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更新日:2020年7月30日

シロテテナガザルの『アイ』と『そら』が転出します

シロテテナガザル「アイ」

シロテテナガザル「アイ」

類人猿館で飼育中のシロテテナガザルの「アイ」(メス10歳)と「そら」(オス3歳)が、市川市動植物園(千葉県)及び東武動物公園(埼玉県)に転出することになりました。
当園では、2012年に旭川市旭山動物園よりオスの「コタロー」を、2014年に鯖江市西山動物園よりメスの「アイ」を借り受け、2016年にはオスの「そら」が誕生いたしました。
しかしながら、その後行われた国内のシロテテナガザルの血統の分析の結果、「コタロー」と「アイ」の間での繁殖は個体群全体の遺伝的多様性の維持という観点においては有益ではないことが判明し、以降、避妊措置により第2子以降の繁殖を控えるとともに、より有益なペアの形成に向けた調査を行っていたところですが、この度その目途が立ったことから、「アイ」と「そら」を転出し、「コタロー」の配偶として新たに市川市動植物園よりメス個体「ラーチャ」を受け入れることとなりましたのでお知らせいたします。
また、「アイ」と「そら」の転出及び新たなメス個体の受け入れに先立ち、現在類人猿館で飼育中のオスの「コタロー」について、熱帯雨林館テナガザル展示場に移動することになりましたので、併せてお知らせいたします。
なお、「アイ」と「そら」の転出日及び「ラーチャ」の来園日につきましては、追ってお知らせいたします。
「アイ」と「そら」新たな場所に転出しても、元気に暮らしてくれること、「コタロー」が「ラーチャ」と良い関係を築き、国内のシロテテナガザル個体群が将来にわたって健全に維持されることを期待しています。

                         記

 

1 転出する個体について
    アイ (メス10歳)
    2009年8月15日 鯖江市西山動物園生まれ
    2014年10月2日 同園よりブリーディングローンにて借り受け
    転出先:市川市動植物園
    転出予定時期:9月中旬

    そら (オス3歳)
    2016年10月4日 札幌市円山動物園生まれ(父:コタロー、母:アイ)
    転出先:東武動物公園
    転出予定時期:9月中旬
    ※ 両個体の転出日については詳細が決まり次第お知らせいたします。
    また、お別れにあたり、類人猿館に寄せ書きノートを設置する予
  定ですが、その設置時期についても併せてお知らせいたします。

 

2 当園に残る個体について
    コタロー (オス15歳)
    2004年10月26日旭川市旭山動物園生まれ
    2012年6月6日同園よりブリーディングローンにて借り受け
    8月5日(水曜日)にアジアゾーン熱帯雨林館テナガザル放飼場に移動予定
 

3 新たに来園する個体について
    ラーチャ (メス 推定19歳)
    2003年10月に市川市動植物園が警察より保護受け
    来園時期:「アイ」と「そら」の転出後、速やかに導入する予定です。

  

4 シロテテナガザルの飼育下個体群管理について
  シロテテナガザルはプランテーションのための森林伐採による生息地の減少や生息地の分断、劣化に加えて、ペットトレードによる密猟などにより、生息数減少の脅威にさらされており、国際自然保護連合(IUCN)レッドリストにおいても2008年より絶滅危惧種(EN)に指定されているほか、国際的な商業取引を制限するワシントン条約においてもⅠ類に指定されています。
 国際的な保全の取り組みも積極的に行われており、生息地での保護活動が進められているほか、飼育下の個体についても国際的な個体群保全の取り組みが行われています。日本においても、(公社)日本動物園水族館協会生物多様性委員会において血統管理を行っており、国内の飼育個体の来歴及び状況を分析し、繁殖計画を策定し、各飼育園館の協力を得て、飼育下繁殖推進の取り組みを行っています。  
 一般的に希少種の繁殖計画の策定においては、対象となる種について、各飼育個体の来歴を明らかにし(血統登録)、個体群動態学的な分析や集団遺伝学的な分析を行い、最終的にそれぞれの個体の状況や統計上見えてくるその種の特性などを踏まえて、個体群維持におけるリスクを最小限にするとともに、集団の遺伝的多様度を90%維持することを目標に計画を策定します。 
 残念ながらこのような分析が行われるようになったのは近年になってからであり、また、かつては繁殖のために積極的に個体移動を行うなど、個体群保全という考え方に基づいた取り組みはあまり積極的には行われてきていませんでした。このような状況から現在多くの動物種で個体数の減少や、遺伝的な偏りなど、個体群の状況が悪化しています。

5 今回の移動の経緯
  個体群の遺伝的多様性の維持においては、いかに希少な血筋を残していくかということが一つのテーマであり、加えて、ペア間での血筋の希少性に差異があることは、好ましいことではありません。当園で飼育する「コタロ」ーと「アイ」のペアは、希少性に大きな差異があったことから、生物多様性委員会内のシロテテナガザル繁殖検討委員会において検討した結果、遺伝的に健全な個体群の維持の観点で、より希少性の高い血筋同士での組み合わせが求められることになりました。
  また、テナガザルの仲間はチンパンジーのように複数の雌雄からなる群れを作ることは無く、一夫一妻とその仔からなる小さな群れを作る生き物であることから、ペアの組み換えにあたっても、ペア外の個体と一緒に飼育することはできません。さらに当園の飼育施設には十分な動物福祉を維持しつつ複数のペアを飼育するのに十分な施設ではないことから、「アイ」と「そら」を他園に移動したうえで、個体群管理上より有益な「コタロー」の繁殖相手として、市川市動植物園より「ラーチャ」を受け入れることになりました。

【シロテテナガザル 豆知識】
 分類:霊長目 テナガザル科 学名:Hylobates lar
 
中国南西部や東南アジアの熱帯雨林に生息し、一夫一婦のつがいとその子どもを加えた4頭程度の小さな群れで暮らします。主な行動範囲は樹冠部から中層辺りで地上に降りることは滅多になく、長い腕と鈎型の手を使い、振り子のようにはずみをつけ、勢いよく枝から枝へ移動する腕わたり(ブラキエーション)をします。野生では主に、果物を主食としていますが、木の葉、芽、花なども食べます。四肢の先端部が白色であることが和名の由来です。
  体長は50~60cm前後、体重は5~6㎏。
  交尾期は年中、妊娠期間は200~212日、一回の出産で1頭の子どもを産みます。

シロテテナガザル「そら」

シロテテナガザル「そら」

シロテテナガザル「コタロー」

シロテテナガザル「コタロー」

シロテテナガザル「ラーチャ」

シロテテナガザル「ラ-チャ」(提供:市川市動植物園)

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