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更新日:2024年4月26日

SAPPORO未来デザイントーク 冬も夏も大事な住宅の“断熱”

インタビュイー

山本 亜耕(やまもと あこう)
環境建築家

札幌市生まれ。1998年、山本亜耕建築設計事務所開設。2020年、株式会社化。
2009年より300ミリ断熱をはじめ、自然エネルギーを取り入れた家づくりに取り組む。
(公社)日本建築家協会 登録建築家。

動画バージョン

※本動画は、令和5年度に実施した、さっぽろ 省エネ家電で家計を応援キャンペーン事業で作成したコラム動画です。補助金情報など古い情報が含まれている場合がありますのでご容赦ください。

文章バージョン

エネルギー少なく、快適に暮らすために

わたしが住宅の設計で考えているのは、地域の材料を使い、地域の技術を生かして、北海道に住む方々が夏も冬も快適に暮らせるように、断熱がしっかりと効いた室内環境に整えることです。そして、そのひとつとして取り組んでいるのが300ミリ断熱の戸建て住宅です。

高断熱戸建住宅

●断熱厚を通常の約3倍にした戸建て住宅
グラスウールという断熱材を使う場合、その厚みは一般の住宅で12センチくらいのことが多いのですが、わたしが設計する新築の戸建て住宅は約3倍の30センチ(300ミリ)です。断熱厚12センチとの差を着衣量でいうと、30センチのほうが1枚薄着にできて、足も裸足で暮らせるということになります。

そのほか、省エネ効果がより高く、夏も冬も外気温により左右されにくく、とても快適に暮らせるという特徴があります。

高断熱戸建住宅の内装

●断熱+外付けブラインドで、夏はエアコン1台の暮らし
断熱は冬ばかりでなく、夏にも大きな効果を示します。断熱をきちんと整えた住宅ではエアコン1台で全館冷房が可能です。あわせて、窓の外側にブラインドを付けると日射熱が室内に入るのを防ぐことができ、さらに効果的です。

ブラインドというと室内側に付けるイメージが強いでしょうが、そうすると窓ガラスを透過した太陽の光がブラインドに当たって熱に変わり、室内を暑くしてしまうため、外付けのほうがいいのです。

家計に優しく、災害時には“小さな避難所”に

●長く使う分、光熱費の削減効果大
わたしが設計した断熱厚30センチの家と、同じ規模の一般的な断熱厚12センチの家で光熱費を比較すると、暮らし方にもよりますが、半分から3分の1くらいに抑えられます。特に住宅は長く住むものなので、削減できた光熱費×30年35年と考えると非常に大きな差になります。

●冬の災害時の在宅避難にも活用できる室内環境
例えば、今回インタビュー会場としてお借りした30センチ断熱のお宅は約27坪で、家全体で必要な暖房の熱量は大体カセットコンロ1台分。そのくらいで家の中が全部暖房できるように設計しています。ですから、仮にブラックアウトになってご近所の方もこの家に避難したとすると、人間1人が60ワットの暖房機になるので、あとはカセットコンロでラーメンか鍋でもしていただければ、通常と同じように暖が取れる環境にしています。

ふだんは省エネで家計に優しく、非常時にはインフラなどが復旧するまで安心して自宅で過ごせる、そんな家を増やしていきたいと思って住宅設計を行っています。

身近にある「夏も冬も快適に暮らす」という選択肢

●日本一厳しい札幌市の省エネ住宅基準
省エネ基準には、これまでは努力目標とされ、2025年に義務化される国の基準がありますが、実は札幌市には「札幌版次世代住宅基準」といって、全国一厳しい戸建ての省エネ基準があります。1973年と79年の石油危機で灯油の利用が将来的に難しくなってくると考えられたことと、非常に寒い地域にある200万都市で温室効果ガスの排出量も非常に大きいことから、札幌市独自の基準が必要になったと聞いています。

札幌版次世代住宅基準

●“巨大な家電”ともいえる住宅に、もっと省エネの目を向けて
北海道では、1世帯が1年間に使うエネルギーの約50〜60%が暖房に使われています。

一世帯あたりの用途別エネルギー消費量

住宅は言い換えれば、照明やエアコン、暖房などさまざまな設備の付いた“巨大な家電”です。エアコンや暖房など単体の設備は省エネのことなどもわかりやすいのですが、住宅も同じように、大元の部分である床・壁・天井の断熱に着目していただくことで賢い選択につながると思います。厚さ30センチ・20センチとはいかないまでも断熱のことを意識に入れていただくと、暖房などの省エネな設備がよりエネルギー少なく使えるなど、先々の暮らしがラクになってくると思います。

●ますます高まる断熱のニーズ
2025年には国によって省エネ基準の適合義務化が始まり、全国の住宅で断熱が義務化されます。断熱の設計や施工の仕方など、そのニーズはすでにかなり高まってきています。

国の省エネルギー住宅基準

北海道には全国に誇れる優れた断熱技術があり、夏も冬も快適に暮らせる住環境をつくる技術があります。しかし、そのことを知らない地元の方がまだ多いのも事実です。地元のみなさんには、ご自分の家を考える際に「夏も冬も快適に暮らす」という選択肢があること、そして全国の人たちにとってその住環境はとても魅力的であることを、もっと知っていただきたいと思っています。

このページについてのお問い合わせ

札幌市環境局環境都市推進部環境政策課

〒060-8611 札幌市中央区北1条西2丁目 札幌市役所本庁舎12階

電話番号:011-211-2877

ファクス番号:011-218-5108