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更新日:2020年12月10日

第2部事例紹介「円山動物園の野生動物の調査及び研究」

講演者

加藤 修(円山動物園長)

講演記録

 

(※読みやすいように整理しているため、実際の発言とは一部異なります。)

スライド1 円山動物園の野生動物の調査及び研究

こんにちは。園長の加藤です。本日は、ありがとうございます。
つい立てがあるのですが、高さが足りないので、ガッチャマンみたいなフェースシールドをつけたまましゃべりたいと思います。
今日は、「円山動物園の野生動物の調査研究」についてお話をいたします。
20分の時間の中でたくさんお話したいことがあるので、少し早口になるかもしれませんが、ご容赦ください。

スライド2 野生動物の保全、生物多様性の保全

まず、野生動物の保全、生物多様性の保全です。
動物の生息地の環境を整えること、また、絶滅の恐れのある動物を保護し、繁殖させて数を増やすこと、その動物を戻して定着をさせる、これが保全の基本です。
先ほどの佐渡友先生の話にもありましたけれども、動物園でなぜ野生動物の保全をしなければいけないのかです。また、動物園に限らず、なぜ生物に対しての保全が必要なのかについてお話しします。

スライド3 そもそも、なぜ生物多様性を保全しなければならないのか?

先ほどもありましたけれども、生物の多様性の保全が損なわれるということは、人間がこれまで環境から受けてきた生態系サービスが損なわれるということがあります。地球上の水環境や空気の環境などは多くの動物がいればいるほど安定すると言われていまして、その中で動物が減っていくということは

スライド4 だから、守らなければならない

つまり、人間の生活に影響が出るということなのです。ですから、単に生物が少なくなるということではなく、まさしく人間の問題となるということでして、だから、守らなければいけないということです。

スライド5 しかし、野生動物についてはわかっていないことが多い

しかし、野生動物については分かっていないことがたくさんあります。というより、ほとんど分かっていないと言っていいと思います。

スライド6 「保全」をするためには

そこで、保全するために調査し、研究することが不可欠になっていくわけで、動物園が調査研究しているということです。
野生の動物を調査し、研究するのはなかなか難しいです。どこにいるかも分からないし、近くに行けるわけでもないし、常に見るわけにもいきません。でも、動物園にはそういった野生動物が飼育展示されているわけですから、そこにいる動物たちを調査研究するということは野生の状態よりもできるわけです。だからこそ、動物園は調査研究の場所として非常に重要だということです。

スライド7、8 野生動物の保全のための調査研究

では、野生動物の保全のための調査研究にはどういうことがあるのかです。
一つには、生息地の調査があります。生息地がどうなっているかを調べます。どういうところで暮らし、どういう暮らしをしているのかを見るのです。また、動物の生理や生態をしっかり把握しなければいけません。
これは動物園の話になりますけれども、動物福祉を含む飼育技術も調査研究しないと動物本来の行動が発現されないので、調査研究が進みません。
また、健康管理だとか治療方法も研究しなければいけませんし、最終的には種の保存となるわけで、飼育技術についても研究していく必要があります。
大まかに言うとこうした五つくらいの分野について調査研究を進めていくことが大事だということです。

スライド9、10 円山動物園の取組

ここからは、野生動物の保全をしていくための調査研究について、今、円山動物園で取り組んでいるものの一部をご紹介します。
限られた時間ではありますが、職員もいろいろと頑張っているので、このように欲張ってみました。9項目あります。時間内にしゃべれるかどうかは分かりませんが、やってみたいと思います。

