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更新日:2016年9月14日

札幌市衛生研究所年報-他誌投稿(2016)

病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究 平成26年度分担研究報告書、28-37、2015

八柳 潤*1、池田徹也*2、坂本裕美子、武沼浩子*3、福田 理*3、岩渕香織*4、瀬戸順次*5、鈴木 裕*5、山口友美*6、坂本宣子*7、菊地理慧*8、川瀬雅雄*9、足立玲子*10

 北海道・東北・新潟ブロックの地方衛生研究所におけるIS-printing systemの精度管理に関する共同研究を実施した。秋田県で分離されたEHEC O157分離株4株から抽出したDNA溶液を供試し、キット付属のプロトコールに従いIS-printingを実施した結果、参加機関間で異なる判定となるものがあった。その要因として、反応系に添加するDNA量が関与すること、また、正規のバンドと同等の輝度を呈するエキストラバンドによることが示された。

IS-printing systemの精度管理に未だ課題が存在することが明らかとなり、今後も取り組みを継続し、問題点を洗い出すことにより、ブロック内地方衛生研究所におけるIS-printing systemの精度向上を目指す必要がある。

 *1秋田県健康環境センター、*2北海道立衛生研究所、*3青森県環境保健センター、*4岩手県環境保健研究センター、*5山形県衛生研究所、*6宮城県保健環境センター、*7仙台市衛生研究所、*8福島県衛生研究所、*9新潟県保健環境科学研究所、*10新潟市衛生環境研究所


病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究 平成24~26年度総合研究報告書、199-205、2015

八柳 潤*1、清水俊一*2、池田徹也*2、坂本裕美子、武沼浩子*3、福田 理*3、岩渕香織*4、梶田弘子*4、瀬戸順次*5、鈴木 裕*5、山口友美*6、千葉久子*7、 松原弘明*7、牛水真紀子*7、坂本宣子*7、千葉一樹*8、菊地理慧*8、川瀬雅雄*9、足立玲子*10

平成24年度から26年度に北海道・東北・新潟ブロックの地方衛生研究所におけるIS-printing systemの精度管理に関する共同研究を実施した。研究開始時には、参加10機関のうち5機関の担当者がIS-printingを行うのが初めてという状況であった。EHEC O157分離株13株を供試した結果、反応系に加えるDNA量が結果の再現性に大きな影響を及ぼすこと、また、菌株の種類によって正規のバンドと同等の輝度を呈するエキストラバンドが出現し、判定の不一致が発生することも経験された。

IS-printing systemの精度管理に未だ課題が存在することが明らかとなり、今後も取り組みを継続し、問題点を洗い出すことにより、ブロック内地方衛生研究所におけるIS-printing systemの精度向上を目指す必要がある。

*1秋田県健康環境センター、*2北海道立衛生研究所、*3青森県環境保健センター、*4岩手県環境保健研究センター、*5山形県衛生研究所、*6宮城県保健環境センター、*7仙台市衛生研究所、*8福島県衛生研究所、*9新潟県保健環境科学研究所、*10新潟市衛生環境研究所

 


 

麻疹ならびに風疹排除およびその維持を科学的にサポートするための実験室検査に関する研究

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)麻疹ならびに風疹排除およびその維持を科学的にサポートするための実験室検査に関する研究 2014年の北海道における麻疹・風疹について 平成26年度分担研究報告書、40-45、2015

三好正浩*1、駒込理佳*1、長野秀樹*1、岡野素彦*1、大西麻実、古舘大樹、水嶋好清

2014年の北海道における麻疹患者報告数は13例であった。このうち遺伝子検査が実施された症例は12例あり、11例から麻疹ウイルスの遺伝子型B3が、1例から同D8が検出された。遺伝子検査が行われなかった1例は、IgM抗体指数が8.64と高値であったため届出となった。一方、風疹患者報告数は4例であった。このうち遺伝子検査が実施され、かつ風疹ウイルス遺伝子が検出された症例は3例あり、2例から遺伝子型2Bが検出されたが、1例は同定に至らなかった。他の1例は臨床診断例であった。なお、同年における麻疹及び風疹の検査件数は、北海道立衛生研究所20例、札幌市衛生研究所17例であった。

*1北海道立衛生研究所


Characterization of a Large Cluster of Influenza A(H1N1)pdm09Viruses Cross-Resistant to Oseltamivir and Peramivir during the 2013-2014Influenza Season in Japan

Antimicrob. Agents Chemother., 59, 2607-2617, 2015

Emi Takashita*1, Maki Kiso*2, Seiichiro Fujisaki*1, Masaru Yokoyama*3, Kazuya Nakamura*1, Masayuki Shirakura*1, Hironori Sato*3, Takato Odagiri*1, Yoshihiro Kawaoka*2,4,5,6 and Masato Tashiro*1 , The Influenza Virus Surveillance Group of Japan.

