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更新日:2023年1月30日

札幌市路面電車活用方針

札幌市路面電車活用方針<平成22年(2010年)3月策定>

路面電車活用方針のパンフレット「SAPPOROCITYTRAM2010」

「札幌市路面電車活用方針」の内容を分かりやすく理解していただくために、パンフレット「SAPPOROCITYTRAM2010」を作成いたしました。
なお、パンフレットは各区役所、各区区民センター、市政刊行物コーナー(市役所本庁舎2階)で配布しています。
下表のページ番号をクリックしてご覧ください。

路面電車パンフレット

内容

ページ番号

■表紙

1
(PDF:1,032KB)

■年間730万人を運ぶ交通機関
■まちを変える路面電車
■札幌に訪れる超高齢・人口減少社会について考えてみませんか

2~7
(PDF:1,008KB)

■路面電車を活用した「まちづくり」を考える
■路面電車の現状
■延伸による自立的な経営の可能性

8~11
(PDF:1,128KB)

■暮らしやすく魅力あふれる活力あるまちづくりを目指して
■なぜ路面電車がいいの?ここが知りたい!Q&A

12~15
(PDF:994KB)

■裏表紙

16
(PDF:1,036KB)

□一括版

1~16
(PDF:3,354KB)

 

札幌市路面電車活用方針の概要

1.路面電車の現状

<路面電車の変遷>
札幌市の路面電車は、おおよそ100年前の1909(明治42)年に、馬車鉄道が運行を開始したことに始まります。
以来、1964(昭和39)年には、路線延長25kmとなるなど、まちの発展に大きく貢献してきましたが、時代の変化に合わせ、地下鉄と競合する区間等が順次廃止されていきました。当初、全線を廃止する予定でしたが、オイルショックなどを契機に、環境に優しい面などが見直され、1974(昭和49)年に、現在の路線延長8.5kmとなりました。

<路面電車の利用実態>
路面電車の輸送人員は、現在、1日あたり約2万人(年間平均)にのぼり、朝ラッシュ時には、輸送力が高い路面電車においても3分間隔の折り返し運行区間が必要であり、冬期間の平日には、2万5千人を超える利用があります。
路線の沿線は、多くの医療機関や藻岩山、コンサートホールKitaraといった施設があるなど、多様な都市機能を備えた魅力的な地域となっており、今後の人口増加も予想されています。
そのため、路面電車は観光客など様々な人に利用されており、高齢者をはじめとした日中の利用も多く、多様な目的に対応した市民生活の足として重要な役割を担っています。

<路面電車事業の今後の見通し>
路面電車事業の経営は、乗車料収入の減少などから依然として厳しい状況にあり、平成20年度(2008年度)の経常収支は3千2百万円の赤字となっています。
また、50年以上も経過した車両など施設の老朽化が進んでおり、今後、安心・安全な運行を継続していくためには、計画的な施設更新が必要となります。
将来的に必要となるその費用総額は、約100億円、可能な限り整備水準を抑制して施設更新を後年次に送るとしても、平成35年度までに約58億円の費用がかかるものと見込まれており、現在の路面電車の事業収入のみでは負担が困難な状況となっています。
現状のままこれらの設備投資を実施した場合は、減価償却費の発生により経常収支が一層悪化するとともに、設備投資費用の負担のために多額の資金不足が発生することから、路面電車の運行を継続していくためには、一般会計からの支援を継続していくことが必要となります。

 

2.路面電車の存続とまちづくりへの活用

<路面電車の存続>
路面電車は、朝ラッシュ時に3分間隔で折り返し運行が必要であるなど地域の重要な足となっております。
仮に、バスで対応しようとすると、朝ラッシュ時には2分間隔での運行が必要と想定され、都心部等に新たに交通渋滞や排出ガスの増加などの問題を生じさせるとともに、特に冬期間は円滑な輸送が困難になるものと考えられます。
さらには、新たなバス営業所の確保などが必要となるほか、電車の軌道や施設を撤去する費用など、バス転換にも多大な費用が必要となります。
また、現在の沿線地域は、地下鉄沿線地域よりも人口密度が高く、将来の人口増加も想定されていることからも、地域の交通手段として、今後も路面電車の運行を継続させていく必要があるものと考えられます。

<まちづくりへの活用>

〇札幌市を取り巻く今後の社会状況の変化

・札幌市では、やがて3人に1人が高齢者となる超高齢社会(2035(平成47)年)が到来すると予測されています。高齢者の増加は、通勤・通学目的の利用者の減少、私用目的の利用者の増加、目的地の多様化、混雑のピークの平準化といった、交通の質に大きな変化をもたらすものと予想されます。
また、高齢者は、外出の際に公共交通機関を利用することが多いため、その利便性が低下すると、高齢者の外出意欲を低下させてしまいます。さらに、公共交通機関のサービスの低下は、自家用自動車の利用を促進させることとなり、高齢ドライバーの事故リスク、車がなければ移動や外出ができないといった地域間や行動の格差も増大させてしまいます。
そのため、車を運転しなくても高齢者が気軽に出かけることができる交通環境づくり、バリアフリーで、利便性の高い公共交通網の形成・充実が必要となっています。
道路上の軌道により、誰もが使いやすく、地下鉄のように階段等を使わなくても地上から直接乗降できるため、高齢者に優しい乗り物です。

