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更新日:2023年1月25日

札幌市衛生研究所-論文投稿・学会発表(2019)

(1) 他誌投稿論文抄録

食品由来感染症の病原体情報の解析及び共有化システムの構築に関する研究

 厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)食品由来感染症の病原体情報の解析及び共有化システムの構築に関する研究 平成29年度 研究分担報告書、23-30、2018

 熊谷優子*1、池田徹也*2、阿部正太郎、山上剛志*3、髙橋洋平*3、武差愛美*3、今野貴之*1、岩渕香織*4、鈴木 裕*5、木村葉子*6、山田香織*7、森 直子*7、三瓶 歩*8、青木順子*9、菊池綾子*10

 分子疫学的解析法の検査精度向上と病原体情報の共有化システム構築を目的として、腸管出血性大腸菌(EHEC)O157菌株を用いたIS-Printing Systemについて、ブロック内の地方衛生研究所11 施設の精度管理を実施した。IS-Printing Systemの精度管理における解析結果は、エキストラバンドについて判定で分かれた。しかし、概ね良好な解析結果であり、発生事例等について解析を続けて行うことによりデータの幅広い活用の仕方が各施設で構築できると思われる。IS-Printing System は、広域にわたる事例発生時の病原体情報として迅速性と有用性が高いことから、今後も精度管理による検査技術の水準を保ち、データの精度を高め、地域行政に還元していく必要がある。

*1秋田県健康環境センター、*2北海道立衛生研究所、*3青森県環境保健センター、*4岩手県環境保健研究センター、*5山形県衛生研究所、*6宮城県保健環境センター、*7仙台市衛生研究所、*8福島県衛生研究所、*9新潟県保健環境科学研究所、*10新潟市衛生環境研究所


 

食品由来感染症の病原体情報の解析及び共有化システムの構築に関する研究

 厚生科学研究費補助金(新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業)食品由来感染症の病原体情報の解析及び共有化システムの構築に関する研究 平成27-29年度 研究分担報告書、23-30、2018

 熊谷優子*1、池田徹也*2、坂本裕美子、阿部正太郎、武沼浩子*3、山上剛志*3、髙橋洋平*3、武差愛美*3、今野貴之*1、岩渕香織*4、鈴木 裕*5、山口友美*6、木村葉子*6、山田香織*7、森 直子*7、菊地理慧*8、三瓶 歩*8、川瀬雅雄*9、青木順子*9、菊池綾子*10

 平成27 年度から平成29 年度の3 年間、北海道・東北・新潟ブロック内の地方衛生研究所11 施設において、分子疫学的解析手法の検査精度向上と病原体情報の共有化システム構築を目的として腸管出血性大腸菌(EHEC)O157 のIS-Printing System について精度管理を実施した。秋田県で分離された菌株から毎年DNA 溶液4 種類を作製し、それを共通検体とした精度管理の結果は、いずれの施設も全体的には良好な電気泳動像が得られた。しかし、一部にはエキストラバンドの判定等に苦慮した施設もあった。施設における検査担当者の変更も頻繁にあり、検査精度を一定に保つためには技術の確実な伝承と精度管理による評価がとても重要であると考えられた。

*1秋田県健康環境センター、*2北海道立衛生研究所、*3青森県環境保健センター、*4岩手県環境保健研究センター、*5山形県衛生研究所、*6宮城県保健環境センター、*7仙台市衛生研究所、*8福島県衛生研究所、*9新潟県保健環境科学研究所、*10新潟市衛生環境研究所


 

Detection of influenza A(H3N2) viruses exhibiting reduced susceptibility to the novel cap-dependent endonuclease inhibitor baloxavir in Japan, December 2018

Euro Surveill., 24(3), 2019. DOI: 10.2807/1560-7917.ES.2019.24.3.1800698.

