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野生のチンパンジーは、複数のオス・メスと子どもたちからなる20~100頭程度の群れで暮らしています。子どもは大人たちの行動を見て、繁殖行動や採食行動、コミュニケーションのとり方や群れの中でのルールなどを学習しながら成長します。
円山動物園では1956年からチンパンジーを飼育していますが、1980年代前半から日中はもちろん夜眠る時も群れで生活する飼育方法を採っています。当時、野生の生活に近い群れ飼育、しかも夜も一緒という方法を採用している園館はほとんどなく、非常に先駆的なやり方でした。しかし、四六時中一緒の場合、餌を沢山食べる個体とほとんど食べることができない個体が出てしまい、極端な摂食量のばらつきが出るおそれがあります。個々の摂食量の管理ができるように、飼育員が檻越しに餌を手渡す方法を採りました。これは飼育員とチンパンジーの深い信頼関係がなければできないことですが、チンパンジー一人一人の健康状態や心理状態を把握でき、また投薬の際には非常に有効であるため、代々の飼育担当者に受け継がれています。
このように野生に近い環境で飼育されているチンパンジーたちは繁殖も順調で、昨年事故で亡くなったエリサを含め5頭のメスが26頭の子供を出産しました。そして、群れの中で最高齢のガチャが1月30日40歳で男の子(サム)を出産しました。(2007年5月2日病死)これは多摩動物園のペコに並ぶ国内の最高齢繁殖記録です。
また、日本動物園水族館協会の動物園技術者研究会において、これら積み重ねてきた群れ飼育やスキンシップに関する知見を平成7年に、平成12年には新しいチンパンジー館の紹介と環境エンリッチメントの取り組みについて報告し、非常に高い評価を受けました。最近では群れ飼育に取り組む園館が徐々に増えています。
(平成19年3月23日・種の保存担当部長 大谷倫子)
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