・札幌市の産業構造は、全体の9割がサービス業、卸売・小売業といった第3次産業となっていますが、卸売・小売業の商品販売額は経済不況の影響もあって減少しており、特に中央区の減少が大きくなっています。
札幌市の人口は、2015(平成27)年頃をピークに減少に転じていくことが予測され、これまでの人口が増加する社会から人口が減少する社会への大きな転換期を迎えます。
このような状況を踏まえると、今後札幌の経済状況はさらに厳しくなることが想定され、中心市街地の衰退(空洞化)による経済活動全体の活力低下も懸念されます。さらに都心部の衰退は「まちの顔」の喪失につながり、札幌市自体の魅力低下をも招いてしまいます。
そのようなことなどから、都心部の魅力向上によってさらに集客力を高め、世界に向けまちの魅力を発信し、市民生活を豊かにする都心の創造が必要となっています。

・平成20年度の札幌への観光客は、13年ぶりに1,300万人を割り込み、このままの状況では、札幌の活力低下が懸念されます。一方、観光客の多くは、中心部に宿泊し、都心を中心とした観光行動をする人が9割を超えるなど、都心部は重要な地域となっています。しかし、観光・宿泊施設は、都心部の広い地域に点在し、現状では多くの人が徒歩で周遊しており、目印の少ない都心は、移動しにくい地域になっていることも考えられます。近年、外国人観光客が増加している状況からも、今後は札幌の玄関口でもあるJR札幌駅や点在する観光・宿泊地からの、使いやすい移動手段を提供することや、いかに人を回遊させていくかということが重要な視点となっています。日本では、すでに人口減少が始まり、今後さらに観光客誘致に向けた都市間競争が厳しくなることも想定されるため、札幌の魅力をさらに向上させ、集客交流力を高めていく必要があります。

・現在、都心部や都心周辺部の人口は増加傾向となっており、この傾向は当分続くものと予想されています。したがって今後、札幌市全体では人口減少に向かうため、市全体の交通量は減少するものの、都心部およびその周辺では、交通量が増加していくことが予想されています。
さらに、近距離の移動手段においても徒歩などから自動車への転換が進み、その結果として自動車の交通量が増加することが予想され、このままでは、二酸化炭素排出量の増加や排気ガスによる大気汚染といった環境負荷の増大も懸念されています。こうしたことから、交通量の増加が予測される都心及び周辺部では、公共交通機関の充実により自家用自動車からの転換を促していく必要があり、札幌市は、過度に自家用自動車に頼らない都市構造への変革、持続可能なコンパクト・シティへの再構築をともに進めていくことが求められています。


〇路面電車の特性とまちづくりへの活用

近年、路面電車は、都市の活力の再生や環境負荷の低減、高齢者をはじめとする交通弱者の移動利便性の確保などのためにその良さが見直され、人や環境にやさしく、まちづくりに貢献する交通機関として、国内外の様々な都市で導入が進んでいます。

・路面電車は、バスなどの自動車と比べて、特に冬季間などは遅れが生じにくく、路線や行き先の「わかりやすい」交通機関であり、地下鉄のように階段等を使わなくても地上から直接乗降できるため、高齢者等にやさしい乗り物です。
加えて、道路上の軌道により、誰もが使いやすく、移動の「手軽さ」「安心感」もあるため、路面電車の活用により、高齢者等の気軽な回遊行動や外出機会を促すなど、将来を見据えたまちづくりの有効な施策の一つであると考えられます。

・都心の集客施設は広い地区に分散しており、駅間距離が短い路面電車は、この広い範囲に点在する様々な施設を面的に結び、回遊性を向上させるなど便利な地域を拡大することが期待されます。
また、路面電車の軌道は、周辺の土地利用に大きく影響を及ぼし、沿線地域の活性化や居住を促進させるなど、新たなまちを形成していきます。そのため、都心部への導入は、再開発の誘導など、まちの活性化を促すとともに、デザイン性に優れた車両や施設が通りの個性を演出するなど、魅力と賑わいのある都市空間の創造に貢献します。

・路面電車は、軌道や停留場が地域の目印となるなど、土地勘のない観光客も含め誰もが利用しやすい交通機関です。また、電車通りと呼ばれるなど通りの一体性・個性を形成し、路面電車自体も新たな魅力の発信に役立つことなどから、集客の核となる札幌駅、大通、すすきのの3地域を結ぶことで都心を一体化させ、都心全体で札幌の魅力を表現していくことにもつながります。今後、延伸が期待される北海道新幹線による、新たな来札者の移動の受け皿となることや新たな回遊行動の誘発など、賑わいを運ぶことが期待されます。