Between September 2013 and July 2014, 2,482 influenza 2009 pandemic A(H1N1) [A(H1N1)pdm09] viruses were screened in Japan for the H275Y substitution in their neuraminidase (NA) protein, which confers cross-resistance to oseltamivir and peramivir. We found that a large cluster of the H275Y mutant virus was present prior to the main influenza season in Sapporo/Hokkaido, with the detection rate for this mutant virus reaching 29% in this area. Phylogenetic analysis suggested the clonal expansion of a single mutant virus in Sapporo/Hokkaido. To understand the reason for this large cluster, we examined the in vitro and in vivo properties of the mutant virus. We found that it grew well in cell culture, with growth comparable to that of the wild-type virus. The cluster virus also replicated well in the upper respiratory tract of ferrets and was transmitted efficiently between ferrets by way of respiratory droplets. Almost all recently circulating A(H1N1)pdm09 viruses, including the cluster virus, possessed two substitutions in NA, V241I and N369K, which are known to increase replication and transmission fitness. A structural analysis of NA predicted that a third substitution (N386K) in the NA of the cluster virus destabilized the mutant NA structure in the presence of the V241I and N369K substitutions. Our results suggest that the cluster virus retained viral fitness to spread among humans and, accordingly, caused the large cluster in Sapporo/Hokkaido. However, the mutant NA structure was less stable than that of the wild-type virus. Therefore, once the wild-type virus began to circulate in the community, the mutant virus could not compete and faded out.

 *1 Influenza Virus Research Center, National Institute of Infectious Diseases

*2 Division of Virology, Department of Microbiology and Immunology, Institute of Medical Science, University of Tokyo

*3 Pathogen Genomics Center, National Institute of Infectious Diseases

*4 ERATO Infection-Induced Host Responses Project, Japan Science and Technology Agency

*5 Department of Special Pathogens, International Research Center for Infectious Diseases, Institute of Medical Science, University of Tokyo,

*6 Department of Pathobiological Sciences, School of Veterinary Medicine, University of Wisconsin-Madison


 

北海道における2014年の麻疹患者発生状況

病原微生物検出情報、36(4)、55-56、2015

三好正浩*1、駒込理佳*1、石田勢津子*1、長野秀樹*1、岡野素彦*1、大西麻実、古舘大樹、水嶋好清、楢林秀紀、宮田 淳

2014年、北海道および札幌市では、37症例について麻疹ウイルスの検査を行った。検体の内訳は、咽頭ぬぐい液35検体、尿30検体および血液32検体であった。

麻疹ウイルス遺伝子が検出された症例は12例であり、これらを含め、道内では13例の麻疹の届出があった。積極的疫学調査の結果、11例は道内で感染したと思われ、2例は、潜伏期とみられる時期に海外渡航歴があり、輸入例であることが疑われた。遺伝子が検出された12例について、 N遺伝子の相同性を解析したところ、フィリピンへの渡航歴を認めた症例を含め、11例が遺伝子型B3であり、インドネシアへの渡航歴を認めた症例が遺伝子型D8であった。IgM抗体検査は、陽性が10例、陰性が1例、未実施が2例であった。遺伝子型B3のN遺伝子の塩基配列は、11例においてすべて同一であった。

医療機関を介する麻疹の伝播とともに感染経路が不明の症例も複数認められた。これらのことから、伝播の予防、感染源の解明に向けたさらなる取り組みが重要と考えられる。麻疹排除を達成するためには、今後も予防接種の徹底に加え、疑い患者の早期発見および積極的疫学調査の推進が求められる。

