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更新日:2016年9月14日

札幌市衛生研究所-学会発表(2016)

検査機関における先天性甲状腺機能低下症スクリーニングの現状と問題点

第42回 日本マススクリーニング学会

2015年08月 東京都

山岸卓弥、藤倉かおり、田上泰子、花井潤師、木田 潔、田島敏広*1、鎌崎穂高*2、母坪智行*3

【スクリーニング方法】

 札幌市の先天性甲状腺機能低下症(CH)スクリーニングでは,全国的に行われている甲状腺刺激ホルモン(TSH)に加え,遊離サイロキシン(FT4)についても全件検査している.また,母体の影響を確認するため,再採血対象者は抗甲状腺抗体(抗マイクロゾーム抗体(AMC),抗サイログロブリン抗体(ATG))を,精密検査対象者は母児尿中ヨードを,加えて測定している.

 判定基準は「先天性甲状腺機能低下症マス・スクリーニングガイドライン」(日本マス・スクリーニング学会発行)に準じ,自施設の測定値統計情報を考慮して決定したものである.特にカットオフ値付近においては,再採血率や,軽症CH等の発見への影響が生じやすいと考えられるため,定期的な検証が必要である.

 FT4は早産児・未熟児において低値傾向となるため,それに応じた基準値を設けている.FT4を測定することにより,初回スクリーニング時にTSH著明高値ではないCH患者をより迅速,正確に発見することができるほか,TSH検査では発見できない中枢性CHも対象疾患となる.

【スクリーニング状況】

 札幌市では,1978年のCHスクリーニング開始以来,2013年度までに630,785名が受検し,742名が精密検査を受診,270名の患者が発見されている.最近5か年の要再採血率は1.0%,要精密検査率は0.13%,患者発見頻度は1月1日,396人であった.

 軽症CHと,一時的にTSHが上昇する一過性甲状腺機能低下症や一過性高TSH血症はスクリーニングでの判別が難しいため,CHスクリーニングの評価には検査成績の検証に加え,患者の診断確定までの追跡調査が重要である.札幌市では毎年1回,精密検査担当医へ対象者の情報提供を依頼することで調査を行っている.また,小児慢性特定疾患治療研究事業の医療意見書を照合し,スクリーニング発見例以外の患者について確認している.

*1北海道大学病院小児科、*2札幌医科大学付属病院小児科、*3さっぽろ小児内分泌クリニック


正常検体と患者データ情報収集によるタンデムマススクリーニングの精度管理

第40回 日本医用マススペクトル学会年会

2015年09月 浜松市

花井潤師、福士 勝*1、石毛信之*2、田崎隆二*3

新生児代謝異常マススクリーニング(以下、TMS)の精度の改善と施設間差の解消を図るため、TMSの精度向上に成果を上げているアメリカ「The Region 4 Stork collaborative project」(以下、R4S)の解析システムを参考に、各指標の正常値分布とカットオフ値の調査結果に加えて、スクリーニング発見例および偽陽性例の検査データを利用した日本版R4Sを想定したTMS Web解析システムの構築を検討した。

*1札幌イムノダイアグノスティックラボラトリー、*2(公財)東京都予防医学協会、*3(一財)化学及血清療法研究所


札幌市における先天性甲状腺機能低下症マススクリーニング2005-2012年の成績

第42回 日本マススクリーニング学会

2015年08月 東京都

田島敏広*1、森川俊太郎*1、 石津 桂*1、 山岸卓弥藤倉かおり、田上泰子、花井潤師、宮田 淳

 札幌市では1978年より先天性甲状腺機能低下症(以下CH)のTSH測定によるMSを開始し、1979年からはTSHとT4とTBG、1986年からはTSHとFT4の同時測定を行っている。TSHとT4またはFT4測定の利点はCH-Cを早期に発見できることである。CH-Cの70%は他の下垂体ホルモン欠損症(複合型下垂体ホルモン欠損症、combined pituitary horumone deficiency, CPHD)を合併するとの報告もあり、その場合早期に甲状腺ホルモンに加え、他の下垂体ホルモン補充を適切に行うことができる。今回2005年から2012年までのCHの成績をまとめた。

*1 北海道大学病院小児科


LC-MS/MSの導入により先天性副腎皮質過形成症スクリーニングの精度は向上する

第49回 日本小児内分泌学会学術集会

2015年10月 東京都

森川俊太郎*1、石津 桂*1、田島敏広*1、山岸卓弥、藤倉かおり、田上泰子、花井潤師、木田 潔、福士 勝*2

 高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)の導入は、先天性副腎過形成症マススクリーニングの偽陽性率低減に有効である。

 先天性副腎過形成症を対象とした新生児マススクリーニング(CAH-MS)では17ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)を測定する。

□17-OHPは従来ELISA法で測定

・従来、17-OHPは1次検査として酵素免疫測定法(ELISA)直接法、2次検査としてELISA抽出法が利用していた(札幌市)。

□ELISA法ではスクリーニング精度に問題

・従来のELISA法では、特に早産児での高い再採血率と偽陽性率が課題となっていた。

□札幌市におけるCAH-MS精度向上の試み

・札幌市では2000年より高速液体クロマトグラフ(HPLC)による17-OHP測定を導入した。

・しかし、HPLCでは前処理に時間がかかること、早産児のストレス性の17-OHP高値例は除外できないことが問題であった。

・そこで、欧米の有効性の報告を踏まえ、2011年からはLC-MS/MSを導入したCAH-MSを行っている。

*1北海道大学病院小児科、*2札幌イムノ・ダイアグノスティック・ラボラトリー


平成26年度マーケットバスケット方式による小児の食品添加物一日摂取量調査

第52回 全国衛生化学技術協議会

2015年12月 静岡県

熊井康人*1、細木伸泰*2、川島 綾*3、関根百合子*4、林千恵子*5、本郷 猛*5、安永 恵*6、氏家あけみ*6、小川尚孝*7、川原るみ子*7、仲間幸俊*8、古謝あゆ子*8、寺見祥子*1、久保田浩樹*1、佐藤恭子*1、穐山 浩*1

