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更新日:2024年3月21日

ユネスコ創造都市の作家による共同制作プログラム 
「City to City2021:Play!」が終了しました(活動報告/インタビューあり)

City to City2021:Play!

「City to City」は、ユネスコ創造都市ネットワーク・メディアアーツ分野加盟都市によるオンライン国際連携事業で、不確実な時代における持続可能な開発の原動力としての芸術と創造性を支援することを目的としています。

世界のユネスコ・メディアアーツ都市からアーティストを公募で選出し、チームを組んでメディアアーツ作品を共同制作するプロジェクトで、2回目の実施となる今回は13都市*から14人のアーティストが参加しました。

*プログラム参加都市:オースティン(米国)、カリ(コロンビア)、カールスルーエ(ドイツ)、グアダラハラ(メキシコ)、コシツェ(スロバキア)、札幌(日本)、長沙(中国)、ブラガ(ポルトガル)、ヨーク(英国) 、トロント(カナダ)、ヴィボー(デンマーク)、アンギャンレヴァン(フランス)、光州(韓国)

 

City to City2021のテーマは、「Play!」

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コロナ禍によって失われた、遊び心あふれる日常的な人間関係の復帰を心待ちにしている私たち。

自分が住んでいる都市と、そこで生まれる人々の交流やコミュニティをさらに良いものに再構築するために、創造的な人材を役立てることが出来るでしょうか。今までよりも、公正で持続可能な未来を想像することが出来るでしょうか。人間の技術を使って、もう一度遊び方を学べるでしょうか。

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このテーマに基づく制作品の企画案を公募した結果、2021年7月、札幌市の代表アーティストとして岡 碧幸(おか みゆき)さんが選定されました。

夏に行われた全4回のワークショップを経て、14人のアーティストは5つのチームに分かれることになりました。岡さんは、カリ(コロンビア)のアーティスト・Mauricio Diaz氏、長沙(中国)のアーティスト・Yilin Wang氏とチームを組むことが決まり、9月からオンラインでの共同制作が始まりました。

およそ4か月にわたって制作が行われ、2022年1月、ARプログラムと映像作品「The Portal」が完成しました。(プロジェクト概要は公募情報のページからご覧いただけます)

共同制作品「The Portal」概要(作品紹介より)

カリ、長沙、札幌に住む私たちは、物理的に会うことが難しい社会情勢の中、想像を往復させて「The Portal」を生みました。私たちは1つのバーチャルな空間をそれぞれの都市に置くことで分散させ、記録によってそれをまたバーチャルなものにしました。

オンラインの展示では、鑑賞者にも同じPortalが開かれています。同じバーチャルコンテンツは、異なる場所の想像へと通じています。

作品:The Portal

「The Portal」を楽しむために

作品「The Portal」は、ユネスコメディアアーツ都市の共同ウェブサイトにて展示されています。

https://mediaartscities.com/city-to-city-2021/portal/(外部サイト)

作品の視聴には、webブラウザとインターネット環境が必要です。

また、ARコンテンツを体験いただくためには、スマートフォンやタブレットなど、カメラ付きでChromeまたはSafariを使える端末が別途必要となります。

プログラムを終えて ~岡 碧幸さんへのインタビュー~

現在、機械と自然素材を扱うアーティストとしてご活躍されている岡碧幸さん。

City to City2021における、札幌市の代表アーティストとして選定されてから完成作品がお披露目されるまでの約7か月間、プログラムにご参加いただきました。

長期間にわたるプログラムを終えられた岡さんに、参加に対するご感想や作品制作秘話などを伺いました。

 

—はじめにチーム分けに関してお伺いします。2回目のワークショップで、全14人のアーティストが5つのチームに分かれました。なんと最終的な方法はランダムな「あみだくじ」だったようですが、その時の様子はどうでしたか?

 

ランダムに決めることが提案された時、少し驚いたような雰囲気はありました。ただアーティストの数が多く、お互いを知ってチームを分けるには時間が足りないことから、ランダムでチームを決めることにみんなが納得していました。このプログラムに参加しているアーティストは、様々な文化的背景や考え方を持つ他国のアーティストとの共同制作を楽しみにしているため、誰とチームになってもいい、と考えている人が多かったと思います。

 

—あみだくじの結果、岡さんは、コロンビア・カリ市、中国・長沙市のアーティストと3人でチームを組むことになりましたね。

 

カリのMauricioがプロジェクションマッピングなどのスキルや経験を持つアーティストで、長沙のYilinがサウンドに高い知見を持つアーティストだったので、この3人の技術をあわせて何ができるだろうと考えました。ひとりで制作する時よりも、できることや表現の幅がより広がるので制作について考えるのが楽しかったです。

 

—共同制作品「The Portal」はどのように生まれたのでしょうか?