スライド11~18 AIを用いた行動分析

まず、AIを用いた行動分析です。
一部の新聞等でも報道されたので、ご存じの方がいるかもしれませんけれども、今、円山動物園ではAIを使って動物の行動を分析しようとしています。しかも、動物園だけではなく、北海道大学工学部や産業振興財団と協力をしながら研究しています。今年はNTTにも入っていただいて、データを高速でやり取りすることにも取り組んでおります。
おさらいです。
AIとは何かというと、これまで人間しかできなかった知的な行為に関し、どのような手順で、どのようなデータを準備すれば、機械的に実験できるかを研究することを言います。
それでは、これを使って何をしているのかです。
最初にAIを使って何かをやってみませんかというお話をいただいたとき、我々動物園としてはAIで何ができるのかが分かりませんでした。また、大学の研究者側も動物園にはどういうニーズがあるのか分からなかったのです。だから、まず、AIでどんなことができるかを確かめるため、最初に手がけたのがチンパンジーの個体認識でした。
顔や体の様子をAIに覚えさせ、円山動物園のチンパンジーの写真を見せ、これはガチャだ、これはチャコだとコンピューターに分析をさせてみたのです。そうすると、9割以上の確率でコンピューターは認識してくれました。
面白いことに、我々がちゃんと教えれば、コンピューターは、顔だけではなく、お尻を見ても分かるようになるのです。我々でも迷うのと同じようにコンピューターも迷うということも分かり、非常に面白かったです。
なぜそれをやったかですが、最終的に行動分析をするためにはその個体を認識しなければいけないからです。それでどれぐらい認識できるかを確かめたわけですが、認識できることが分かったので、いろいろなことができそうだということが何となく分かってきました。そして、次はどういうことをやるかとなったわけですが、その動物がどういう行動をしているかを分析しようとしたわけです。
我々と大学との共通認識ですが、AIについて、我々でも分かったのは、AIは人間ができないことはできない、でも、人間ができることは必ずできるということでした。そして、人間にできることをAIでは簡単にできるということも分かりました。
そこで、今手がけていることですが、ホッキョクグマと象の行動分析です。
動物の行動については、エソグラムというものがあって、今、この動物は寝ているのだ、ご飯を食べているのだ、何をしているのだというふうに動物種ごとに行動が分類されているものがいます。
ここで、AIを使う前は動物の行動をどう把握してきたかをご紹介します。
当然かもしれませんが、飼育係をはじめ、我々が自分の目で行動を把握します。今、円山動物園では、ほとんどの動物舎に、24時間、姿を映せる定点カメラをつけていますから、例えば、足を引きずっているなと分かれば、その前の行動をビデオで確認します。ビデオを見て確認すると言いましたが、本当にアナログです。早送りしながらずっと見るのです。そして、何かがあると、速度を戻して見るのです。
でも、それは毎日できません。時間には限界がありますから、行動の把握といっても限界が出てくるわけです。ただ、多くの動物園では、ビデオカメラがあったとしても、早送りしながら確認してきたのです。
そこで、AIを使い、それをどうするかです。
当然、飼育係の重要な仕事の一つに動物の行動把握というものはあります。ですから、飼育係がやっている全てのことをコンピューターに任せるということではありません。飼育係のやっているものを補うことをコンピューターにもやらせるということです。そのため、飼育員は日中の行動観察は当たり前にやっていきます。
しかし、AIには、24時間、観察をしてもらい、分析をしてもらうわけです。つまり、この動物はこうなっているときは寝ているときです、こうなっているときは食べているときですということをしっかりと覚えさせれば、コンピューターは、見てくれるだけではなく、この時間は何をしていたかを分析してくれるわけです。そして、例えば、違う行動を取っていたら警告が出まして、そこの場面をビデオで確認するのです。
最終的には、例えば、朝、飼育係が動物舎に行ってボタンを押すと、昨日の24時間の行動が紙になって出せるようになれば、それを見て、その日の注目する時間を決めたり、何か違う行動をしていると思ったら、ビデオで確認したりできるようになるかと思いますし、このようになれば、ポイントを絞って見られるので、より密度の高い観察ができるのではないかと思っています。
また、分析結果を使って改善の検討などもできますし、時間の有効活用ができるので、ほかのケアに時間を費やすことができるようにもなります。
つまり、時間帯、季節による行動を正確に把握することができ、最終的には、その動物の本来の行動が把握できるわけですが、こうなりますと、飼育個体だけではなく、野生個体にも応用ができるのではないかと考えています。
例えば、うちのヒグマの行動を分析した結果を用い、今はまちに出てきているヒグマの行動も予測することができるようになるのではないかなと思っています。
また、我々が一番期待しているのは環境エンリッチメントの評価です。環境を変える前の動物の状態を正確に分析するということです。例えば、違う環境をつくったときにどうなるかが把握できれば、やっていることの効果が一目瞭然で分かるわけです。全然効果がないのか、少し効果があるのか、もし効果がないのであれば、ここをこう改善しようということもできてくるわけです。
このように、我々が動物に対してやっていることに対する評価もAIを使うことによって容易にできるようになるのではないかなということで非常に期待しています。今年は象とホッキョクグマをやっていまして、今年で3年目ですが、少しずつ効果が出てくるのではないかなと思っています。