日常生活における食品添加物摂取量推定を目的として、我々は2002年度よりマーケットバスケット(MB)方式を用いた食品添加物一日摂取量調査を実施している。MB方式とは、量販店で購入した食品を、国民の平均的な一日の喫食量に応じて採取し、それらを混合して添加物含有量を分析し、食品添加物の一日摂取量を推定する手法である。2014年度(平成26年度)は、小児の食品添加物一日摂取量調査を行ったので報告する。

*1国立医薬品食品衛生研究所、*2現札幌市保健所環境衛生課、3*仙台市食肉衛生検査所、*4仙台市衛生研究所、*5千葉県衛生研究所、*6香川県環境保健研究センター、*7長崎市保健環境試験所、*8沖縄県衛生環境研究所


LC-MS/MSによるグリオキサール、メチルグリオキサール、ジアセチルの分析

第24回環境化学討論会

2015年6月 札幌市

吉田 勤、内山茂久*1、稲葉洋平*1、欅田尚樹*1、猪股省三、宮本啓二、木田 潔

空気中に存在するグリオキサール、メチルグリオキサール、ジアセチル等のジカルボニル化合物は、人体に対し有害であるためそのモニタリングは重要である。しかし、これらの物質は官能基を二つ有するため、正確な分析法は確立されていない。一般的なアルデヒド類の分析方法として、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)誘導体化-高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法が普及している。そこで我々は、ジカルボニル化合物の中でもグリオキサールに注目し、LC-MS/MSによる分析法について検討してきたが、今回はグリオキサールに類似した構造をもつメチルグリオキサールとジアセチルについても分析方法を検討した。ジアセチルをDNPHで誘導体化すると、mono-誘導体とbis-誘導体の両方が生成するため、定量には更なる検討が必要であった。グリオキサールをDNPHで誘導体化すると、本条件では2本のピークが確認されたが、メチルグリオキサール及びジアセチルは単一のピークが確認された。電子タバコから多数のアルデヒド類が発生するとの報告を受けて、電子タバコから発生するグリオキサールとメチルグリオキサールの定量を試みたところ、いずれも粒子状成分に多く含まれることが明らかとなった。

*1国立保健医療科学院


札幌市における大気中のアルデヒド類濃度について

第56回大気環境学会

2015年9月 東京都

吉田 勤、猪股省三、宮本啓二、木田 潔

大気中のホルムアルデヒド、アセトアルデヒドの分析については、近年、DNPH含浸シリカゲルを充填した固相カートリッジが市販されており、試料採取から誘導体化までの操作が容易となっている。この方法で試料採取を行うと、上記2種類のアルデヒドの他に、大気中に含まれる多数のカルボニル化合物を捕集・誘導体化することが可能である。そこで、毎月実施している有害大気汚染物質調査の検体を利用し、札幌市における大気中の複数のアルデヒド類について定量を試み、その傾向や特徴について考察した。なお、リテンションタイムが重なる物質や大気中濃度が著しく低い物質もあるため、LC-MS/MSを用いた。市内4地点のアルデヒド類の濃度は、多くの物質で交通量との相関が見られ、自動車排ガスの影響を受けていることが示唆された。アルデヒド濃度の月変動について、8月に最も高くなり、前後の月に比べて6月、12月及び3月は高くなり、5月と11月に低くなる傾向が見られた。トルアルデヒド等の物質で、1,3-ブタジエンとベンゼンに相関が見られる地点があり、相関の強さと交通量の順が一致していることから、自動車排ガスの影響が示唆れた。


札幌市の住宅における室内空気質の実態調査と分析法の検討

国立保健医療科学院 研究課程・専門課程 特別研究論文発表会

2016年2月 埼玉県

吉田 勤

 札幌市は冬季の気温が氷点下に達することから、高気密・高断熱住宅が多く存在するなど、他の地域とは住環境が異なり、特有の室内環境汚染が懸念される。そこで、札幌市の40戸の住宅を対象とし、4種類の拡散サンプラーを用いて揮発性有機化合物(VOC)、オゾン、アルデヒド類、酸性ガス、塩基性ガスの濃度を測定することにより室内空気質を評価した。また、従来測定が困難であったジカルボニル化合物の分析法の検討を行った。

一般に、総揮発性有機化合物(TVOC)は、気温の高い夏季の屋内濃度が冬季より高い傾向があるが、札幌市における冬季の室内濃度は夏季より1.6倍高い値を示し、冬季の汚染が明らかになった。その原因の一つとして、札幌市では常時暖房器具を使用し、暖房効果を保つため換気量が低下していることが推測される。なお、換気量に関しては、同時に測定された屋内外のオゾン濃度から推測可能であった。一方、ジアルデヒド類の分析では、DNPH誘導体がその分子構造から生じるモノ、ビス誘導体や幾何異性体に起因するクロマトグラム上の現象を明らかにした。


 

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