札幌市の図書館 > よもやまとしょかんばなし > 第21回 こどもの時に読んだ本
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2012年3月のおはなし
ある日のこと。
あまり顔なじみのない、制服を着た高校生くらいの女の子が二人、来館しました。
課題を出されて調べ物に来たのか、特に予定の無い放課後に気まぐれでやって来たのか―。書架の間を歩きながら、学校のことや友達のことを、取りとめもなく話す声が聞こえています。
だんだん声が大きくなってきたので、注意しようかと思ったその瞬間、
「わ!これ懐かしい!」
と一人のはずむ声。
見ると、児童書コーナーの絵本を手に取り見つめています。
「これ!昔うちにあった本だ!」
もう一人の女の子がのぞき込みます。
「あ!私も読んだことがある!」
競い合うように二人はページをめくりはじめました。
「そうそう!これが怖かったんだー!」
「あれ、こんな終わり方だったっけ?」
一気に絵本の世界に引き込まれて、懐かしの絵本探しに夢中になっている二人―。
そんなようすをほほえましく思い、「もう少し小さい声でね」とだけ声をかけました。
実はこんな「ある日」の光景は、この日だけのことではありません。
時には男の子だったり、もっと大人の人だったり、お父さんやお母さんだったり・・・
はたまた絵本を手にしたおじいちゃん、おばあちゃんが「昔、こどもに読み聞かせていた」と懐かしんだりしている姿を、私たちは何度も何度も目にし、耳にしています。
大人がこどもに本を読ませたいと願うのは「情操教育に…」「言語の発達に…」「親子のふれあいに…」さまざまな理由があるでしょう。
でも、どんな理由で読まれた本でも、いつか、こんな瞬間に出会わせてくれることがある。
それだけでも、こどもが本を読む価値は充分にあるような気がします。
そんなことを考えながら、今日もニャンゴロは本の貸出に勤しむのでした。