 

最初にMauricioが企画をいくつか提案してくれ、その中から、オンラインで完結でき、かつオンラインとリアルの差を埋められ得るARを選びました。

Yilinが文化的な交流を重視していたこと、私自身がデジタルなものと非デジタル(リアル)なものの融合が好きだったことから、「ARを通してお互いの都市を見る」ようなコンセプトにしました。

対面でのコミュニケーションとオンライン上のコミュニケーションは大きく異なります。例えば対面では、同じ時間、同じ空間を共有することができますがオンラインではそうはいきません。AR空間に見えるオブジェを通して、その差を埋めたり、他の都市が見られたらおもしろいよね、といった意見交換を重ね、The Portalの構想ができあがりました。

 

—共同制作の中で、それぞれの役割分担はどのようなものでしたか?

 

Mauricioが、AR空間に見えるモチーフのデザインやARマーカーのデザインを、YilinがAR作動時の音楽を担当しました。

私は、ARシステムやモチーフのアニメ化、webサイトの構築の他、ARを作動させた時のデモンストレーションの撮影を担当しました。

 

—「The Portal」のウェブサイトから見ることができる動画ですね。これはどこで撮影されたのですか?また、何故この場所を選ばれたのでしょうか?

 

北海道大学です。

チームで撮影場所について、都市の特徴が表れている場所やその都市でよく知られている場所がいいねと話していたことと、撮影時に1.5メートル四方の巨大なARマーカーを設置する必要があったので、広くて有名な場所ということで選びました。

 

—制作の際、特にこだわった点などを教えてください。

 

私たちは3つの都市(国)から集まったチームだったので、それを活かし、3つの文化的背景をすべて融合させることにしました。モチーフや音楽には各文化が融合されているのですが、制作のヒントとして、それぞれの都市の写真やレコーディングした環境音などの素材を共有し合い、訪れたことのないお互いの都市についてイメージを膨らませました。

 

—ARのモチーフとして鳥居などが使われていますが、アイディアは各自で出しあったのでしょうか。

 

モチーフは、共有していた写真などを参考に、Mauricioが各都市をイメージして作ったものです。アジアから遠く離れたコロンビアに住んでいるMauricioがモチーフ制作を担当することで、彼の日本や中国に対するリアルなイメージが見えて面白かったです。

ただ、訪問できない中イメージをもとに作成したものなので、打ち合わせの場で披露してもらった際に、Yilinから「中国にそのようなものはない」というコメントがあったりもしました(笑)。

 

—他国のアーティストとの共同制作ならでは、といった体験ですね。共同制作期間はおよそ4か月でしたが、最も大変だった点は何でしたか?

 

時差です。中国との時差は1時間ですが、コロンビアとの時差は14時間あり、連絡がスムーズにとれなかったり、ミーティングを行うときの時間設定などに苦労しました。

特に、Mauricioとは半日以上の時差があるため、共有した情報も彼が見る頃には鮮度が落ちてしまっているなど、同じ時間を共有しながら進めていくのが難しかったです。

参加アーティスト全員で行われたワークショップや進捗ミーティングが、時差の都合上日本時間の夜中に実施されたことも大変でしたが、一方で、仕事のない夜だからこそ参加できるというメリットもあったと思っています。

 

他都市のアーティストとのミーティングの様子

 

—City to Cityに参加されたご感想などをお聞かせください。

 

オンラインで共同制作を行うのはとても大変なことです。

なので、このような状況じゃないと生まれなかったプログラムであり、この時代にやることに意味があるプログラムだと思っています。

大変なこともありましたが、おもしろい経験ができました!

 

—改めまして、City to City2021:Play!にご参加くださりありがとうございました。

 

国境を越えた往来が厳しく制限される中で、メディアアーツ都市札幌は、他の加盟都市とともに、持続可能な国際文化交流のすがたを探ってまいります。どうぞ引き続き本プログラムにご注目ください。

 

アーティスト紹介

岡 碧幸(おか みゆき)

札幌市生まれのアーティスト。環境哲学と科学技術に基づく思索から、現象/記録やデータ/フィクションを組み合わせてインスタレーションや映像作品を作る。北海道大学農学部卒、英ロイヤルカレッジオブアート情報体験デザイン修了。主な受賞歴にSTRP Award for Creative Technology(2020)、WIRED Creative Hack Award Grand Prix (2021) 、展示歴に「遠い誰か、ことのありか」(札幌文化芸術交流センター SCARTS、2021)など。

 

ユネスコ創造都市ネットワークについて

創造的・文化的な産業の育成、強化によって都市の活性化を目指す世界の都市が、国際的な連携・相互交流を行うことを支援するため、平成16年(2004年)にユネスコが創設。

創造都市さっぽろの取組

札幌市は、文化芸術に代表される創造性を活用し産業振興・まちづくりを進め、人材育成・集積を図ることで、まちを活性化し都市ブランド向上にもつなげる「創造都市さっぽろ」の取組を進め、新しいテクノロジーを活用する「メディアアーツ都市」としてユネスコからも認定を受けています

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