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ホーム > 動物紹介 > エゾヒグマ館 > エゾヒグマ > エゾヒグマの生態と野生動物との共存について

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更新日:2019年5月15日

エゾヒグマの生態と野生動物との共存について

はじめに

札幌市は面積の約6割が森林で、そこにはたくさんの動植物が暮らしています。
エゾリス、エゾユキウサギ、エゾヤチネズミ、エゾシカ、もちろんエゾヒグマもいます。
札幌市は約196万人が住む日本で5番目に大きい都市ですが、札幌の周りにはまだ動物が暮らせる豊かな自然があります。
エゾヒグマのお話を通して野生動物との共存について考えてみましょう。 

ページ内各章へのリンク

 

 エゾヒグマの特徴

エゾヒグマってどんな動物?

メスの成獣は体長約1.5m、体重100~200kg、オスの成獣は体長約2.0m、体重150~400kgで陸上の野生動物では国内で最大です。
基本的に単独で行動し、親子連れ、親離れ間もない時期の兄弟、繁殖期やクマ同士の争い時、サケの遡上する時期など豊富な餌が得られる時期を除けば複数でいることはありません。
オスの行動範囲は数100平方キロメートル(㎢)もあります。メスはオスに比べて行動範囲が狭く数十平方キロメートル(㎢)の中で暮らしていてその中で繁殖します。

ヒグマ体長イメージ【体の大きさ】

・オス:約2.0m

・メス:約1.5m

【体重】

・オス:約150~400kg

・メス:約100~200kg

※産まれてすぐは400gくらい

ヒグマイメージ写真1クマの爪は成獣で5~8cmもあり、前足のほうが長いです。木に登ったり、冬眠穴(とうみんけつ)や草の根を掘ったり重い石をひっくり返して昆虫を食べるのにとても便利です。
クマは個性的な生き物です。「ヒグマの知能はイヌと霊長類の間」といわれています。
「高知能=好奇心旺盛=高学習能力」という特性から、一頭一頭の個性のばらつきがとても大きいです。
被毛も様々で黒や茶色、背中が金毛や銀毛、首の周りに白い月の輪模様があるクマもいます。
また、食べ物に関しても個性的で、母グマと行動をともにしながら食べ物を学習し、「食の受け継ぎ」がされていきます。道東ではミズバショウの食痕がよく見られますが道南ではあまり積極的に食べられていないなど、地域差もあるようです。

エゾヒグマの形態的特徴と能力

鼻、耳、目について

鼻はとてもよく利きます。食べ物を探す手がかりにするのはもちろんですが、周りのにおいを嗅ぎ他のクマの動向を察知し身の安全を確認するためにも鼻は役立ちます。
耳についてはあまり良く分かっていません。クマ鈴などで積極的に人の存在を知らせる必要があることから人間程度かもしれません。
場合によっては、立ち上がって、音とにおいで安全確認をします。
目は極端に良いわけではなく、人と同じ程度ではないかと考えられています。正確な視力はよくわかっていないようですが薄明薄暮に活発なことから夜目は利くのではないかと考えられています。また、動くものに対する反応は良いようです。

ヒグマ足イメージ足について

円山動物園のクマのパッド(肉球)は、やわらかくてツルツルしていますが、野生のクマのものはざらつきがあったり、薄皮が剥がれてぺりぺりしていたり、シワシワだったりと、いろいろあるようです。また、クマは人と一緒でかかとをついて歩く動物(「蹠行性」といいます。)なので、後ろ足で立って少しなら二足歩行することもできます。
驚くのはクマの走るスピードです。時速40~50キロで走るそうです。これは、自動車に攻撃をしてきたときに計測したスピードです。
クマには走るものを追う性質があるので、人が走って逃げるのは危険な行為です。仮に走って逃げたとしてもすぐに追いつかれてしまうスピードです。

歯について

雑食性のクマですが犬歯はやはり発達していて、「食肉目」の仲間を思わせるような迫力があります。でも、奥歯を見てみると人間の奥歯のように、食べ物を噛み砕いたり、すりつぶしたりすることに適した歯になっています。

