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更新日:2023年6月18日

カバ「ドン」の安楽死処置について

これまでの経緯

「ドン」は、昭和44年(1969年)7月15日に、日立市かみね動物園で生まれました。札幌市円山動物園には昭和46年(1971年)11月12日に来園しました。
平成29年(2017年)5月以降は、カバの国内最高齢の個体として飼育され、令和5年(2023年)6月現在で53歳でした。

当園で飼育中のカバ「ザン」(昭和50年(1975年)7月15日生まれ)は、「ドン」の娘にあたります。

令和2年(2020年)5月ごろから、時おり足を引きずる様子が見られ、高齢に伴い関節が傷んでいると推察されるため、グルコサミン等を含む動物用サプリメントの投与などを行ってきましたが、動きは徐々に緩慢となり、屋内外の出入りに時間を要する状態でした。体重は1.7トン程度と推定され、以前より徐々に痩せてきている状況でした。 

症状の経過

6月15日(木曜日)

11時15分ごろ、外放飼場へ向かって歩いている途中で、体の左側を下にして横たわった状態のまま、立つことができなくなりました。また、十分な飲水や採食が困難な状況でした。
その後、日除けを設置し、皮膚の乾燥を防ぐため定期的に水をかけ、体の周囲に乾草やマットを敷いて看護を開始しました。
職員が近づくとドンは威嚇する状態でした。
夜間は断続的に睡眠をとっている状況で、状態を見守る必要があったため、看護及び監視を続けました。

6月16日(金曜日)

体の左側のみに1.7トンもの体重がかかる状況が続いており、起立、飲水や採食ができない不自由さや恐怖、痛みを緩和するため、8時30分に鎮静剤の注射を実施しました。(同日中に計3回注射を実施)
皮膚のケアを継続しながら、リンゴジュース等を口元に流してみるものの横たわった状態のため、ほとんど飲むことができない状態でした。
ドンは、威嚇はするものの徐々に活力は低下している様子で、褥瘡(じょくそう:寝たきりになることによって、体重で圧迫されている場所の血流が悪くなることによりできる傷)ができていることを確認しました。
夜間は断続的に睡眠をとっている状況で、前日同様に看護及び監視を継続しました。

6月17日(土曜日)

褥瘡の範囲が拡大しているのを確認し、苦痛が継続し、回復が見込めない状態であると推察されました。
そのため、午前9時に円山動物園として安楽死処置の実施を決定しました。

安楽死処置について

当園では、飼育動物の良好な動物福祉を確保することを目的に、円山動物園が遵守すべき動物福祉に関する必要事項を定める「札幌市円山動物園動物福祉規程」を令和5年(2023年)3月9日に策定しました。
あわせて、同規程に基づく「札幌市円山動物園安楽死処置実施ガイドライン」を定め、傷病動物の生活の質(QOL)を維持することが難しいと判断した場合に、安楽死処置の実施を円滑に意思決定ができる体制を整えました。同ガイドラインは、世界動物園水族館協会(WAZA)が示す「野生生物への配慮、世界動物園水族館動物福祉戦略」およびアメリカ獣医師会が定める安楽死処置ガイドラインを参考とし、国内園館の安楽死処置への考え方を調査のうえ制定しました。

今回、安楽死処置検討会議(「ドン」の飼育に関わる担当職員と診療に関わる担当職員による検討会議)において「ドン」の生活の質(QOL)の評価を実施しました。その結果、

  • を食べ、水を飲み、自由に動き回るなど、カバ本来の行動をとることができず、回復の見込みがない
  • 自力で立ち上がることができず、横たわった状態が継続すると、時間の経過に伴い、「ドン」自身の体重により内臓が圧迫され、血流も阻害され、更なる苦痛を伴うことが予測される

と判断し、市民動物園会議円山動物園動物福祉部会への報告を経て、6月17日9時に、円山動物園として安楽死処置の実施を決定しました。

安楽死処置の結果について

安楽死処置は、「ドン」を少しでも恐怖や苦しみから解放するために鎮静薬および麻酔薬を投与後、心停止を起こす薬剤を投与することを計画しておりましたが、鎮静薬および麻酔薬のみで、6月17日15時31分、眠るように呼吸停止に至りました。

解剖結果について

重度貧血、変性性関節症、肝機能不全が確認されました。

これらが複合的に作用したことにより倒れてしまったと考えられます。

 

来園以来51年以上もの長い間、当園の顔であり続け、市民の皆様に愛され、親しまれ続けてきたドンの冥福を心からお祈りいたします。

 

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