スライド19~26 アジアゾウに関して

次に、アジアゾウに関する調査研究についてです。
アジアゾウは、ワシントン条約、CITESのⅠ類ですから、輸入するためには調査研究あるいは繁殖という目的がないと駄目です。円山動物園での目的は、お子さんをはじめとして、皆さんに見ていただき、地球環境を考えていただくということはあるのですけれども、本来の目的としては、飼育技術の確立をはじめとした個体群維持のための調査研究としております。
その中での調査研究の分野としては、一つに、繁殖や生理研究、象の行動解析、それから、今我々が取り組んでいる新しい飼育法という大きく三つがあります。
一つ目の繁殖や生理について、実際にやっているものについてですが、ふんの中の性ホルモンを分析し、雌の性周期を把握します。また、血液を取って性ホルモンの分析もしています。
雄はまだ性成熟に達していないということもあって、直接的な繁殖までは行きませんけれども、雌個体の性周期を把握しておくことによって妊娠の可能性も把握しやすくなるのかなと思っています。
そのほか、輸送すると、人間も移動するとそうですけれども、ストレスがかかります。そこで、ふんの中のストレスのホルモンも分析しました。そんなに大きく出てはいなかったのですけれども、やっております。
我々には、象を繁殖させ、国内の動物園で飼育し、展示するという目的もあるのですけれども、繁殖が成功したら、ミャンマーの野生の個体群維持に協力するため、ミャンマーに返すということも想定に入れています。そのとき、当然ながら、向こうで食べるものとこちらで食べるものが違うので、そのまま返してしまうと健康に影響が出る可能性があるのです。ですから、今いる象たちがミャンマーにいたときの腸内細菌がどうなっていたのか、そして、日本に来てからの腸内細菌がどうなっていたかということを研究しました。そして、もし向こうに返すとしたら、今日本にいるときの腸内細菌の状況を把握して、向こうにいるときの状況に戻してあげてから戻せば、向こうでの生活もスムーズになるだろうと考えております。
次に、行動解析についてです。
行動解析がなぜ必要かというと、飼育環境の検証に用いるためです。この状況でいいのか、そして、象本来の行動はどういうものかを分析するわけですが、当然、飼育係は目視で解析していますし、大学の協力を得て解析もしています。そのほか、先ほどのAIによる行動分析を象でもやっていこうと思っています。
次に、新しい飼育法についてです。
プロテクテッドコンタクトウォールといって、おり越しに象のケアを行う準間接飼育に取り組んでいますが、これ自体、手法として確立しているものではなく、日本国内でも幾つかの動物園でしか手がけていません。でも、昨今の象の事故などを考えますと、これからこういった手法が進んでいくであろうと思われますし、象にとっても非常にいいのではないかと思っています。
ミャンマーではマフーと言われる象使いが直接乗っかって飼育をしていたわけですけれども、円山ではそういうことがありません。人間はそばに行きません。円山に象が来てからしばらくたってから向こうのマフーも来たのですけれども、これはもう違う象になっているので、我々も近くに行けませんよと言っていました。象にとっては環境が変わってよかったのではないかとは思います。
こういった飼育法が日本国内で広まっていくとすれば、例えば、多摩動物公園など、同じ方法を使っている園館と協力して研究をしていかなければいけないと思っております。
向って右側は、おり越しに象の足のケアをしているところですが、こういう飼育方法の確立のため、我々も研究しながら進める必要があるということです。

スライド27~31 ホッキョクグマに関して

次に、ホッキョクグマについてです。
これは、リラとデナリです。
円山動物園は、皆さんもご存じのとおり、高い繁殖実績があります。何と双子です。ですが、残念ながら、動物園で幾ら繁殖しても野生動物の保護につながっていかないということがあります。
一方、地球温暖化の影響で野生のホッキョクグマは非常に影響を受けています。海氷が凍るのが遅く、また、解けるのが早くなり、アザラシを捕食する期間が短くなることによって餓死する個体が出たり、繁殖に強い影響が出たりもしています。
そこで、円山動物園では、高い繁殖実績があるということもあり、生息地に関わる野生個体の保護に直接的に関わることにしたのです。
それはどういうことかですが、カナダ・マニトバ州のハドソン湾の周囲には非常に多くの野生のホッキョクグマが来ます。そこで、州政府やマニトバ州立大学と連携し、実際に向こうでやっている保全活動に我々も貢献するのです。それは、直接、人が行ってやるというのではなく、お金の面が主です。今、カナダのマニトバと協議を進めて3年目に入りますけれども、まずは調査研究をしようということで話が進んでいて、今年度早々にでも連携協定を結び、具体的な活動に入ろうとしていました。
ところが、新型コロナウイルスが出てきました。向こうでは大学がロックダウンしており、動きが取れなくなっていますし、我々も向こうに渡航することができない状況で、中断はしていますけれども、ホッキョクグマの事業については札幌市の事業として認められているものでありますので、コロナの状況を見ながら少しずつ進めていきたいと思っています。
こういった活動を続けていくことにより、円山動物園に新しい個体がやってくるということも考えられますので、進めていきたいと思っています。