ヒグマ歯イメージ1 ヒグマ歯イメージ2

 エゾヒグマの生態

ヒグマの1年【成獣になるまで】

1~2歳まで母親と一緒に行動します。

4~5歳になると繁殖が可能になります。

 

【1年の流れ】

3~5月:冬眠明け

5~7月:繁殖期

8~9月:山の中の餌が少なくなるので農業被害が発生しやすくなる。

10~11月:食いだめ

12~3月:冬眠・出産

食べ物について

クマは動物分類としては「食肉目」という仲間に入ります。
時にはシカやウサギ、ネズミや昆虫なども食べますが、最も多く食べているものは草や木の実などの植物です。
季節に沿って食べ物を見てみましょう。 

冬眠から覚めたクマたち。
前年に落ちたドングリや芽吹き始めた草本類であるフキやイラクサ、ミズバショウやザゼンソウなどを食べます。
冬眠中に出産した母グマは少し遅めに仔グマと行動を開始します。
この時期は人も山菜採りで森に入ることが多いので出会わないように注意が必要です。

春:フキ(写真:フキ)

大きくなったフキやオオウバユリの根やオオハナウドの茎を食べたりします。また、野イチゴなどのベリー類やサクラの木の実なども食べます。
クマのプーさんのハチミツ好きはよく知られていますが、実際のクマはハチミツだけでなくハチの子も食べます。アリもクマにとって重要な食物です。これらの社会性昆虫は巣をつくり、一度に大量の個体数が手に入ることが特徴です。
暖かくなって昆虫の活動が活発になると朽木や石の裏に巣を作っているアリの巣を暴いて食べたり木の下から這い出てくるセミを食べたりします。そのため、その場所には掘り起こした食べ跡が見つかったりします。
8~9月は山の中の餌が少なくなり、農業被害件数や農地近隣の出没情報が最も多くなります。

夏:オオハナウド アリの巣を暴いた跡(写真左:オオハナウド、写真右:朽木にあるアリの巣を暴いた跡(知床))

木の実がなりコクワやヤマブドウ、ドングリなどの栄養のあるものがたくさん実ります。冬眠前のクマも栄養を体に蓄えるためにさらにモリモリ食べます。
この時期は春の山菜取り同様、秋のキノコ狩りに森へ入る人が多いので出会わないように注意が必要です。

秋:コクワ 秋:オニグルミ(写真左:コクワ、写真右:オニグルミ)

また、クマはサケを食べるイメージがあると思いますが、実際にサケを食べるクマはそれほど多くありません。
現在、人工ふ化事業のための親魚捕獲が行われている河川が多く、普通、河川の下流域から中流域にウライと呼ばれる魚止め柵(サケを捕獲するためのワナ)で川を仕切り、上流に遡らせないようになっています。クマの分布は主に山間部で河川の上流部に限られているため、サケがクマの口に入ることは通常ないでしょう。川の増水などによってウライが取り除かれた時にのみサケは上流に遡り、クマはこれらを捕食することができます。

知床半島は北海道で最もサケ・マス類を捕獲しやすい環境ですが、カラフトマスの遡上が始まる8月後半からクマの栄養状態が一気に上昇に転じます。8月後半から9月にかけてたくさんのサケ類を捕食し、9月に入るとヤマブドウやコクワといったフルーツやドングリも実り始めます。

この時期は一日に約2キロも体重を増やして冬眠に備えます。この約2か月で体重を2倍くらいにまで増やす個体もいるようです。ヒトの場合、いっきに太ると、肝臓に脂肪がたまる“脂肪肝”や、血液中の脂肪分が上昇して血液の流れが悪くなる“動脈硬化”などが起こりますがクマの場合このようなことは一切ありません。

サケの豊富な地域でも、河川の近くのクマはたくさんのサケを利用していますが、少し離れた地域ではドングリなどで栄養を蓄えます。わざわざ移動するよりも効率的な行動をすることが多いようです。札幌近辺のクマは、たくさんのサケが山奥まで遡上する川がないので食べていないようです。

道内各地でウライを撤去し、サケが自由に川を上れるようにするなど、サケの自然産卵を促す取り組みが行われています。当初は漁業者などからサケが減るのではないかと不安の声も上がりましたが、仕掛けを撤去した川の1つで行われた調査では、ふ化場で生まれた稚魚と同じだけの稚魚が自然産卵で生まれたと見られることがわかりました。効果の検証ができるようになるまでには時間がかかるということですが、資源の増加が期待されています。