・路面電車は、CO2(二酸化炭素)の排出が少なく、街中で有害な排気ガスを出さない環境にやさしい交通機関であり、市民一人ひとりの環境意識の向上など、「環境首都・札幌」の実現に向けたまちづくりに貢献します。
また、路面電車は、利便性が高く、使いやすい交通機関であるため、今後、近距離移動での徒歩から自家用自動車への転換や交通量の増加が予想される都心及び周辺地域での活用により、過度に自家用自動車に頼らない都市構造への再構築に貢献し、歩いて暮らせるまちづくりを実現します。

3.路面電車の活用方針

<路面電車の活用手法>
路面電車は、集客構造や利用者負担など経営基盤そのものの抜本的な見直しが必要となっているとともに、その特性から積極的な活用の検討も求められており、「路線の延伸」はその一つの有効な手段になり得るものと考えられます。
このため、札幌市では、「路線の延伸」による増客効果や実施後の収支見通しなど、その実現の可能性について検証を進めました。

<路線延伸の検証対象地域と需要・事業費の推計>
・路線延伸の実現可能性かの検証にあたっては、各地域における人の移動量や目的などの交通実態調査の結果、将来の需要見込みから、「都心地域」「創成川以東地域」「桑園地域」の3地域を検討地域としました。
・検討地域の再開発による新規需要も併せて推計した結果は次のとおりです。

延伸時の需要推計
単位:人/日

現状

再開発による
需要増

合計

H18ベース

H42

H18ベース

H42

単独整備時 都心地域

4,004

3,689

-

4,004

3,689

創成川以東地域

1,231

1,470

836

2,067

2,306

桑園地域

1,627

1,419

-

1,627

1,491

都心地域+創成川以東地域

5,235

5,159

2,564

7,799

7,723

都心地域+桑園地域

6,247

5,856

-

6,247

5,856

都心地域+創成川以東地域+桑園地域

7,117

7,325

2,564

9,681

9,889

代表的な工種別の平均単価、必要となる車両数などから算出した結果は次のとおりです。
・各地域への延伸路線長については、現行路線との接続を考慮し、最も単純に現行路線と接続する最短路線長を想定しています。

延伸時の概算事業費

項目

都心地域

創成川以東
地域

桑園地域

事業費合計

(億円)

56

50

48

国庫補助金

18

16

16

札幌市負担

18

16

16

事業者負担

20

18

16

※路線が確定していないため、街路事業費や地下埋設物の移設費などの関連事業費を除いている。また、国の補助制度は、採択年次や市町村が策定している各種計画の有無などによって、さまざまな条件や補助率の違いがあるため、今回は、「地域活力基盤創造交付金(概ね2分の1補助)」ではなく、「都市交通システム整備事業補助金(概ね3分の1補助)」を活用した試算を行っている。

<延伸後の事業の見通し>
路面電車の路線延伸の検討対象とした都心、創成川以東、桑園の3地域については、現状のままでは、路線延伸を実施したとしても、単独地域で延伸を実施した場合、複数地域で延伸を実施した場合ともに、経常収支、資金収支の将来的な黒字化は見込めない状況にあります。
しかし、「経営の効率化」や「利用者負担のあり方」を併せて議論し、仮に、「経常費用を“10%”削減し、経常収入を“10%”改善(増収)」「経常費用を“15%”削減し、経常収入を“15%”改善(増収)」すれば、延伸に必要な建設費の負担はあるものの収支の好転が見込まれます。

参考

 

「都心地域」延伸時の経常収支・資金収支の状況
【経常費用15%削減・経常収入15%増収】

 

 

<路面電車の活用の考え方>
札幌市の路面電車は、施設・設備の老朽化が著しく、今後も安全・安心な運行を維持していくためには、早期にこれらの更新を行っていく必要がありますが、更新費用を安定的に確保していくためには、収入構造の抜本的な見直しが必要です。
一方、本市が現在取組みを進めている、都心などのまちづくりや環境対策、観光やコンベンションの振興などに、路面電車は、その活用が大きく期待されています。
路面電車の路線延伸は、これらに対する一つの有効な解決手段になり得るものであり、現状のまま路線の延伸を実施しても、事業の安定的な経営を見通すことは困難ですが、延伸に必要な建設費の負担はあるものの「経営の効率化」や「利用者負担のあり方」を併せて議論させていただければ、将来的には、路面電車事業の自立的な経営も見通せるものと考えられます。
このため、札幌市は、路面電車事業の経営基盤の強化や、まちづくりへの活用を図るため、路線の延伸は実施すべきと考えており、「都心地域」「創成川以東地域」「桑園地域」の3地域を対象に、今後、延伸の具体的な検討を進めていきたいと考えています。

 

4今後の検討の進め方

<今後の検討の進め方>
今後の路面電車の活用については、パンフレットの配布やパネル展の実施により市民の皆さんに広く情報提供をするとともに、フォーラムや市民会議等で十分な議論を行う中で、延伸の実施や具体的な延伸ルートなどの検討を進めていきます。

 

 

 

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札幌市まちづくり政策局総合交通計画部都市交通課

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