ここから本文です。

更新日:2023年1月25日

札幌市衛生研究所年報-他誌投稿(2014)

病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)病原体解析手法の高度化による効率的な食品由来感染症探知システムの構築に関する研究平成24年度分担研究報告書、30-36、2013

八柳 潤*1、清水俊一*2、坂本裕美子、武沼浩子*3、岩渕香織*4、瀬戸順次*5、鈴木 裕*5、山口友美*6、千葉久子*7、千葉一樹*8、川瀬雅雄*9、足立玲子*10、今野貴之*1

北海道・東北・新潟ブロックの地方衛生研究所にIS-printing systemを普及させると共に、国立感染症研究所に構築されたIS-printingデータベースシステムへの参画を可能とすること目的として、ブロック内地方衛生研究所におけるIS-printing systemの基礎的な精度管理に関する共同研究を実施した。秋田県で分離されたEHEC O157分離株4株から抽出したDNA溶液を供試し、キット付属のプロトコールに従いIS-printingを実施した結果、高分子側のバンドで増幅断片の量が過剰となり、判断が困難となる傾向がみられた。また、条件によりhlyが陰性と判定される問題も確認された。各setの電気泳動に2枚のゲルを使用し、ゲル濃度、アプライ量、泳動時間を最適化することにより、高分子側と低分子側どちらの断片の判定も容易となることが山形県の検討により示され、判定困難な場合はこの条件を試行することが推奨される。今後もブロック内におけるIS-printing systemの条件検討と精度管理を継続する必要がある。

*1秋田県健康環境センター、*2北海道立衛生研究所、*3青森県環境保健センター、*4岩手県環境保健研究センター、*5山形県衛生研究所、*6宮城県保健環境センター、*7仙台市衛生研究所、*8福島県衛生研究所、*9新潟県保健環境科学研究所、*10新潟市衛生環境研究所


白菜浅漬による腸管出血性大腸菌O157食中毒事例について-札幌市

病原微生物検出情報、34(8)、126、2013

坂本裕美子、廣地 敬、大西麻実、伊藤はるみ、高橋広夫、宮北佳恵*1、細海伸仁*1、片岡郁夫*1、久保亜希子*2、池田徹也*2、小川恵子*2、長瀬敏之*2、森本 洋*2、清水俊一*2、伊豫田淳*3、寺嶋 淳*3

2012年8月、札幌市を中心として白菜浅漬による腸管出血性大腸菌O157:H7(VT1&VT2)食中毒が発生したのでその概要を報告する。

*1札幌市保健所、*2北海道立衛生研究所、*3国立感染症研究所


白菜浅漬によるO157食中毒事例のおけるIS-printing system解析例について

病原微生物検出情報、34(8)、126-128、2013

小嶋由香*1、佐藤弘康*1、池田徹也*2、瀬戸順次*3、鈴木 裕*3、小西典子*4、齋木 大*4、松本裕子*5、田辺純子*6、坂本裕美子、勢戸和子*7、伊豫田淳*8、寺嶋 淳*8、大西 真*8

2012年8月、北海道で高齢者施設を中心とした腸管出血性大腸菌O157:H7(VT1&VT2)の集団感染事例が発生し、原因食品と断定された白菜浅漬(「白菜きりづけ」)を提供したホテル等の宿泊客にも感染が拡大することとなった。同時期に北海道以外の都道府県から北海道を訪れて感染したと疑われる事例がいくつか発生した。これらの事例の関連性について、分離菌株を対象にIS-printing systemを用いて解析を行った結果について報告する。

*1川崎市健康安全研究所・消化器・食品細菌担当、*2北海道立衛生研究所・細菌グループ、*3山形県衛生研究所・微生物部、*4東京都健康安全研究センター・微生物部、*5横浜市衛生研究所・検査研究課、*6奈良県保健研究センター・細菌担当、*7大阪府立公衆衛生研究所・細菌課、*8国立感染症研究所・細菌第一部


A community cluster of influenza A(H1N1) pdm09 virus exhibiting cross-resistance to oseltamivir and peramivir in Japan, November to December 2013.

Euro Surveill. 2014 Jan 9;19(1). pii: 20666.

Takashita E*1, Ejima M*1, Itoh R*1, Miura M*1, Ohnishi A, Nishimura H*3, Odagiri T*1, Tashiro M*1.

Six influenza A(H1N1)pdm09 viruses were detected in Sapporo, Japan, between November and December 2013. All six viruses possessed an H275Y substitution in the neuraminidase protein, which confers cross-resistance to oseltamivir and peramivir. No epidemiological link among the six cases could be identified; none of them had received neuraminidase inhibitors before specimen collection. The haemagglutinin and neuraminidase genes of the six viruses were closely related to one another, suggesting clonal spread of a single resistant virus.