スライド32~35 オランウータンに関して

次に、オランウータンについてです。
レンボーと弟路郎と令斗です。レンボーはインドネシアからお借りしているわけですけれども、昨日かおとといですか、インドネシア大使館の大使が来られ、レンボーを見ていかれました。非常に元気にやっていることを見て、安心して帰っていかれました。
オランウータンに長く幸せに暮らしてもらうため、病気予防ということで、ハズバンダリートレーニングをやっています。これは、動物の協力に基づいて、検査や治療、健康管理を行うものです。例えば、手を出してもらって血液を取る、胸を出してもらって心音を測るということをやっています。従来、大型動物、危険な動物については麻酔をかけて検査や治療をしていましたが、こういったトレーニングを進めることにより、大型で危険な動物も麻酔が要らなくなります。そのため、動物に余分な負担がかかりません。
今、レンボーには、口を開けてもらって口の中の検査をしたり検温をしたり、日頃の健康管理ができるようになっていますし、令斗を妊娠中にはエコー検査をやらせてくれ、妊娠経過の観察をずっと実施できました。さらには、唾液を出してもらい、その中身の分析なんかもさせてくれています。
令斗についてもそうしていきたいと思っています。一時、弟路郎も少し進んでいましたけれども、レンボーが妊娠したことで止まっていました。とはいえ、これも再開されるものと思われます。
オランウータンの腹部エコーを妊娠期間中ずっと取っていたというのは、世界的に本当にないかどうかの確認は取っていませんが、日本国内では初のことではないかなと思っています。

スライド36~38 オオワシに関して

次に、オオワシについてです。
オオワシはまだ絶滅危惧種ではありませんが、環境が変化し、将来的にそうなる可能性があります。絶滅危惧になったとき、数が少なくなっていますので、そこから回復するのは無理なのです。残念ながら、日本国内では、回復した実績のあるコウノトリやトキなんかは、そこの個体ではない個体として復活しています。我々としては、オオワシがそうならないよう、そうなる前に、まず、繁殖技術を確立しようとしています。また、万が一のときの再導入の際の技術を確立しようと考えています。
そこで、専門家の方々とともに研究会を立ち上げたわけであります。しかし、コロナの関係で専門家の方に集まっていただくことがなかなかできなくなっているのですが、まずは普遍的な繁殖技術を確立させようということです。
また、放鳥を行う場合の場所や手法です。
というのは、オオワシをこの辺に放しても駄目なのです。繁殖するのはロシアでして、そこに放してあげなければいけません。でも、本当にそこで放さなければいけないのか、渡りの途中でもいいのか、そういうことも含めて研究し、実際に実験もしながら進めていこうと考えています。

スライド39~43 コウモリに関して

次に、だんだんと身近な動物になってきましたが、コウモリについてです。
実は、札幌市内にもたくさんのコウモリが生息しています。夕方、空を見上げると、円山でもコウモリがたくさん飛んでいますので、ぜひ見てみてください。
でも、生態や生息状況は非常に不明な点が多いのです。それにもかかわらず、基礎的な調査がなかなか行われていなかったのが現状です。
円山動物園では、2011年から、地域に生息する野生動物の保護のため、北海道希少生物調査会と共同で調査を実施していまして、場所は、動物園内や芸術の森、滝野公園などです。
道内には20種類のコウモリがいると言われており、そのうち、16種類は札幌市内にいるだろうとも言われています。我々の調査の中では、実際、12種類を既に確認しています。
まずは実態を把握しましょうということですが、そのほか、動物園で保護した個体を飼育し、生理生態を解明したり、現在の生息状況であるねぐらや餌場の調査をしたりして、環境を保全し、コウモリを保護することを目指しています。
これは、職員が夜とかにやってくれています。