皮下や内臓に充分脂肪を蓄えることが出来たら、11~12月頃冬眠に入ります。
冬眠直前には食べるのを少し控え、体を整えて冬眠穴(とうみんけつ)に入っていきます。

クマの冬眠穴 冬眠穴内部(写真左:クマの冬眠穴(知床)、写真右:冬眠穴の内部)

繁殖について

5~7月に繁殖のシーズンを迎えます。
オスグマは子孫を残すために行動範囲を広げ、個体によって微妙に発情期の違う複数のメスグマをみつけて交尾をします。
一方メスグマですが、交尾後、すぐに受精卵は子宮に着床しません。これは着床遅延といって、秋に栄養をたくさん蓄えることができなければ妊娠できない仕組みになっています。なぜなら、冬眠期間中に出産をするためしっかり栄養を取っていないと、出産のときと出産後に、飲まず食わずでお乳をあげるための体力が持ちません。そのため、栄養状態が悪いと妊娠できないこともあるのです。
冬眠中に出産を行うのはクマ類のみに見られる非常に珍しい現象です。栄養が良好で、しっかりと皮下脂肪をつけたメスグマは11~12月ごろ子宮に受精卵が着床し、冬眠の時期、冬眠穴の中で1月末~2月上旬ごろ出産します。

通常一度に1~3匹出産しますが、だいたい2匹のようです。
産まれたときには約400gでまだ目も開いていません。
母グマは春まで飲まず食わずでお乳をあげます。
春には4~5kg位になり生まれた時の10倍位に成長して母親と一緒に初めて外に出ます。
そして、母グマと一緒に行動することで食べられるものや危険なことなど生きていくための知識や知恵を身につけ、体もどんどん大きくなります。 

オスグマは子育てには一切参加しません。それどころかオスグマの存在は仔グマにとって非常に危険な存在ですらあります。
仔グマを連れた母熊は発情(オスを受け入れること)をしませんが、仔を殺すことで母グマの発情が戻ってくることから、オスグマは自らの遺伝子を残すために仔グマを食べてしまうこともあります。
そのため、母グマはとても警戒心が強く危険です。もし、仔グマを見つけても絶対に近づかないでください。母グマは仔グマを守るため、命がけで激しい攻撃してくることでしょう。 

冬眠について

エゾヒグマが冬眠をすることはよく知られています。
冬眠は乏しい食料資源など、厳しい冬を乗り切るために発達したクマの生態の一つです。
クマたちは冬になると冬眠穴の中にはいってあまり動かずにエネルギー消費を抑えて冬を過ごします。 
冬眠中は飲まず食わずですが、心拍数や呼吸数を低く保ち、体の脂肪を代謝していきます。

冬眠する動物としては、他にシマリスなどがいますが、彼らはあまり体に脂肪を蓄えません。その代わりどんぐりなどの食物を貯食します。
秋から翌年の春にかけて冬眠中は、時々、目を覚まして食事をしたり排泄したりします。これを“中途覚醒”といいます。
シマリスのように体に脂肪をためない冬眠は少数派です。地下巣に、餌のどんぐりと巣材の枯れ葉をしきつめて丸くなって冬眠します。巣室の3分の2は貯食した餌です。
活動時には約38度ある体温が、冬眠時は約5度まで下がります。呼吸数も冬眠時は20秒に一回に下がり、約10日に一回目覚めて、食事と排泄をします。

一方、クマの冬眠は他の冬眠する哺乳類に比べ体温の低下がわずかで、4~5度しか下がらず、32~33度程度になります。また、冬眠中に猟師など人の気配を察知したとき、体温を上昇させることで素早く対応できます。このため「冬ごもり」として、冬眠と区別されることもあります。

また、冬眠中には排泄もしません。
おしっこは膀胱で再吸収して、タンパク源として再利用しますが、アンモニアの処理など、まだわかっていないこともあります。
ウンチはお尻に「留糞」という硬いウンチが詰まったままで、冬眠が明けたときにその硬いウンチを出します。
そのため、冬眠穴の中は清潔に保たれています。

