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更新日:2026年3月16日

「考え続ける」ということ

米里中学校2年 源間梨奈

二〇二三年の夏休みのことです。

私の家では、家族全員でコロナウイルスに感染しました。家族みんな初めての感染で、

四十度近い高熱の中、たいへんな思いをしました。熱いんだけれど、でも寒くて、立って歩くと倒れそうになります。それでいて、なんだか浮いてしまえそうな、そんなふわふわした感覚になりました。

家族全員でかかったわけですから、夏休みなのにどこにも行けません。楽しみにしていたはずの夏休みは、ただボーッと過ごすしかなくてがっかりです。

そんなある日のことです。夕ご飯をばらばらに食べ終わった頃、私は妹と二人でテレビを見ていました。すると突然、背中から、

「ママ!ママ!大丈夫?返事して!」

という大きな声が聞こえてきました。父と姉の声です。私は一瞬、何言ってんだろ、ふざけてるのかな……と思いました。でも、振り返って青くなりました。母が意識を失っているのです。ピクリとも動かずに倒れているのです。私の頭の中は「?」だらけ。何をしていいのかさえ何も浮かびませんでした。ただ、それまで生きて来て経験したことのない恐ろしさが私を包み込んでいたことだけはよく覚えています。

結局、すぐに救急車が来てくれて、病院に搬送されて、母は事無きを得たのですが、この経験は、私の中に、何か重いものを残しました。

新型コロナウイルスは二〇一九年十二月に中国で確認され、二〇二〇年一月に日本国内での最初の感染が確認されました。その後の混乱は、皆さんの記憶にもまだはっきりと残っていることと思います。

あれから数年。いまではワクチンが開発され、薬も普及し、気をつけて生活してさえいれば、それほど恐れることのない病気になってきました。しかし、世界中で約一億三千万人が死亡してしまった病気であることを、私たちは忘れるべきではありません。こんな人数が亡くなってしまって、もう少し対策ができなかったのかとも思いますが、国も出来る限りのことはして、国民の不安を取り除くための多くの対策・対応に努力してくれたのだろうと思います。

世界の国に目を向けると、ロックダウンや外出制限、マスク着用義務、学校を初めとする各施設の閉鎖、情報発信と啓発活動など、パンデミックへの対応を次々におこなっていました。また、経済が行き詰まって、給付金が支給されたりもしました。日本国内でも、全国民に十万円の給付金が配られたのは記憶に新しいところです。

一方、コロナ禍では、「自粛警察」と呼ばれる行き過ぎた非難をする人たちや、高齢者よりも現役世代を優先すべきと、命に優先順位をつけるような物言いも現れました。ある地方では、保健所を統合して減らしていたために、コロナの死者数が劇的に増えたとも報道されました。医師不足も顕在化しました。経済は人の命よりも優先されるのかという視点も議論されました。

どれもこれも、中学生の私などが考えても仕方ないと思えるような、難しい問題です。でも、直感的にこの経験は、決して忘れてはいけないことなのだろうと思うのです。この問題は、コロナに感染したということだけでなく、母が倒れたときの大きな恐怖という形で、私という個人と、具体的につながっていたのですから。もしあれが二〇二三年ではなく、二〇二〇年や二〇二一年だったら、救急車はすぐに来てくれなかったかもしれないのです。

思えば、コロナパンデミックの二年前、北海道胆振東部地震がありました。厚真町を中心にたくさんの方々が亡くなったり、札幌でも清田区や東区で地盤が陥没したりしました。私はまだ小学校一年生でしたが、突然停電したり、突然学校がなくなったり、ずいぶんと怖い思いをしたことだけはよく覚えています。今年入学してきた中学一年生は、あの地震のときにまだ小学校に入学していなかった人たちです。今年小学校に入学した一年生は、あの地震のときにまだ生まれていなかった子どもたちです。きっとどちらも、私たちとはどこか感覚が違っているのではないか、そんなことも思います。

こんな短い間に、二つの大きな天災とそれに伴う混乱を経験した私たちの世代。

私たちの力ではどうしようもできないのかもしれない。もしかしたら解決策なんてないのかもしれない。でも、「考え続ける」ことだけはしなくてはならない。解決策が明確でなくても、「考える」ことだけは続けて行かなんければならない。それが私たちの使命であるような気がするのです。

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