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更新日:2022年6月13日

動物園のあるべき姿

この条例では、動物園のあるべき姿について、市営、民営問わず動物園の運営目的(「動物園とは」参照)活動理念実施事業を明らかにし、併せて円山動物園の基本的な取組事項を規定しています。

 動物園とは(条例第2条第1項第3号「定義」)

この条例では、動物園、水族館、昆虫館その他いかなる名称であるかを問わず、以下のすべてに該当する施設を「動物園」としています。

  • 生物多様性の保全に寄与することを目的としている。
  • 野生動物を主とした飼育及び展示を行っている。
  • 野生動物の繁殖による生息域外保全の取組を行っている。
  • 野生動物の保全に関連する調査研究及び教育活動を行っている。

動物園イメージ調査研究教育活動

【この条例でいう「動物園」には該当しない施設の例】
  • 生物多様性の保全に寄与することを目的とせず、単にレジャーや販売を主目的としている施設
  • 家畜のみを飼育展示している施設
  • 野生動物は飼育しているが展示していない施設 など

 動物園の活動理念(条例第3条第1項「基本理念」)

動物園の活動における基本的な考え方として次の3つを掲げています。

  1. 動物園の活動は、その動物園において飼育する動物(以下「飼育動物」という。)の良好な動物福祉を確保しつつ、野生動物の保全を通じて、生物多様性の保全に寄与することを旨として行われなければならない。
  2. 動物園の活動は、野生動物とそれを取り巻く環境が生態系の重要な構成要素であることを認識する機会を提供し、もって豊かな人間性と感性が育まれることを旨として行われなければならない。
  3. 動物園の活動を行うに当たっては、市民及び事業者との協働により取り組まれるよう努めなければならない。

 実施事業(条例「第2章動物園(第7条から第9条)」)

動物園の実施事業について、保全活動、良好な動物福祉の確保、活動情報の公表の3つについて規定しています。

1 保全活動(条例第7条)

野生動物の保全のための活動として次の(1)から(6)を規定しています。

(1) 動物の収集に関すること。

今後飼育展示する動物種(抜粋)
画像:円山動物園の今後飼育展示する動物種の分類表

繁殖等によりその種の保全に貢献できるか、良好な動物福祉を確保できるか、その動物の展示や教育活動を通して保全への行動を促すことができるかなどを考慮し、収集計画を立てることなどを指しています。

(2) 野生動物の保全に資するための調査・研究に関すること。

コウモリ調査
画像:円山動物園におけるコウモリ調査

日々の動物飼育や診療結果から得られる行動の変化や血液検査等の記録により生理・生態を解明していくことが重要です。
また、上の写真のような、野外での野生動物の生息実態や生息環境の調査も必要な取組です。

(3) 野生動物の生態及び生息環境を伝えるための動物の展示に関すること。

ホッキョクグマ館
画像:円山動物園のホッキョクグマ館

(4) 野生動物の保全への意識を醸成し、及び行動を促すための教育活動に関すること。

ホッキョクグマガイド
例:円山動物園のホッキョクグマ館におけるガイド(生息地の環境問題等)

(5)生息域外保全のための累代飼育に関すること。

ミヤコカナヘビ保護増殖事業
例:ミヤコカナヘビの保護増殖事業における飼育及び繁殖の取組

(6)関係機関等との野生動物の保全に関する情報交換に関すること。

情報交換会議
例:野生動物の保全に関する情報交換を行う関係者会議への参加

生息域内保全に関する取組

上記のほか、野生動物の生息域内保全に関する取組その他野生動物の保全を推進するために必要な活動を行うことについても規定しています。
これは生息域内保全との関わりを持つことを指しています。
動物園で行う繁殖や教育活動などは、野生動物の保全に貢献することを目的に行うことから、野生動物が生息する現地における保全活動(生息域内保全)の動向も踏まえ、その活動と連携した取組を行うことが重要となってきます。
動物園自らが生息域内保全を実施することも目指していきますが、それ以上に動物園で行う活動が生息域内保全につながっていくように取り組むことを明確にするために規定しています。

生息域内保全に関する取組

例:生息地の調査や環境保全活動、生息地の環境や動物を守るための講習会など

2 良好な動物福祉の確保(条例第8条)

この条例では、「動物福祉」とは「動物が置かれた環境に起因する動物の身体的及び心理的状態」を指します。
「動物が置かれた環境」とは、次の絵のように「栄養」「健康」「環境」「行動」「精神」の5つの領域を指しており、動物福祉は、それらが良い状態なのか悪い状態なのかによって、複雑に相互に作用し、その動物の全般的な状態は変わってくるものと考えられています。

5つの領域モデル

この動物福祉を良好にしていくために動物園が行う取組として、次のことを規定しています。

  1. 最新の科学的知見に基づき、その種に適した飼育管理の要件及び個々の要求に応じた飼育環境の下で飼育するよう努めるとともに、疾病の予防及び治療を適切に実施できる獣医療体制を整備すること
  2. 動物福祉に関する規程(以下「動物福祉規程」という。)を定めるとともに、当該動物園における飼育動物の動物福祉を定期的に評価し、必要に応じて改善のための措置を講じること。
  3. 最新の科学的知見及び専門的な助言に基づき、動物福祉規程について、定期的に見直しを行い、必要な変更を加えること

3 活動情報の公表(条例9条)

動物園は、前2条に定める事項の取組状況について、インターネットの利用その他適切な方法により適宜公表しなければならないことを規定しています。

 円山動物園の基本的な取組事項(条例「第4章円山動物園」)