3月下旬頃からクマが雪上を歩いた跡が観察されるようになり、4月下旬まで冬眠明けが続きます。
冬眠から覚める時期は性や齢によってばらつき、最も早く活動を始めるのはオス、次に単独のメス、0歳子を連れたメスが冬眠穴を離れるのは最も遅くなります。
これは小さく生まれた仔グマが歩きまわったり、食物を採取したりするのに十分成長するのを待ってから穴を離れるためであると考えられています。
北海道においても、以前行われていた春期捕獲個体の性齢構成から、子連れ個体が捕獲されるのは単独の成獣や亜成獣より遅いという傾向が表れています。

冬に出歩くクマ

札幌では、あまり真冬にクマの痕跡が見られることはありませんが、冬に行動するクマが確認されることがあります。
なぜでしょうか?
これまで北海道では「餌不足により穴持たず」などといい、冬眠開始は餌の豊富な時に早く、乏しいときには遅くなると考えられていましたが、各国での研究からこの考えはむしろ逆で、食物の欠乏がおこると、冬眠開始はより早まることがわかってきました。
最近の一般的な解釈では、ミズナラの堅果など、クマにとって主要な食物が凶作な年ほど、早めに採食行動を切り上げて冬眠に入るようです。

月別ヒグマ出没件数(年度別)

 実は身近なクマたち

札幌にもクマが生活しているの?

札幌市ヒグマ出没情報(札幌市公式ホームページ)を見ると、札幌にもたくさんのクマがいることがわかります。

クマ出没マップ
札幌市の10区のうち、森林とつながっている6区(中央区、豊平区、清田区、南区、西区、手稲区)でフンや爪跡、足跡、食べ跡などクマの出没が確認されています。
札幌は道内のほかの都市と違って市街地の周りに大きな耕作地や放牧地、草地などがなく、たくさんの人が住んでいる住宅地とクマの住む森林が直接つながっていて、緩衝地帯が少ないことがクマが人里近くに出てきてしまう要因の一つです。
ヒトと野生動物の距離が近すぎるとお互いにとって不幸な出会いが起こる頻度が急増します。

クマはとても賢いので、一度でも、ヒトの暮らす場所で簡単に食べ物が手に入ることがわかると、何度も山から下りてきてしまいます。

クマに出会わないための基本ルール

野山に入る際には、事前に札幌市ヒグマ出没情報(札幌市公式ホームページ)を確認する

単独行動は避け、複数で行動する。

複数で行動すれば自然に騒がしくなり、クマとのバッタリ遭遇が少なくなります。
仮に出遭ったとしても単独行動に比べ、心理的にも物理的にも有利になります。
複数人で手をつなぎ、横に広がるのも大きく見えて有効です。人間側がパニックになって逃げだすことを防ぐ効果もあります(クマは逃げるものを追う習性があります)。

鈴など音の出るものを鳴らす

登山をする人や、環境調査や測量などで山に入る人は「クマよけ鈴」をつけています。渓流釣りの方は「笛」をよく持っています。
山に入るときはラジオや声、手をたたくなど音をだして人の存在を知らせてください。
自然界にない音なので注意深いクマは警戒して遠ざかっていくといわれています。 

朝夕など薄暗いときは行動しない

夜間のほか、早朝・夕方・霧・雨などの視界の悪い時も危険です。
ほとんどのクマは人間の接近を感じ取るとすぐに遠ざかりますが、あたりの状況が分かりにくいときはバッタリ遭遇が起こりやすくなります。 

糞や足跡など痕跡を見つけたら引き返す

糞、足跡のほかにも食痕、爪痕、草を踏み分けた跡、においなどに注意しましょう。

食べ物やゴミは必ず持ち帰る

人が食べるおやつの空袋やジュースの空き缶のにおいにも誘引されます。一度、その味を覚えると後から訪れる人をも危険にさらすことになります。

痕跡について

出没注意看板札幌市はクマの出没・痕跡情報をホームページで公開(札幌市ヒグマ出没情報)しています。
また、その場所については札幌市用の「熊出没注意」という真っ赤な看板を立てます。看板には、「○月○日。△△ゲートから200mにてクマの糞発見」などという痕跡発見情報が書いてあります。
これから自分が行こうとしている場所に、近い過去、痕跡や目撃はないかホームページや「出没注意看板」を参考に確認してください。
そして、出没情報があった場合には行先の変更も必要です。

