ここから本文です。

更新日:2020年8月3日

コラム「こんにちは、アシストです」(2020年8月号)

「子どもの法律の大改革」~杉浦救済委員~

久しぶりに、読んでいてぐいぐい引きこまれる本に出会いました。それは『「真に」子どもにやさしい国をめざして…児童福祉法等改正をめぐる実記』(塩崎恭久著,未来叢書)という本です。著者は、元厚生労働大臣を務めた塩崎議員です。この本には、平成28年の「児童福祉法の抜本改正」と平成29年・令和元年の「同法改正および民法等改正」に関して、著者が大臣であった時期を中心に、その改正をどのような信念から、どのようにして成し遂げていったかが描かれています。改正の核心的な部分や、その改正において著者(政治家)が具体的にどう考え、どのように活動し、その分野の専門家と連動したり彼らの知見の助けを借りながら、行政(官僚)と時に対立し、時に行政を動かし、それを実現していったかについても克明に描かれています。

平成28年の抜本改正の核心は、「子どもの権利(主体性の明確化)」,「子どもの最善の利益優先」,「家庭養育優先」という3つの原則を、いかに書き込むかでした。

改正前の児童福祉法は第二次世界大戦直後に作られた法律であり、主眼は戦災孤児たちを施設に収容し生活の基盤を与えることでしたので、子どもは「受け身」の存在として扱われていました。そのような法律を、子どもを「権利の主体」としたものに作り変える、いわば児童福祉法に対する本質的な哲学の転換を断行したと著者は振り返っています。

更に、子どもの主体性の明確化に加えて、年齢等に応じて子ども自身の意見が尊重され、その「最善の利益が優先」されることも改正法には明記されました。

また、児童精神医学等の知見から、乳幼児は特定の大人と「1対1の関係」による愛着関係が作れなければ、健全な発達をしにくいことが分かっています。そのため、改正後の児童福祉法には、「家庭養育優先」の原則が盛り込まれました。

本の最後には、「日本子ども虐待防止学会」理事長、奥山眞紀子さんの寄稿文が載っています。その中から印象的な部分を引用したいと思います。「2016年の児童福祉法の改正は、この分野に長く携わってきた私たちからみれば、『革命』と言えるほどの大きな変革の一歩でした。(中略)何十年かかっても難しいような根本的な政策哲学の転換をわずか1、2年で法律に書き込んでしまったのですから、現場の衝撃は非常に大きなものでした」。「声を上げることが困難な子どもたちの権利を守る制度を勝ち取ることは、大臣といえども容易なことではないことがよく理解できます。本書ができるだけ多くの方に読まれ、一人でも多くの大人たちが、明日を担う子どもたちに優しい社会を創るための、“仲間”となってくださることを期待しています」。

私も、多くの方々に読まれることを希望します。特定の政党や政治家を支持している訳ではないのですが、「子どもの最善の利益」の推進を願う者として、著者への尊敬の念を禁じ得ません。

 

令和2年8月5日

 

コラムのトップページに戻る

このページについてのお問い合わせ

札幌市子ども未来局子どもの権利救済事務局

〒060-0051 札幌市中央区南1条東1丁目5 大通バスセンタービル1号館6階

電話番号:011-211-2946  内線:393

ファクス番号:011-211-2948