*1北海道立衛生研究所


タンデムマス・スクリーニングにおける精度管理の現状と今後の課題-内部精度管理の充実に向けた取組み-

日本マススクリーニング学会誌 25(1), 57-66, 2015

花井潤師、福士 勝*1、石毛信之*2、田崎隆二*3、山口清次*4、重松陽介*5

日本マススクリーニング学会技術部会が中心となり,タンデムマス・スクリーニング(以下,「TMS」)の施設間差の解消と内部精度管理の充実を図るため,内部精度管理ツールを配布し,平成25年度の各施設の正常値分布およびTMS実施状況の調査を行った.その結果,TMSの指標ごと,施設ごとの正常値の分布とカットオフ値の比較や再採血率と精査率などのTMS実施状況の比較により,それぞれの施設ごとの特徴や問題点などが明らかとなった.これらの解析結果は,各施設での適正なカットオフ値の設定に向けて,有用な情報になると考える.今後も各施設の正常値分布調査を継続的に実施していくには,より簡便な検査データの収集と結果のリアルタイムの解析が必要であり,Webベースのデータベース構築と解析システムの整備が必要である.

*1札幌イムノ・ダイアグノスティック・ラボラトリー、*2公益財団法人東京都予防医学協会、*3一般財団法人化学及血清療法研究所、*4島根大学小児科、*5福井大学医学部看護学科健康科学


マーケットバスケット方式による小児の食品添加物一日摂取量の推定(2014年度)

日本食品化学学会誌,22(3),188-194,2015

熊井康人*1、細木伸泰*2、川島 綾*3、関根百合子*4、林千恵子*5、本郷 猛*5、安永 恵*6、氏家あけみ*6、中島安基江*7、小川尚孝*8、川原るみ子*8、仲間幸俊*9、古謝あゆ子*9、建部千絵*1、大槻 崇*1、久保田浩樹*1、佐藤恭子*1、穐山 浩*1

我々は、汎用されていて最終食品に残存しやすい食品添加物を中心に、成人の喫食量を対象としたマーケットバスケット方式による摂取量調査を行っているが、世代により嗜好する食品や、喫食量、体重が異なっており、特に小児(1~6歳)の摂取量は成人との違いが大きいと考えられる。2009年度の調査から5年が経過し、低カロリー食品が普及するなど食環境にも変化がみられ、現況における摂取量の調査が必要と考えられたことから、小児の食品添加物一日摂取量調査をあらためて実施した。また、購入した食品のうち対象食品添加物の表示がある食品を個別に分析し、摂取量についていくつかの知見が得られたので報告する。

*1国立医薬品食品衛生研究所、*2現札幌市保健所環境衛生課、*3仙台市食肉衛生検査所、*4仙台市衛生研究所、*5千葉県衛生研究所、*6香川県環境保健研究センター、*7広島県立総合技術研究所保健環境センター、*8長崎市保健環境試験所、*9沖縄県衛生環境研究所


札幌市の住宅における室内空気質の実態調査と分析法の検討

J. Natl. Inst. Public Health,65(2),201-202,2016

吉田 勤

目的:札幌の室内空気質(IAQ)は、冬季の外気温が氷点下に達することから、高気密・高断熱住宅を建築することが一般的であり、他の地域とは異なる可能性がある。そこで、様々なガス状の化学物質を測定することにより、札幌のIAQの特徴について検討した。あわせて、分析法がまだ確立されていないジカルボニル化合物の分析方法を開発した。

方法:4種類の拡散サンプラーを用いて、揮発性有機化合物(VOC)、オゾン、カルボニル、酸性・塩基性ガスについて、夏季と冬季に40住宅の屋内と屋外の空気中で測定した。また、空気中のジカルボニル化合物の分析法について、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)誘導体化法の適用を試みた。

結果:一般的に、総揮発性有機化合物(TVOC)の室内濃度は、夏季に高い傾向があるが、札幌では冬季の方が高い傾向にあり、冬季の濃度は夏季の1.6倍であった。この原因として、冬季の換気不足の影響が考えられた。この換気不足は、オゾンの屋内/屋外比によって示されている。また、ジカルボニル化合物のDNPH誘導体化適用の結果として、分子構造に起因したモノ誘導体、ビス誘導体等、幾何異性体の存在を明らかにした。

結論:札幌市周辺の住宅は、冬季にTVOC濃度が高くなる傾向にあり、原因として換気不足が考えられた。より健康的は生活を送るためには冬季の換気の必要性が示唆された。ジカルボニル化合物の一種である、グリオキサール、メチルグリオキサール及びジアセチルは、DNPH誘導体化法を適用することで分析可能となった。

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