Emi Takashita*1, Chiharu Kawakami*2, Hiroko Morita*1, Rie Ogawa*1, Seiichiro Fujisaki*1, Masayuki Shirakura*1, Hideka Miura*1, Kazuya Nakamura*1, Noriko Kishida*1, Tomoko Kuwahara*1, Keiko Mitamura*3, Takashi Abe*4, Masataka Ichikawa*5, Masahiko Yamazaki*6, Shinji Watanabe*1, Takato Odagiri*1, on behalf of the Influenza Virus Surveillance Group of Japan*1

The novel cap-dependent endonuclease inhibitor baloxavir marboxil was approved for the treatment of influenza virus infection in Japan in February 2018. Two influenza A(H3N2) viruses carrying an I38T substitution in the polymerase acidic subunit (PA) were detected in baloxavir-treated children in December 2018. This mutation is known to confer reduced susceptibility to baloxavir, and the two mutant viruses exhibited 76- and 120-fold reduced susceptibility to baloxavi.

*1 Influenza Virus Research Center, National Institute of Infectious Diseases, Tokyo, Japan *2 Yokohama City Institute of Public Health, Kanagawa, Japan *3 Eiju General Hospital, Tokyo, Japan *4 Abe Children’s Clinic, Kanagawa, Japan *5 Ichikawa Children’s Clinic, Kanagawa, Japan *6 Zama Children’s Clinic, Kanagawa, Japan


Administrative Laboratory Findings for Highly Pathogenic Avian Influenza Virus A (H5N6) in Individuals Engaged in a Mass Culling of Poultry, Hokkaido, Japan, 2016

Jpn. J. Infect. Dis., 71, 317-319, 2018

Masahiro Miyoshi*1, Rika Komagome*1, Hiroki Yamaguchi*1, Setsuko Ishida*1, Hideki Nagano*1, Asami Ohnishi, Masayuki Kikuchi, Kazuyo Hamaya, Kohei Shimada*2, Masataka Fukami*2, Hajime Shimada*3, Tsukasa Ohara*4, and Motohiko Okano*1

On December 12 and 15, 2016, the HPAI H5N6 virus was detected successively in Hokkaido, northern islands of Japan, and from dead owl and falcon in the towns of Kamishihoro and Otofuke. These towns are located about 30 kilometers from each other in the eastern area of Hokkaido. Furthermore, the virus was found in chickens at a poultry farm in Shimizu town about 30 kilometers away from the town of Otofuke on December 16, 2016. In Japan, when an outbreak of HPAI occurs, the prefectural government should order the owners to slaughter chickens to prevent further spread of the HPAI virus. Under the law, this is known as the Act on Domestic Animal Infectious Diseases Control. In the outbreak of Shimizu town, the Hokkaido government slaughtered and buried approximately 280,000 chickens, and disinfected the place to prevent further spread. It was the first mass-culling conducted in Hokkaido for an HPAI outbreak.

*1 Hokkaido Institute of Public Health, Sapporo, Japan *2 Department of Health and Welfare, Hokkaido Government, Sapporo, Japa *3 Bureau of Prefectural Hospital, Hokkaido Government, Sapporo, Japan *4 Office of Health Administration, Ishikari Subprefectural Bureau, Hokkaido Government, Ebetsu, Japan 


Association of maternal serum concentration of hydroxylated polychlorinated biphenyls with maternal and neonatal thyroid hormones: The Hokkaido birth cohort study

Environ. Res., 167, 583–590, 2018

Sachiko Itoh*1, Toshiaki Baba*1,2, Motoyuki Yuasa*3, Chihiro Miyashita*1, Sumitaka Kobayashi*1, Atsuko Araki*1, Seiko Sasaki*4, Jumboku Kajiwara*5, Tsuguhide Hori*5, Takashi Todaka*5, Kaori Fujikura, Sonomi Nakajima*6, Shizue Kato*4, Reiko Kishi*1

In this study, we reported a positive association between ΣOH-PCB and 4-OH-CB187 with maternal and neonatal FT4 among populations with low environmental exposure levels in Japan. We also showed intermediation paths between OH-PCB exposure and neonatal FT4 via maternal THs and neonatal TSH using path analysis. It is important to investigate the long-term effect of the disrupted THs at birth on later stages of in a prospective cohort study.