ウンチ

クマは消化能力があまり高くないので、食べたものがそのままウンチとして出てくることが多いです。
春の主食の草を食べたら濃い緑色になり草のにおいがして、夏の糞にはアリやセミの体の一部が、秋にヤマブドウやコクワを食べたらその実がそのまま残っています。

林道などで両手いっぱいの泥を道に置いたようなウンチを見つけたらクマのウンチかもしれません。
ちなみにエゾタヌキは「ため糞」といって、複数のタヌキが同じ場所にウンチをします。一見クマのウンチのように大きく見えるので見間違えやすいですが、下のウンチは古く、上は新しいのでよく観察するとわかります。この場所はエゾタヌキにとっての社交場でウンチを通じて情報交換しているのではと考えられています。

クマが食べたものはウンチとして森の中へ運ばれて、その中に含まれていた種から新たに植物が芽吹き成長するものもあるといわれています。研究結果ではクマの糞からの発芽率は、オオハナウドで地面にそのまま蒔かれたものより24%も高いことがわかりました。
糞を観察するとクマの糞には糞虫(主に哺乳類の糞を主食とするコガネムシ類)が多くみられます。糞虫は土を掘るため、クマの糞がわずかでも土に埋まり、種まきを助けていると思われます。
また、種がクマの消化器を通るときに程よく皮がむかれ糞が肥料になり、発芽率を高めていると考えられています。鮭を食べたウンチも海からの栄養として、森に運ばれ植物を支えている土づくりに役立ちます。

ヒグマのフン(フキなど)(写真:ヒグマのフン(フキなど))

ヒグマのフン(クルミなど)(写真:ヒグマのフン(クルミなど))

タヌキのフン(写真:タヌキのフン)

ウマのフン(写真:ウマのフン)

 

足跡 

クマの足跡などはとても重要な手がかりになります。
前足のパッドの幅からクマの大きさがある程度想定できるからです。過去に捕獲されたクマの計測値を平均にした値があり、それを参考にします。
例えば前掌幅12~14cm位だと「若いオスか大人のメスかな」とか14cm以上は「体重200kgを超える大きなオスかな」などとわかります。

ヒグマ足跡(写真:ヒグマの足跡(前足))

ヒグマ足跡2(写真:ヒグマの足跡(後足))

ヒグマ足跡(ヒトとの比較)(写真:ヒグマの足跡(ヒトとの比較))

爪痕

広葉樹の木やエゾマツなどの針葉樹にも爪痕はみられますが、よく目立ってみられるのは、樹皮がつるっとしているトドマツに見られることが多いです。
木の上までついている爪痕はつる性植物のヤマブドウやコクワやキノコを登ってとった痕、大人の背丈くらいの高さにある爪痕は、マーキングではないかといわれています。
3~4本くらいの線が縦や斜めに平行についていたらクマの爪痕です。
あわせて、樹皮自体を大きく剥がしていく場合もあり、剥がしたヘリには爪痕が確認できる場合もあります。
同時に背こすり痕も見られることがあり、木の表面や染み出たマツヤニにクマの体毛がついていることもあります。

エゾシカの角痕も同様に見られることがあります。見極めは難しい場合もありますが、線が平行でも、一本一本の線の長さや木の傷の深さが違ったり、線が歪曲していたりする部分があるのでよく観察が必要です。

トドマツに残るクマの爪痕(写真:トドマツに残るクマのツメ痕。地面から60cmと1m(定山渓))

剥がされた樹皮と爪痕(写真:トドマツに残るはがされた樹皮とツメ痕。地面から1.9m(定山渓))

エゾマツに残る背こすり跡(写真:エゾマツに残る背こすり跡。マツヤニに付着したクマの体毛のかたまり。複数のクマが利用していた様子(標津) 