*1 Influenza Virus Research Center, National Institute of Infectious Diseases,*2 Virus Research Center, Sendai Medical Center


2013/2014シーズン初めに札幌市で検出された抗インフルエンザ薬耐性A(H1N1)pdm09ウイルス

病原微生物検出情報、35(2)、42-42、2014

高下恵美*1、江島美穂*1、伊東玲子*1、三浦 舞*1、小田切孝人*1、田代眞人*1、大西麻実、川西稔展*2、西村秀一*3

2013/2014シーズン当初の日本国内におけるインフルエンザウイルスの検出は、A(H3N2)の割合が最も多く、次いでA(H1N1)pdm09、B型ウイルスの順となっている。札幌市では12月27日までにA(H3N2)ウイルス13株、A(H1N1)pdm09ウイルス5株、B型ウイルス1株が分離されている。A(H1N1)pdm09ウイルスの抗インフルエンザ薬耐性株サーベイランスにおいて、札幌市で検出されたA(H1N1)pdm09ウイルスがいずれもNA蛋白にH275Y耐性変異をもち、オセルタミビル(商品名タミフル)およびペラミビル(商品名ラピアクタ)に耐性を示すことが確認されたので報告する。

*1国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター、*2札幌市保健所感染症総合対策課感染症総合対策係、*3国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター


バイオテロ危機発生時への対応―検体調整法およびスクリーニング法の普及、バイオテロ検査マニュアルの作製と検査担当者の育成―

厚生科学研究費補助金(新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業)バイオテロに使用される可能性のある病原体等の新規検出法と標準化に関する研究平成23年度~平成25年度総合研究報告書 123-127、2014 

田中智之*1、三觜 雄、千葉一雄*2、小林慎一*3、杉浦義昭*4、山下育孝*5、飯塚節子*6、小河正雄*7、三好龍也*1、宮崎義継*8、梅本 隆*8、田辺公一*8、倉根一郎*8

平成23-24年度にはバイオテロ関連特定病原体中の真菌感染症に主眼を置き検査法の習熟を図った。平成23年度には一般真菌の網羅的スクリーニング検査検出キットを用いて、健康機器発生時対応を想定のもと、操作性、精度等の評価と共に真菌検査法になれた。平成24年度には真菌感染症の中で最も致死率の高いコクチジオイデスを対象に病原体の網羅的検出法の構築と操作性、問題点の解析を行った。この問題点の解決を目的に平成25年度には、国立感染症研究所真菌部の指導の下、研究協力員の実技研修を行い、検出技術の向上を図った。この実技研修は、地方衛生研究所の各ブロックにおける指導的立場で危機対応を可能にするものであり、また作成された「バイオテロ対策病原性真菌検査マニュアル」はバイオテロの可能性のある真菌検査対応の一助となると考える。

*1堺市衛生研究所、*2福島県衛生研究所、*3愛知県衛生研究所、*4神戸市環境保健研究所、*5愛媛県立環境科学研究所、*6島根県保健環境科学研究所、*7大分県衛生環境研究センター、*8国立感染症研究所


高速液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析計による先天性副腎過形成症スクリーニング二次検査法の検討

日本マス・スクリーニング学会誌、 23(1)、85-92、2013

藤倉かおり、山岸卓弥、田上泰子、花井潤師、高橋広夫、佐々木泰子、田島敏広*1、母坪智行*2、福士勝*3、重松陽介*4

先天性副腎過形成症スクリーニングの偽陽性率を減少させ、より精度の高いスクリーニングシステムを構築することを目的に、高速液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)による17-ヒドロキシプロゲステロン(17OHP)を含む計5種の関連ステロイドを測定する方法を検討した。本法による測定時間は従来の二次検査法であるELISA抽出法やHPLC法に比べ大幅に短縮された。この方法をスクリーニングの二次検査に導入した結果、再採血率・精密検査率ともに導入前に比べ半減し、現在まで見逃された患者の報告もないことから、本法はスクリーニングの偽陽性の低減に極めて有効であった。

*1北海道大学病院小児科、*2NTT東日本札幌病院小児科、*3札幌イムノダイアグノスティックラボラトリー、*4福井大学医学部看護学科


タンデムマス・スクリーニングのカットオフ値 -各指標の施設間差の検討-

日本マス・スクリーニング学会誌、 22(1)、 49-60、2012 

花井潤師、吉永美和、高橋広夫、佐々木泰子、野町祥介*1、佐々木純子*2、磯部充久*3、石毛信之*4、穴澤 昭*4、安方恭子*5、木下洋子*6、山上祐次*6、酒本和也*7、田崎隆二*8、小林弘典*9、山口清次*9、重松陽介*10