*1 Center for Environmental Health and Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan *2 Department of Mental Health, Graduate School of Medicine, University of Tokyo, Tokyo, Japan *3 Faculty of International Liberal Arts, Juntendo University, Tokyo, Japan *4 Department of Public Health Sciences, Hokkaido University, Sapporo, Japan *5 Fukuoka Institute of Health and Environmental Sciences, Fukuoka, Japan *6 Department of Occupational Therapy, School of Health Sciences, Sapporo Medical University, Sapporo, Japan


 

 

(2) 学会発表講演要旨

札幌市におけるタンデムマススクリーニングの5年間の検討

第45回 日本マススクリーニング学会

2018年8月 埼玉県

田中藤樹*1、長尾雅悦*1、小杉山清隆*2、吉永美和、斎藤翔太、手塚美智子、野町祥介、東田恭明、三觜 雄

 【目的・方法】

札幌市では2005年からタンデムマススクリーニングを導入している。今回我々は、最近5年間のタンデムマススクリーニング状況について検討することとした。札幌市における2012~2016年度の5年間での新生児マススクリーニング、ハイリスクスクリーニングの結果とメールコンサルタント内容を解析した。

【結果】

5年間での新生児マススクリーニング受検者数は81,327人。要再検査数は240人(要再検査率0.295%)。要精査数は42人(うち即精査12人)であった。要精査42人のうち、代謝異常症の確定は21例(良性高フェニルアラニン血症2例、MAT欠損症2例、シトリン欠損症1例、シトルリン血症1型4例、プロピオン酸血症2例、MCC欠損症1例、グルタル酸尿症2型1例、MCAD欠損症1例、VLCAD欠損症1例、全身性カルニチン欠乏症1例、GALE欠損症2例、ガラクトース血症1例、門脈-大循環シャント2例)であり、他は低出生体重児、一過性、染色体異常、不明であった。

また、札幌市ではマススクリーニング関連疾患依頼検査事業として、いわゆるハイリスクスクリーニング(代謝異常症の診断目的、否定目的)や新生児マススクリーニング疾患のフォロー検査、あるいはそれ以外の疾患のフォロー検査も実施している。ハイリスクスクリーニングのうち、検査異常値を呈してコンサルタント医まで連絡が届くものとして、主訴としては低血糖、代謝性アシドーシス、高乳酸血症、肝機能障害、胆汁うっ滞、けいれん、発達遅滞、栄養剤使用などが多かった。稀なものとして慢性腎不全、糖尿病、水晶体亜脱臼での依頼もあった。また成人年齢での高CPK血症や高アンモニア血症の鑑別としての依頼もあった。5年間で約2000件の依頼があり、そのうちメールコンサルトが35件(約1.75%)となっており、シトリン欠損症9例、メチルマロン酸血症1例、全身性カルニチン欠乏症1例、MCC欠損症1例の合計12例(約0.6%)を発見した。全身性カルニチン欠乏症とMCC欠損症については、北海道薬剤師会公衆衛生センターでの新生児マススクリーニング陽性者であり、精査の過程で札幌市衛生研究所に尿有機酸分析のハイリスクスクリーニング依頼がなされたものである。

【結論】

札幌市衛生研究所検査担当とコンサルタント医(3名)は定例の会議以外でも学会や研究会を通して連携がしっかり取れており、メールを利用した迅速な連絡体制が可能となっている。NBS陽性で即精査から即日受診となることも時にある。ハイリスクスクリーニングでの検査結果のコンサルトにはカットオフ値からの逸脱にこだわらずに臨床的な見地からも回答している。課題として、ハイリスクスクリーニング陰性と判断した症例のフォローは主治医に委ねているため、代謝異常が見逃されていないか追跡することも検討していきたい。

