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更新日:2011年2月26日

動物たちを身近に感じて、彼らを取り巻く環境に目を向けて欲しい

 平成19年4月に初めて動物園内で行われたアースデイ(地球のことを考え行動する日)は、まさに動物園がその方々と協力して行ったイベントでした。30を超えるNPOや企業、グループが環境に関するメッセージを発信しました。その縁がきっかけとなって、その後も色々な形に発展しています。特に円山動物園を会場として様々な環境教育のための指導者育成が行われ始めています。

 例えば、9月末にはプロジェクトWILDなどの環境教育プログラム指導者養成講習会、11月には日本ネイチャーゲーム協会によるリーダー養成講座が続々と開催され、円山動物園は環境に関わる指導者を育てる拠点としても認知されるようになってきました。動物を身近に感じ、学習したい、問題解決への行動をしたいという人に対応する体制が動物園に整っていない。動物園の職員だけですべてを行うのは難しいという問題がありました。そこで、円山動物園はいろんな方たちと協力してこれらの事を進めていくことにしました。話し合ってみると、環境のことを考えている個人、団体の方々の考えと動物園のやりたい事とが、手法は違いこそすれ同じでしたし、さらに嬉しい事にその方々は様々な分野の専門家だったのです。

 動物園は楽しい場所であるべきだと思います。ただ、楽しいだけで終わらず、楽しみながら先に進める場所である必要もあります。今、地球がたくさんの問題を抱えている中、動物園に来ることにより人と動物と環境の絆を感じることができる。認め合い、尊重しあう気持ちが生まれるきっかけを作れる。そんな場所に動物園がなったら、私は大好きな動物園がますます好きになりそうです。

 円山動物園は「わたしの動物園、わたしの動物」と感じてもらえるよう様々な工夫を行っております。これは動物たちを同じ生き物、命として身近に感じてもらいたいということです。そう感じてもらえれば、知らない外国の土地であっても、なじみの深い動物の産まれ故郷というつながりが出てくるのではないかという希望も含まれています。
 例えを言うと、日本国内のどこかで地震や台風があったとして、友人がそこに住んでいる時の方が、その被害や状況が気になりますよね。それと同じ事なのではないでしょうか。地元で起きている問題を理解・体験して、それを通して自分達に直接関係する行動を起こすことまではできるのですが、なかなか他の地域、ましてや外国の知らない土地の問題を自分のことと感じるのは難しい。どうやって自分のこと、もしくは身近なこととして感じてもらえるかがまず大事であり、それがないと行動がついてこないようです。この大事な所で動物園が他の施設に比べ有利な点があります。自分と知らない土地を結びつける役割を動物が取り持ってくれるのです。色々な学校、団体、施設が、世界で起きている環境問題を理解し、自分のことと考え、解決に向かう行動を起こす人を増やそうとしています。これがいわゆる環境教育です。

「動物園は野生動物を飼育してまでやりたい、伝えたいことがある。」

 これって凄いことですよね。文章にすると、イチ飼育係としてさえ重責を感じます。現在たくさんの野生動物を飼育している円山動物園がやりたい、伝えたいこととは何なのでしょうか?もちろん答えは一つではありません。でも大きな要素として、「動物たちを身近に感じてもらい、その動物を取り巻く環境、そして問題を自分に関係あることと考え、自分にできることからその地域の問題解決につながる行動を取ってもらいたい」ということがあるのです。

札幌市円山動物園 飼育展示課 飼育展示一係
ニホンザル担当 朝倉卓也

(平成19年10月26日)

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