円山動物園が将来にわたり社会的役割を果たし、持続可能な運営を目指すために以下のことを基本にして取り組んでいきます。

1 運営方針及び実施計画の策定(条例第11条)

  • 円山動物園がこの条例の趣旨に従い運営していくための総合的かつ計画的な「運営方針」を定め、その運営方針に沿った中期的かつ具体的な計画として「実施計画」を定めることとしています。
  • この規定により、2019年3月に策定した札幌市円山動物園基本方針「ビジョン2050」はこの規定における「運営方針」、2020年3月に策定した札幌市円山動物園ビジョン2050第1次実施計画はこの規定における「実施計画」と位置付けられます。(それぞれの策定根拠)

ビジョン2050

札幌市円山動物園基本方針「ビジョン2050」

ビジョン2050第1次実施計画

札幌市円山動物園ビジョン2050第1次実施計画

2 円山動物園における良好な動物福祉の確保(条例第12条)

円山動物園が第8条に規定する「良好な動物福祉の確保」の取組を着実に強化していくための基本的取組事項を規定しています。

  • 市民動物園会議に以下についてチェックを受けること
    1. 飼育動物の良好な動物福祉が確保されているかどうか
    2. 円山動物園の動物福祉規程の制定又は改正
    3. 利用者に野生動物に直接接触する機会を提供する場合、生物多様性の保全に寄与する教育的効果があるかどうか、かつ、良好な動物福祉を確保しているかどうか
  • 市民動物園会議の動物福祉評価の結果を円山動物園の業務改善に適切に反映させ、反映状況を公表しなければならないこと。
  • 動物福祉規程を改正したときは、速やかに公表しなければならないこと。
  • さらに、2015年に起きたマレーグマの死亡事故の反省を踏まえ、再発防止に向けた市の姿勢を示すとともに、良好な動物福祉の確保のため、円山動物園の業務における管理監督者や円山動物園の飼育動物の飼育、診療等に関する業務を行う職員の職務上の心構えについて規定しています。

【心構えの内容】

  1. 管理監督者…良好な動物福祉を確保していくための組織管理体制を整備すること
  2. 飼育、診療等に関する業務を行う職員(※)…動物にとって良い環境をつくり健全な状態にするためにはどうすればよいか、といったことを常日頃考えながら業務にあたること

飼育動物の飼育、診療等に関する業務を行う職員は、飼育や診療に限らず飼育動物の生命、健康状態等を左右する重大な業務に携わる全ての職員を指しています。

3 円山動物園動物福祉の日(条例第13条)

  • 2015年7月25日に起きたマレーグマの死亡事故を反省し、2019年に7月25日を「動物福祉の日」と定め、動物福祉の向上に関する研修等の取組を行ってきたところですが、これを将来にわたって教訓とするため、条例においても規定しています。
  • 毎年7月25日(又はその前後)に、市民の動物福祉に関する理解及び関心を深めるとともに、円山動物園の職員の動物福祉の向上に関する意識の高揚を図るための普及啓発イベントや研修会等を実施していきます。

4 動物の展示及び教育活動の原則(条例第14条)

円山動物園において動物の展示及び教育活動を行うに当たってのルールを規定しています。
(円山動物園以外の動物園は対象外です。)

原則のポイント1 野生動物に関する情報を正確に伝え、その尊厳を尊重するものとすること。

原則のポイント2 ポイント1を踏まえ、次に掲げる事項を行ってはならないこと。

  1. 利用者に野生動物に直接接触する機会を提供すること。(手などで動物を触ること(えさや道具を介して触ることも含みます))
  2. 動物に人を模した姿、格好又は行動をさせようとすること。(動物に服を着せたり、自転車に乗せるなど)
  3. 動物の本来の生態とは異なることを、人の姿、格好又は行動に当てはめて表示すること。(掲示物や啓発媒体において、動物を擬人化したイラストや写真を表示すること)

ただし、上記1.については、生物多様性の保全に寄与する教育的効果があり、かつ、良好な動物福祉を確保しているものと市民動物園会議が認めた場合は行うことができることとししています。

5 施設の整備及び管理(条例第15条)

生物多様性の保全と良好な動物福祉の確保に留意した施設の整備や管理を行うことを規定しています。

6 危機管理(条例第16条)

市は、自然災害、感染症(新型のウイルス、鳥インフルエンザ、口蹄疫等)、動物の逸走など、飼育動物又は利用者等の生命の危機を生じさせる事象に対応するための計画を策定し、その計画を実施できる体制整備を行うことを規定しています。
高病原性鳥インフルエンザが流行している場合に各入園者入口に消毒マット等を設置し防疫することや、定期的に動物が飼育施設から逃げ出してしまったことを想定した訓練などを指しています。

7 連携(条例第17条)

市は、円山動物園と国内外の政府、地方公共団体、大学等の研究機関、動物園その他動物園の活動に関連する機関等との間で積極的な連携及び協力が図られるよう取り組まなければならないことが規定されています。

8 専門的知識を有する職員の確保等(条例第18条)

市は、野生動物の診療、動物の飼育管理等に関し、専門的知識又は経験を有する職員を確保するよう努めなければならないことを規定しています。
また、市長は、職員の育成を図るため、研修の実施、研究及び発表の機会の確保その他必要な措置を講ずるよう努めなければならないことを規定しています。

9 公表等(条例第19条)

円山動物園の運営に関する情報をインターネットなどで公表することや、利用者、市民、事業者等からの意見を適切に反映させるよう努めることを規定しています。

このページについてのお問い合わせ

札幌市円山動物園

〒064-0959 札幌市中央区宮ケ丘3番地1

電話番号:011-621-1426

ファクス番号:011-621-1428