札幌市の図書館 > よもやまとしょかんばなし > 第30回 図書館に行けなくてもだいじょうぶ。~【郵送貸出】のおはなし~
ここから本文です。
2013年3月のおはなし
こんにちは。お久しぶりのみけです。
3月2日、中央図書館の曝書(蔵書一斉点検)がようやく終わり、これで市内図書館の曝書は全て終了。毎年、曝書が終わるとそろそろ啓蟄です。「春がくるなぁ」と、しみじみ思います。
さて、ここではいろいろと図書館のお話をしてきましたが、【郵送貸出】についてはまだでしたね?
札幌市中央図書館ではご高齢の方や障がいのある方など、歩いて来館するのが困難な方へ、本や視聴覚資料を無料でお送りしています。昭和56年にこのサービスを始めた時には、運用方法が郵便しかありませんでした。それで【郵送貸出】と呼んでいるのですが、現在では宅配便も運用できるようになり、どちらか都合のいい方を、利用者の方に選んでいただいています。
読みたい本の詳細については、貸出申込書の備考欄やメモ・手紙でやりとりするほか、ファックスやお電話でも伺います。
たとえば、お電話では…
「時代小説を読みたいんだけど…」
「それはたくさんありますね。お好きな作家さんはいますか?」
「特にいないけど、武士とか殿様が主人公じゃないのがいいなぁ」
「なるほど…。主人公が市井の人・・・。だったら、山本周五郎・・・藤沢周平・・・」
「あ、藤沢周平は前に何か読んでるはずだ。おもしろかったなぁ。」
「では、藤沢周平の時代小説の中から、主人公が武士や殿様ではないものを何冊かご用意しましょうか。あと、時代小説のガイド本もありますよ。そこから選んでいただくこともできますが・・・」
「へぇ。じゃあそれもお願いしようかな。」
後日・・・
「いやぁ藤沢周平もよかったんだけど、もう一冊借りた時代小説のガイド本に、読んでみたい小説がいっぱいあってね!今度はあの中から、すぐに送れるものをお願いしたいんだけど・・・」
「それはよかったです。では、次回は・・・」
と、こんな具合。
図書館の書架で直接本を手に取って確かめることができない方に代わって、希望の資料を探し出してお送りする-。それが【郵送貸出】の仕事なのです。この仕事を担当すると、なんだか初心にかえります。書物を愛する者同士で、読書の楽しみを共有しているという実感が得られるからかもしれません。
一方で担当は、【郵送貸出】ならではのこんな悲しい経験もします。
守秘義務があるので仔細には語れませんが、あるソーシャルワーカーさんから、利用者の方の訃報を受けとりました。ご高齢で避けられないことではあったのですがやるせなく、やはり気持ちは沈みます。
しかし、短い報告の中に救いの一行がありました。
>最期の日も読書をしていました。ご本人、毎回とても楽しみにしていました!
【郵送貸出】に関するお問い合せは、ご本人様からだけでなく、ご家族、ご友人、民生委員さん、福祉事務所の方、グループホームのケアマネージャーさん、などなど、いまは実にさまざまなところからいただきます。
さまざまな方々が、本を読む楽しみを、リレーしてくださっているのだということ-。そして、何気なく、日常の読書する姿を見守ってくれているのだということ-。
忘れずにいようと思います。私たちには加齢を止めることも、病気を治すこともできません。でも、ささやかな日常の歓びのためには貢献できるかもしれない。いや貢献したいと願っています。
自宅に居ながら一冊をまるごと読むことができる電子書籍への取り組みも、実はそんな試みのひとつです。ネット環境に在る方にもない方にも、まだまだ図書館サービスは進化しつづけますよぉ~。
【郵送貸出】をご利用いただくには、あらかじめご登録が必要です。詳しい利用方法については、こちらをご覧いただき、札幌市中央図書館奉仕係へお問い合わせください。
たとえ図書館に足を運べなくても、「私の図書館」と云っていただけるような-、そんな図書館を目指したいと思っています。
..............................................................................
さて、『よもやまとしょかんばなし』は、今回をもってお休みをいただきます。
これまで、通称「よもねこ」たちの奮闘におつきあいいただきありがとうございました。
「よもねこ」一同、心より御礼申し上げます。
第1回「クニガマエにト書いて図書館と読むのです。」の中で、札幌のが、世界に通ずる「どこでもドア」になれたらと願う有志が交代で執筆します、とご挨拶しましたね。
あなたの図書館は、「どこでもドア」になれたでしょうか?なれたらとてもうれしいです。
春、いままでとは違う場所でお会いするかもしれません。再会をたのしみに-。
よもねこ一同