 クマの研究と保全

遺伝子

最近の遺伝子解析から北海道には3つの系統のクマが生息することがわかっています。
道央、道北に生息するクマは東ヨーロッパのヒグマとタイプが近く、道東もそのタイプに似ています。道南はチベットの系統に近く、知床にはアラスカ東部でしか見つかっていないタイプと共通することがわかってきました。このように北海道は狭い地域に異なるタイプのDNAを持つクマが生息する、世界でも珍しい島であることがわかりました。これはタイプの異なるヒグマ集団が3回にわたって、異なる時期に北海道へと渡ってきたということを示しています。

ヒグマ遺伝子マップ

札幌市を含む石狩西部に生息するヒグマは環境省レッドリスト2015、北海道レッドリスト、札幌市版レッドリスト2016で保護が求められる地域個体群とされています。

ヒグマ分布図 

 人とクマの関係

北海道の先住民であるアイヌの人たちは長い間、山の恵みである山菜や木の実、エゾシカの肉など、海の恵みである海獣や魚などを生活の糧として生きてきました。
その中で野生動物とのかかわりを見極めクマとも上手に付き合ってきました。
クマとの事故に備え、手作りのイタドリの笛を吹きながら歩いたり接近戦での防衛のためタシロと呼ばれるナタを持ち歩くなど緊張感をもって自然と付き合ってきました。
特にクマに関しては、キムンカムイ(山の神)と尊敬し敬愛する一方で、人の生活に悪さをするクマはウェンカムイ(悪い神)として徹底的に懲らしめたそうです。

アイヌの話 動物とヒトの共生

 ヒグマは山の神様(キムンカムイ)であり、大切にしなければならない。

 神様は不正を嫌うので、人間も日頃から行いを正さなければならない。

 神様にも悪い神(ウェンカムイ)がいる。

 悪い神は徹底的に懲らしめなければならない。

アイヌの人々は、問題行動をとる個体の出現を予防することが大切であることや、問題が発生したときには特定個体を対象に適切な対応をするといった危機管理など、現在のヒグマ保護管理と同じ概念をもっていました。

現在起きていることと、その原因

北海道のヒグマ対策は昭和37年十勝岳が噴火し降灰の影響などにより、ヒグマによる人身、家畜、農作物に甚大な被害が発生したため、昭和41年から「春グマ駆除」が始められました。
その後、人身、家畜等の被害の減少や、道内の人口増加による生息環境の悪化から個体数の減少が懸念され、平成元年度に「春グマ駆除」は廃止されました。
特に積丹・恵庭地域、天塩・増毛地域は絶滅のおそれのある地域個体群(LP)として選定されています。
最近では捕獲圧を緩めたことが原因と考えられる人への警戒心が見られない、人を恐れないクマが出現していて「新世代ベアーズ」などと呼ばれています。
ヒグマ目撃・痕跡件数の推移

ウンチを注意深く観察して、もし、ここに人工のものや自然の山にない農作物が入っているとします。
例えばお菓子の小袋やプラスチック製のもの、とうきびやニンジン、売っているような果実などのウンチがあったら、ゴミや農作物をクマが食べてしまった(その味を知ってしまった)ということになり、クマがその味を求めて、人の住むエリアまでたびたび出てきてしまう恐れが高まります。追い払ってもまた戻ってきてしまうこともあります。
もし人の暮らす地域に近かったら、さらに駆除しなければならないということにもなりかねません。クマは食べ物への執着が非常に強いのでゴミを自分の食べ物と思い人里に出てきてしまう場合もあるのです。
そして、お弁当やおやつの残り、飲み残しのジュースなどは、クマにとって自然界では得ることのできないごちそうなので、おいしい食べ物を得るために大胆に行動してしまう傾向が強いのです。 

たいせつなこと
※ごみを山に捨てないこと!