スライド44~48 エゾシマリスに関して

次に、エゾシマリスについてです。
エゾシマリスはシベリアシマリスの旧亜種のうちの一種亜種と言われています。亜種というのは、生物の分類単位として目、科、属、種とありますが、同じ種でも地域によって色や違いが見られ、そこで固有の個体群になって認められる場合を言います。ですから、屋久島にいる屋久島ザルはニホンザルの亜種となります。
シマリスについてですが、道内では外国産のシマリスも確認されていまして、外来種との競合や交雑が懸念されています。そこで、その状況を把握するため、北大と共同で動物園内や円山公園内の外国産リスの定着の状況の調査を実施しました。
その結果、サンプルは少なかったのですけれども、在来のシマリスは見つからず、全てが朝鮮シマリスの遺伝子と一致をしました。つまり、交雑しているという証拠です。
何でこうなったかという原因を突き詰めていくと、ペットとして飼われているものが逃げて野生化しているということです。これについては飼い主が管理をしっかりしなければいけません。
そして、非常に残念なのですが、過去、リスが少なくなったので、増やしましょうということで海外産のリスを大量に放してしまったということがあったようです。こういった誤った保護活動もあったようです。
今は、現状を把握し、この先はどうするかの検討中ではありますけれども、やはり、身近な動物を守っていくということが我々のやらなければいけないことだと思っております。

スライド49~55 ニホンザリガニに関して

次に、ニホンザリガニについてです。
動物園の森にはふだんは入れないのですけれども、動物園の森ツアーなんかあります。そこにザリガニ小屋があって、動物園の森由来のザリガニを飼育し、繁殖をしているところです。それにより、一定程度、飼育・繁殖技術は蓄積されてきました。
ただ、残念ですけれども、動物園の森の周辺の水環境はあまりよくないのです。上からは生活排水が入ってきています。ですから、動物園の森に再導入するまでには至っていません。
ただ、少ないですけれども、市内にもニホンザリガニがいる場所があります。でも、そこのザリガニを増やすためにむやみやたらと動物園で生んだものを入れるわけにもいきません。それは先ほどのシマリスと同じです。ですから、市内の約10か所でそこのザリガニの生息状況やDNAを調べています。もしDNAが同じであれば、動物園から連れて行ってもいいということになるのです。
生息地ごとの個体群の関係性について、あるいは、生息環境の調査をして、生息地を保全し、ザリガニの保全を目指しています。
また、私がやりたいと思っていることについてです。
小学校では、アメリカザリガニが飼育されていますよね。これは非常に残念です。これは手に入りやすいからということなのでしょう。教科書にもそう書いてあります。でも、行く行くは、円山動物園でニホンザリガニをたくさん繁殖し、円山から小学校に配って、在来種であるニホンザリガニを飼育展示してほしいなと思っています。
学校では、アメリカザリガニを飼育し、授業が終わったとき、では、自然に返しましょうねという残念なことをやっている先生もいるのです。でも、外来種なので、放してはいけないのです。そうならないようにするためにもニホンザリガニを飼育していただきたいなと思っています。

スライド56~58 海鳥に関して

次に、海鳥についてです。
ウミガラスやウトウ、ウミスズメ、ウミネコなどがいますけれども、海鳥の繁殖地である天売島で現地調査をやっています。コロニーがどうなっているのか、捕食者との関係はどうなっているか、人間との関係はどうなっているかなどを調べています。
天売島の海鳥ですが、野ネコがいなくなり、コロニーがかなり拡大してきているのです。ただ、人間の住むぎりぎりのところまで来てしまっているので、この先、人間とのあつれきが心配だなというところもあるのですが、現地では一生懸命に保護活動をしようとしているので、円山動物園と羽幌町で連携協定などを結び、現地の保護活動に協力をしていきたいなと思っています。

スライド59、60 (まとめ)

ざっとお話をしましたけれども、いずれも我々の職員が一生懸命頑張ってくれており、それをご紹介したいなと思ってお話ししました。別に時間があれば詳しくお話ししたいと思うのですけれども、円山動物園では、このように野生動物の調査研究にも一生懸命努力しているところです。残念ながら知られていないものもありますので、我々としてもしっかりとPRをしたいなと思っています。
先ほどの佐渡友先生のお話にありましたが、こういったものの経費はどこから出るのかです。
我々には寄附金があまりないので、もともとある経費の一部を使い、我慢しながらやっているところでありますけれども、例えば、コウモリ観察会など、皆さんが参加できるものがたくさんありますから、ぜひそういったものに参加しながら、身近にいる動物を感じていただければいいなと思っています。
ちょっと早口でしたが、これで私の発表を終わります。
ありがとうございました。

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電話番号:011-621-1426

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