 *1国立病院機構北海道医療センター小児科/小児遺伝代謝センター、*2手稲渓仁会病院小児科。


 平成29年度マーケットバスケット方式による食品添加物の一日摂取量調査

第55回 全国衛生化学技術協議会

2018年11月 神奈川県

久保田浩樹*1、滝川香織、関根百合子*2、佐藤睦実*2、氏家あけみ*3、安永恵*3、中島安基江*4、井原紗弥香*4、小川尚孝*5、川原るみ子*5、泉水由美子*6、高嶺朝典*6、恵飛須則明*6、寺見祥子*1、建部(佐々木)千絵*1、五十嵐敦子*1、古庄紀子*1、多田敦子*1、佐藤恭子*1

 日常生活における食品添加物摂取量推定を目的として、我々は平成14年度よりマーケットバスケット(MB)方式を用いた食品添加物一日摂取量調査を実施している。MB方式とは、量販店で購入した食品を、国民の平均的な一日の喫食量に応じて採取し、それらを混合して添加物含有量を分析し、食品添加物の一日摂取量を推定する手法である。平成29年度は、酸化防止剤5種類、防かび剤6種類、製造用剤1種類、結着剤2種類の計14種類の食品添加物を対象として、20歳以上の喫食量に基づく加工食品群からの一日摂取量調査を実施した。

推定一日摂取量が最も高い酸化防止剤は総トコフェロール(6.41㎎/人/日)、次いでジブチルヒドロキシトルエン(0.009㎎/人/日)であった。防かび剤の推定一日摂取量は、3項目(アゾキシストロビン、イマザリル、チアベンダゾール)についてそれぞれ0.00003、0.00001、0.000026(㎎/人/日)であった。製造用剤プロピレングリコールの一日摂取量は10.95㎎/人/日、結着剤リン酸化合物の一日摂取量は267.6㎎P/人/日であった。

また、今回調査対象とした保存料及び着色料の対ADI比は最大でリン酸化合物の6.52%であり、安全性について特段の問題はないと考えられた。

 *1国立医薬品食品衛生研究所、*2仙台市衛生研究所、*3香川県環境保健研究センター、*4広島県立総合技術研究所保健環境センター、*5長崎市保健環境試験所、*6沖縄県衛生環境研究所

 


 

 LC-MSによる化学物質分析法の基礎的研究(71)

第27回環境化学討論会

2018年5月 沖縄県

折原智明、伊藤朋子*1、山本道方*2

 GC-MSでは測定困難な環境中化学物質について、LC-MSの適用可能性を検討した。当市では環境水中の化学物質について、アジルサルタンの固相抽出-LC-MS/MS法による分析法を検討した。アジルサルタンは高血圧症用の医薬品であり、国内売上上位50物質に含まれる。アジルサルタンはpHによりアニオンにもカチオンにもなり、イオン交換カートリッジによる固相抽出とした。MDL結果より水質試料をpH9.0に調整してOasis MAX Plusにより抽出を行うが、pH2.0に調整してOasis MCX Plus で抽出することも可能であった。LC-MS/MS (機種:Nexera X2/ QTRAP4500) 分析はESI-positiveの他、ESI-negative, APCI-positive及びAPCI-negativeでのイオン化も測定可能であった。この方法を用いて、下水処理水の流入する市内河川水からアジルサルタンを検出した。

 *1岩手県環境保健研究センター、*2和歌山県環境衛生研究センター


 アジルサルタンの分析法開発について

平成30年度化学物質環境実態調査環境科学セミナー

2019年1月 東京都

折原智明

化学物質環境実態調査における分析法開発業務の検討で得られた結果(IDL、MDL、マススペクトル、検量線、添加回収試験、保存性試験、分解性スクリーニング試験、固相カートリッジの検討)について発表を行った。なお、本分析方法は環境省の「化学物質と環境平成29年度 化学物質分析法開発調査報告書」に掲載された。

 

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