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札幌の大気汚染の問題は、常に市民の生活と密接な関係にありました。昭和30年代の主な燃料は石炭であり、冬期間の札幌の空は、石炭が燃えるときにでてくる「ばいじん」が浮遊し、雪が黒くなる程でした。(写真1)
しかし、時代の移り変わりとともに、主力のエネルギー源が石炭から石油に替わり、汚染物質も「ばいじん」に替わって「硫黄酸化物」が問題となりました。昭和40年代頃は、使用されていた重油の品質が悪く、硫黄分を多く含んでいたため、燃焼時に硫黄分は空気中の酸素と結合して、「硫黄酸化物」として煙突から排出されていたのです。(写真2)
昭和30年頃の札幌の空(写真1)
煙突から出るばい煙(写真2)
昭和40年代後半から、硫黄分の比較的少ないA重油の割合が増え、硫黄分の多いB重油やC重油はほとんど使われなくなりました。硫黄酸化物の問題は、石油精製の技術や設備が改善されたことにより、硫黄分をあまり含まない品質の良い重油や、硫黄分をほとんど含まない灯油・ガスなどの燃料が使われるようになり、徐々に改善されていきました。
【A重油】 重油は、粘度や硫黄分含有量のちがいによって、A重油(JIS1種)、B重油(JIS2種)、C重油(JIS3種)に分類されている。A重油の硫黄分含有率は2%以下と規定されており、B重油・C重油に比べると、燃焼時の硫黄酸化物の発生量は少なくなる。現在では、さらに硫黄分の少ない灯油(硫黄分0.03%程度)やガス(硫黄分なし)を使用することが望ましい。 |
昭和50年代になると、自動車の雪道でのスリップを防止するためにスパイクタイヤが使われるようになり、これが道路のアスファルトを削って発生する「車粉」が大きな社会問題となりました。車粉の問題は、スタッドレスタイヤの登場やスパイクタイヤの使用が規制されたことなどにより、解決することができました。
近年では、二酸化窒素が問題となっています。これは、自動車の排気ガスなどに含まれ、自動車台数の増加や、それに伴う交通渋滞などが原因となっていると考えられています。
また、家庭用の小型暖房やガスレンジなどから排出される二酸化窒素の量も少なくなく、これらの小さな発生源(群小発生源)の対策も重要となってきています。
札幌は、南西部を原生林、北西部を石狩湾に囲まれているため、他の都市からの大気汚染物質の流入などが比較的少ないと考えられています。
また、石狩湾からの海風や石狩湾への陸風が吹き、発生した汚染物質は比較的拡散しやすい傾向にあります。
一方、寒冷な気候のため、冬期間に暖房用の燃料消費が増えることから、冬期間の方が夏期間に比べ、大気環境が悪化する傾向が見られます。
特に空気の対流を妨げ、汚染物質の拡散を抑制する「逆転層」が発生すると大気中の汚染物質が拡散しづらくなることから、このような場合には一時的に大気の汚染状況がひどくなる場合もあります。
【逆転層】 気温逆転層のこと。大気の温度は普通地面に近いほど高く、上空になるほど低い。しかし、その逆に地表付近の温度よりも高い温度の層が上空に出来ることがあり、その層を逆転層と呼んでいる。 この層が出来ると、地表付近の空気は停滞し、大気の拡散力が弱まるため、空気中のばい煙や有毒ガスなどが低く漂い、汚染がひどくなる場合がある。 |
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