅力作りとして、ワアラビーを間近で観察し、餌やりやふれあいを通して、動物に対する理解を深めてもらうために、「ワラビーの散歩訓練」を今年4月から開始した。
 担当者の出勤日に午後1回約30分間、タスマニア館観覧通路に、ワラビーを放し、周りを入園者が取り囲むようにしてふれあい体験を行っている。
 ワラビーにふれることができたり、餌を与えることができることから、入園者には非常に好評である。しかしながら、カンガルー、ワラビーは人に対して警戒心が強く入園者の前に連れて行くには、一定程度の馴致が必要であり、音に対する過剰反応をなくさなくてはならない。
 その他入園者と接することになるため、風邪や人畜共通の病気などの感染に注意を要する。また、観覧通路が広くないので人数制限(約30名)することと、その間他の入園者が入館できないなどの問題点もあり、今後検討が必要である。

 

 

「チンパンジー館の現在の飼育状況について」

 

祐川 猛

 チンパンジー館は開園50周年記念総合整備事業の一環として、チンパンジーたちの生き生きとした生態を観察できる自然生態的施設として、平成12年9月に完成した。野生のチンパンジーは、一日の約半分が樹上生活であることを考え、高いジャングルジムなどを設置して、類人猿の知能や子育てなど集団生活における行動を観察できる。施設完成後今年で5年を経過したが、建物施設のハード面に加えて、ソフト面でもチンパンジーたちに、より一層快適な環境を提供し、同時に観覧者にも高い展示効果を生み出せるように各種の工夫を行っている。
 チンパンジー館では現在9頭のチンパンジーを飼育展示している。大人のオス1頭、大人のメス5頭、4歳のオス2頭、本年9月4日生まれのメス1頭、を飼育しているが、これらの飼育管理上の工夫を中心に飼育状況を報告する。


日本動物園水族館協会北海道ブロック春季飼育技術者研究会

「昆虫館における展示内容の工夫について」

松本雅人

 当園の昆虫館は1974年に開館されたが、老朽化に伴い飼育展示している昆虫の種も減少し、あまり魅力のない施設となっている。
 そこで、最も身近な昆虫を通し、生態系を知り、環境教育の一端を担うべく魅力ある展示にするため工夫した。
 飛翔室を沖縄西表島をイメージして、周年チョウとバッタを見ることができる空間作りを行った。動物園ボランティアの協力を得ながら、マダラチョウの仲間を人工飼料による累代飼育に成功し、2004年9月からは、環境教育の一環として、外国産カブト・クワガタの累代飼育を実施し、外来種による日本産昆虫への影響に関するメッセージを発信した。その結果、入園者に大変人気のある施設となった。
 現在、外国産カブト・クワガタの繁殖も順調であり、飼育展示している種も43種となっている。また、本年からホタルの累代飼育を開始する予定である。

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