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シロテテナガザル「コタロー」
当園ではシロテテナガザルを、父親個体「コタロー(2004年10月26日生まれ、20歳)」、母親個体「ラーチャ(推定22歳)」、メスの仔「ローラ(2021年7月4日生まれ、3歳)」、オスの仔「チャータ(2024年1月27日生まれ、1歳)」の1家族群4頭飼育しています。
シロテテナガザルは野生下の生息数が減少し、レッドリスト:EN(危機、IUCN2008)、CITES:付属書1.に分類されている希少な動物種ではありますが、飼育下での寿命が30~40年と長く、国内園館の飼育可能頭数がひっ迫しつつあることから、将来にわたり遺伝的多様性を維持していくために、JAZAの種管理計画においても血統的に優先度の高いペアに限定した繁殖が進められているところです。
当園の「コタロー」と「ラーチャ」につきましては、これまで優先度の高いペアとして繁殖に取り組んでまいりましたが、「ローラ」「チャータ」の2頭の仔が生育していることから、国内の限られたシロテテナガザル飼育施設の中で遺伝的多様性を維持するため、JAZA生物多様性委員会シロテテナガザル計画管理者とも協議の上、このペアでの繁殖につきましてはいったん休止することとなりました。
繁殖制限については雌雄の別居が最も確実な方法ですが、シロテテナガザルは、野生下では雌雄とその仔からなる家族群で生活するため、良好な動物福祉を確保するためには動物園においても同様に家族群で同居して飼育することが最良であり、そのためには、避妊のための繁殖制限処置が必要となります。
このため、シロテテナガザルに実施することが可能な様々な繁殖制限処置の方法の中から、効果が確実で、かつ動物の体への負担が少ない方法について比較検討を行った結果、北海道大学獣医学部のご協力をいただいたうえで、オスの「コタロー」に、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を枯渇させることにより性ホルモンの産生を抑制し、さらに精子の形成を停止させる「GnRHアゴニスト製剤」のインプラントを皮下に挿入することとしました。
海外の動物園でシロテテナガザルに使用実績のあるこの方法を用いる場合、「コタロー」に全身麻酔は必要ですが、インプラントは直径2mm程度で非常に小さく、注射器で挿入できるため、短時間で処置することができます。また、「コタロー」が今後繁殖に取組む必要があるときは、インプラントを除去すれば、再び繁殖能力を取り戻すことも可能です。
以上のことから、「コタロー」の所有園のご了承をいただいたうえで、2025年5月31日、「コタロー」に「GnRHアゴニスト製剤」のインプラントを挿入する繁殖制限処置を実施しました。処置から8週間は繁殖能力が持続している可能性があるため、現在は、ラーチャ達と互いに見える場所で、分けて飼育しております。8週間が経過した後は、再度家族群として同居を再開する予定です。
今後は北海道大学獣医学部のご協力のもと、性ホルモン濃度を継続的に測定し、インプラントの効果を確認していくこととしております。
円山動物園では今後も、飼育動物の良好な動物福祉の維持と向上に努めるとともに、JAZAや他園館と相互協力しながら希少な動物種の繁殖・保全を図ってまいります。
皆様のご理解をどうぞよろしくお願いいたします。
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