また、農家の方が大切の育てた農作物や果物ですが、クマにとっては「人の畑」などという意識はまったくないので、食べ放題になってしまいます。
札幌市内でも森林に近い郊外では、離農や地主の不在により手入れがされない耕作放棄地や、そこに残された果樹などの増加が、クマの市街地への接近や定着しやすくなる要因になっていると考えられています。 

現在行われている対策

出没状況の情報収集や住民周知

ホームページなどで情報収集し、出没している場所には近づかないようにしましょう。
人々のクマに関する正しい知識が不十分であることにより、人間の不適切な対応が原因となって有害性の高い問題個体を生み出すことは避けなければいけません。

侵入抑制策

被害の多い地域ではクマとの軋轢を未然に防ぐため電気柵で畑を囲うなどの人間側の工夫がされています。

侵入抑制策(電気柵)(写真:電気柵イメージ)

河畔林、防風林など、人里への移動経路の遮断措置

クマは開けた場所を避け、藪などに隠れながら行動する習性があります。河畔林や防風林、耕作放棄地などが手入れされずに草木が繁茂していたり、そこに残された果樹などの増加がクマの市街地への接近や定着しやすくなる要因となっていると考えられています。 

トレイルカメラ(自動撮影カメラ)での画像

獣道などに設置して熱を持つ動体から発する赤外線を感知し、自動で撮影します。

トレイルカメラ 

ヘアートラップ調査

出没場所に残された被毛からDNA分析を行い、個体識別をします。平成27年に行われた調査では、札幌市周辺に少なくとも12頭のメスの定着が確認されています。

ヘアートラップ

 

さまざまな立場の市民がいろいろな価値観をもって生活しており、クマとの共生や危険防止の対策に対しても多様な意見があります。都市部に住んでいる人と農業被害にあっている農家の方とでは意見が違ってくると思います。
クマとの軋轢を減らすためには、その原因を取り除くことが重要です。クマが、人由来のものに餌付いて問題個体になれば、深刻な事態になり、捕獲・排除が必要となります。人由来のものを食べることを経験、学習することで「執着」「常習化」が起こり、それを放置すれば「行動のエスカレート」につながります。ヒグマによる人身事故は、この「行動のエスカレート」が関係していると考えられています。
人が不必要にクマの生息地に近づいて人の存在に慣れてしまうことや、農地、家庭菜園の作物やゴミが誘引物となることにより問題個体を作らないことが大切です。

夜間のゴミ出しはやめましょう

 終わりに

野生動物を管理することは、広大な山や森の中では難しいことです。
また、動物の個体差や地域差もあるので、そういったことも含めると一概に管理というのはたやすいことではありません。
研究者の科学的な生息調査と人間の知恵を活用しつつ、私たちは自然に対してルールを守り、野生動物との折り合いをつけ、お互いに安全に暮らす工夫が必要なのかもしれません。

ヒグマも含め、野生動物はみんな、豊かな自然がないと生きていけないのです。
動物たちは、強いもの、弱いものという関係だけではなく、植物も含めて、みんなが色々な関わりをもちながら生活しています。そうして、絶妙なバランスのとれた「生態系」を作っています。
「生物多様性」という言葉も日常語として定着してきました。
クマは樹木や草本の種子散布者としての役割、サケなどを森へ運ぶ栄養循環の担い手であり、多様で豊かな自然を育てている重要な存在です。
この「生物多様性」を守るために人間の社会が正しい情報を共有し、野生動物と共生していくことが大切です。

(作成日:令和元年(2019年)5月15日)

 参考資料・参考図書

  • 「よいクマわるいクマ」萱野茂・前田菜穂子 北海道新聞社
  • 「ヒグマルールブック」橋田真澄 野生動物教育研究室WEL
  • 「ヒグマ学入門」 天野哲也・増田隆一・間野勉 北海道大学出版会
  • 「ヒグマが育てる森」 前田菜穂子 岩波書店
  • 「知床の哺乳類1.・2.」 斜里町立知床博物館編 北海道新聞社
  • 「ヒグマ」門崎允昭/犬飼哲夫 北海道新聞社
  • 「森の動物たちのお話」大坂義臣
  • 「ヒグマについて学ぼう~森の王者の不思議な生態~」下鶴倫人
  • 「さっぽろヒグマ基本計画」
  • 「北海道ヒグマ管理計画」 

 資料作成にあたっての監修・協力

  • 北海道大学獣医学研究院 坪田 敏男 教授
  • 北海道大学獣医学研究院 下鶴 倫人 准教授
  • 札幌市定山渓自然の村 主任指導員 大坂 義臣さん

 

 

このページについてのお問い合わせ

札幌市円山動物園

〒064-0959 札幌市中央区宮ヶ丘3番地1

電話番号:011-621-1426

ファクス番号:011-621-1428