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更新日:2022年9月14日

シマフクロウの標識調査に同行させてもらいました

シマフクロウ

今年の5月末、当園で行っているシマフクロウの飼育や保全教育に活かすため、環境省が行っているシマフクロウの標識調査に当園職員が同行させていただきました。標識調査は保護増殖事業の一環として行われており、シマフクロウの繁殖状況や移動などの重要な情報を得るために、ヒナに標識(足環)を装着し、個体識別、性別などの個体情報の収集を行うものです。

シマフクロウは国内では北海道及び北方領土に分布し、道東を中心に約165羽が生息しており、絶滅が危惧されています。

シマフクロウの保全のためには、生息地の環境改善や調査、事故防止対策等の他にも、繁殖技術の確立や個体群の維持、そして保全教育のために動物園等での飼育が必要になります。

シマフクロウが住む森

急流を渡る

今回参加できた調査は道東で行われた調査でした。出発地点に車を停め、環境省の職員や研究者の方々と巣箱が設置してある地点に向かいます。

付近はもちろんヒグマの生息地で、クマスプレーを携帯し、代わるがわる「ホーイ、ホイホイ」と声を出しながらの行軍です。何度も川を渡り、急な斜面を横切り、背丈以上の根曲がり竹をかき分け、新緑の森を進んでいきました。川の両側から迫る木と木の間から上空を見るとオジロワシがカラスに追われながら飛んでいます。

 

背負子を背負い巣へ

シマフクロウの巣が近付くと声を潜めさらに進み、巣が見えないほど離れたところで待機し、作業場所を作ります。

ここからはチームの中から2名だけが背中にヒナを入れる背負子を背負い巣に向かいます。

作業を巣のすぐ近くで行ってしまうと、巣の近くに人やヒナの臭いがついてしまい、その臭いに引き寄せられたテンやキツネなどの天敵によってヒナが襲われてしまうからです。

シマフクロウの人口巣

シマフクロウの人口巣

 

シマフクロウ2

 

 

 

 

 

どうやら今年はこの巣で2羽のひなが育っているようです。

1羽は巣の中に、もう1羽はすでに巣立ち、巣のある木の下、切り株にちょこんととまっていたそうです。

 

シマフクロウ到着

 

 

 

ヒナは背負子の中に入り布をかぶせた状態で到着しました。

体は親と同じぐらいの大きさになっていますが、胸や頭にはまだ産毛が残っており「ぽやっ」としたシルエットです。体重や体温を測定し、採血や吸血虫の検査、最後に足環を装着するまで、およそ10分。

動物園でも同様の検査をすることがありますが、スタッフの手際の良さにはとても感心させられました。

 

足環をつける

足環をつける2

 

 

 

1羽目の計測後に2羽目を捕まえに行くのですが、1羽目は後程一緒に戻すために近くの倒木の上に置いておきます。あえて「置いておく」と書きましたが、置かれたヒナは文字通り木の上に置かれたままでした。

動かないこと、これは力の弱い者にとって生き残るために非常に大切な手段です。しかし、シマフクロウのヒナの「動かなさ」は、「見つからないように」動かない小動物の緊張感とは違い、ヒナにして悠然とした風格を備えていました。その周りだけ時間の流れが違うように感じたほどです。

「北海道の森にはシマフクロウが棲んでいる」この事実は自慢してよいことだと思います。

「置いておく」

 

今年の標識調査では41羽のヒナに足環を装着しました。これは1985年の調査開始以来2年連続で過去最高の装着数です。多くの方々の努力が少しずつ実っているのでしょうか。

円山動物園では、動物園でのシマフクロウの繁殖や研究に取り組むとともに、今後は、野生下の状況などについてもお伝えしていきたいと思います。

 

 

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