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エゾフクロウの有精卵(39.5g ~43.0gくらい)
円山動物園では、オオワシやシマフクロウといった「希少種」だけでなく、エゾフクロウやオオタカといった「普通種」も含めて多様な猛禽類の飼育・繁殖技術の確立に取り組んでいます。
猛禽類は、「メスは体が大きくて気が強く、オスは体が小さくて気が弱い」という傾向があります。
このため、メスが優位な環境下でペアリングをするとオスがひどく攻撃されてしまったり、餌を食べさせてもらえないといった問題が生じることがあります。
このため、ペアリングにおいては、「年上で体が大きく強気なオス」を先に獣舎に入れ、その後に「年下で体が小さくおとなしいメス」を入れると比較的うまくいきやすいということが経験的に言われています。
ただ一方で、そのような理想的な条件の個体が揃うことは稀なため、今年は現在飼育している個体でペアリングを試みました。
繁殖の方法は一つではないため、試行錯誤しながら最適な方法を探ることも飼育の醍醐味のひとつです。
担当者の仕事は、個体の由来や年齢、飼育環境などの全体性を考えながら事前に行う「お膳立て」と良い「ムード作り」です。その後は個体の様子や安全を見極めつつ、動物たちに任せるしかありません。
では、当園で新たに組んだ猛禽類3種(エゾフクロウ・オオタカ・シロフクロウ)のペアの近況をお伝えします。
■ エゾフクロウ(飼育場所:フクロウとタカの森)
「鳳」(2022年生まれ ♂)×「コピ」(2023年生まれ ♀)
→ 年上のオス × 年下のメスという好条件ペア。
今年からのペアリングでしたが、初年度から4つの有精卵を産卵しました。今年は孵卵器で温湿度管理を行い、そのうち1つの卵を巣箱に戻しました。孵化までは確認できましたが、孵化直後に「コピ」♀がヒナを足でつかんでしまいました。その後、巣箱が空になっていたため、おそらくヒナを傷つけてしまったものと思われます。
初めての繁殖で育て方がわからなかったのか、ヒナが弱く生まれてきたのか、原因は特定できませんでしたが、交尾から孵化までのプロセスを経験できたことはこのペアにとって良い経験になったと思われます。来年はより入念なお膳立てを行い、再度繁殖に挑戦したいと思います。
■ オオタカ(飼育場所:猛禽類繁殖研究棟(非公開施設))
「富山」(2022年生まれ ♂)×「湧別」(2021年生まれ ♀)
→ 年下のオス × 年上のメス。
メスは野生で事故に遭い飛翔困難なため、オスとのパワーバランスがとれると期待しました。
オオタカは1~3歳で性成熟に達しますが、オスにはまだその兆しが見られず、求愛や交尾の行動は確認できませんでした。一方、メスは地面に巣を作って産卵・抱卵したものの、すべて無精卵でした。
■ シロフクロウ(飼育場所:フクロウとタカの森)
「ライチ」(2023年生まれ ♂)×「アンナ」(2011年生まれ ♀)
→ 年下のオス × 年上のメス。
ライチ♂は繊細な性格で、アンナ♀は気が強いため相性が心配でしたが、ライチは鳴いて積極的にアピールしていました。アンナは卵を産んだものの、オスの存在が気になる様子で、抱卵が安定しませんでした。
シロフクロウは3~5歳で性成熟に達するとされているため、ライチが真っ白な成鳥になる来年以降に、関係が変わる可能性があります。
今年は残念ながらヒナの生育には至りませんでしたが、シロフクロウとオオタカのオスはまだ若いため、これからも長い目でお膳立てをしていきたいと思います。
以上、残念ながら繁殖成功には至りませんでしたが、それぞれのペアに少しずつ前進があり、鳥にとっても飼育担当者にとっても意味のある経験を得ることができたシーズンでした。
今年度の結果をしっかり振り返り、また来年度の取り組みに生かしていきたいと思います。
これからも円山動物園の取り組みへの応援よろしくお願いいたします。
オオタカの卵(48.4~50.0gくらい)
シロフクロウの卵(54.3~55.4gくらい)
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