タンデムマス・スクリーニングにおいて、カットオフ値の標準化の可能性を統計学的手法により検討するため、検査データから直接ヒストグラムや基礎統計量を計算することができるワークシートを作成し、事業もしくは研究的にタンデムマス・スクリーニングを開始している国内10施設の各指標の正常値の分布、陽性率等を比較した。その結果、前処理条件、測定機器、内標の違いなどにより、正常値の分布、陽性率は必ずしも同一の傾向を示さない場合があることが確認された。そのため、カットオフ値の設定に当たっては、前処理法や測定条件に応じて、各指標ごとの正常値分布や陽性率を確認し、適正なカットオフ値を設定するとともに、一定期間ごとに、正常値分布を確認するなどの内部精度管理を実施すべきであると考える。

*1札幌市環境局、*2(公財)岩手県予防医学協会、*3さいたま市健康科学研究センター、*4(公財)東京都予防医学協会、*5(公財)ちば県民保健予防財団、*6(公財)神奈川県予防医学協会、*7(一財)大阪市環境保健協会、*8(一財)化学及血清療法研究所、*9島根大学小児科、*10福井大学


新生児期におけるろ紙血中アシルカルニチンの変動要因

日本マス・スクリーニング学会誌、 23(1)、 75-83、2013 

花井潤師、吉永美和、高橋広夫、佐々木泰子、野町祥介*1

タンデムマス・スクリーニングを受検した新生児の検査結果をもとに、ろ紙血中アシルカルニチン類の変動要因を調査した。その結果、新生児期の生理的な要因により、アシルカルニチン類が変動することが確認され、特に、採血日齢が7日以上、採血時体重が1500g未満、体重増加率が-10%未満の児では、変動が20%を超える指標も認められた。これらの条件に該当する例では、特に正常群の分布とカットオフ値が近接している指標にあっては、判定に注意が必要であることが示唆された。

*1札幌市環境局


札幌市のタンデムマス・スクリーニング - 開始後8年間の検査結果と札幌市の特徴-

特殊ミルク情報、 49、88-95、2013 

吉永美和、太田 優、手塚美智子、斎藤翔太、花井潤師、高橋広夫、宮田 淳、長尾雅悦*1、田中藤樹*1、小杉山清隆*2

札幌市では、2005年4月からタンデム質量分析計による新生児マス・スクリーニング(タンデムマス・スクリーニング)を研究事業として開始し、2010年8月には母子保健事業へ追加した。2013年度現在、札幌市の新生児マス・スクリーニングの対象疾患は26疾患である。開始から2012年度までの8年間の検査結果とともに、札幌市のタンデムマス・スクリーニング体制について紹介した。

*1国立病院機構北海道医療センター小児科・臨床研究部、*2手稲渓仁会病院小児科


Results from 28 Years of Newborn Screening for Congenital Adrenal Hyperplasia in Sapporo

Clinical Pediatric Endocrinology, 23(2), 35-43, 2014

Morikawa S*1, Nakamura A*1, Fujikura K, Fukushi M*2, Hotsubo T*3, Miyata J, Ishizu K*1, Tajima T*1

We summarize here our experience and results from newborn mass screening (MS) for congenital adrenal hyperplasia (CAH) from 1982 to 2010 in Sapporo City. During these 28 yr, the level of 17-OHP was determined in MS of samples from 498,147 newborns. During this period, 26 individuals with 21-OHD were detected. Of the 26 CAH, 20 were classified as having the salt-wasting (SW) form, 4 were classified as having the simple virilizing form (SV), and 2 were classified as having the nonclassic form. Therefore, the frequency of the classic type of CAH was 1 in 20,756. In order to improve the effectiveness, we employed HPLC as a second tier test from 2000. During this period, among the recalled babies, 75.4% were born prior to the 37th wk of gestation age, and the recall rate was 5.38% for premature neonates and 0.06% for mature neonates. MS for CAH in Sapporo is effective for the identification of the SW and SV forms of 21-OHD. However, the recall rate of premature babies is still high after the introduction of HPLC as a second tier test.

*1 Hokkaido University School of Medicine *2 Sapporo Immunodiagnostic Laboratory *3 NTT East Japan Sapporo Hospital

このページについてのお問い合わせ

札幌市保健福祉局衛生研究所保健科学課

〒003-8505 札幌市白石区菊水9条1丁目5-22

電話番号:011-841-2341

ファクス番号:011-841-7073